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(中国)保護対象ではない実用新案出願の扱いについて

2013年10月15日

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■概要
高級人民法院は、本件考案について「一種の文化娯楽用品であるトランプであり、その主要なものはトランプの分類、枚数、素材、色、テキスト、パターン、抽象的なグラフィックシンボル、トランプのルールや遊び方」であると認定した。その上で、本件考案について、技術問題を解決する技術的手段を利用しておらず、自然法則に符合する技術的効果を得るものではないとして、実用新案の保護対象ではないとした原審判決を支持した。
■詳細及び留意点

【詳細】

 カードゲームの規則などについて実用新案出願をしたところ、中国特許庁により、実用新案の保護対象ではないとして専利法第25条第1項第2号に基づいて却下決定が下され、これを不服として不服審判を請求したが、同却下決定が支持された。そこで、審決取消訴訟を提起したが、却下決定も審決も妥当とする判決が出されたことから、高級人民法院に上訴したのが本案である。

 高級人民法院は、実用新案の保護対象について、専利法実施細則第2条第2項*を根拠に「製品の形状、構造又はそれらの結合について提案する実用性のある新規な技術的考案」を指すとし、技術的考案は「解決が必要な技術問題に対して採用した自然法則の技術的手法を集めたもの」であり、「技術問題を解決する技術手段を用い自然法則に符合する技術的効果を得るものではない考案は、実用新案権の保護対象にはならない」とした。

 次に、本出願の考案は「一種の文化娯楽用品であるトランプであり、その主要なものはトランプの分類、枚数、素材、色、テキスト、パターン、抽象的なグラフィックシンボル、トランプのルールや遊び方」であるとし、解決を要する問題は「中国古来の文化である五行相生相克学説を現代のカード類のゲームに結びつけ、公衆に一種の新しい思考を鍛える方法及び文化娯楽のカード類を提供すること」であり、その効果について「知能を開発することも思考を鍛えることも可能で、レジャーや娯楽で中国文化の奥深い哲理や摩訶不思議な魅力を理解し、中華民族の優れた伝統文化を承継し発揚すること」であると認定した。

 そして、本出願の考案について、トランプの製品の形状、構造又はその結合について提案した実用的な新規な技術的考案ではなく、技術問題を解決する技術的手段を利用しておらず、自然法則に符合する技術的効果を得るものではないとし、原審の判決を支持した。

参考(北京市高級人民法院民事判決2010年10月14日付(2010)高行終字第1129号より抜粋):

 本院认为,根据《专利法实施细则》第二条第二款规定,专利法所称实用新型,是指对产品的形状、构造或者其结合所提出的适于实用的新的技术方案。所谓技术方案是指对要解决的技术问题所采取的利用了自然规律的技术手段的集合,未采用技术手段解决技术问题,以获得符合自然规律的技术效果的方案,不属于实用新型专利保护客体。产品的形状以及表面的图案、色彩或者其结合的新方案,没有解决技术问题的,不属于实用新型专利保护的客体;产品表面的文字、符号、图表或者其结合的新方案,不属于实用新型专利保护的客体。本申请请求保护一种文化娱乐用品的游戏牌,其主要限定了游戏牌的分类、张数、制作材料、颜色、文字、图案、抽象图形符号以及游戏牌的游戏规则和玩法。根据本申请说明书的记载,本申请所要解决的问题是将中国古文化五行相生相克学说结合现代牌类博弈规律,为公众提供一种新的思维锻炼方法和文化娱乐的牌类。本申请请求保护的游戏牌达到的效果是“既可开发智力,锻炼思维,又能在休闲娱乐中,领略中国古文化的深邃哲理和神奇魅力,继承和弘扬中华民族的优秀传统文化”。因此,本申请所保护的技术方案并没有对游戏牌产品的形状、构造或者其结合提出适于实用的新的技术方案,没有采用技术手段解决技术问题,也没有获得符合自然规律的技术效果。因此,本申请不属于《专利法实施细则》第二条第二款规定的技术方案,不属于实用新型专利保护的客体。阮岗侠有关本申请符合《专利法实施细则》第二条第二款规定的上诉理由依据不足,本院不予支持。同时,鉴于本院已经认定本申请不符合《专利法实施细则》第二条第二款规定,本院不再审查本申请是否符合《专利法》第二十五条的规定。

 《审查指南》第四部分第二章第4.1节规定:“除驳回决定所依据的理由和证据外,合议组发现审查文本中存在下列缺陷的,可以对与之相关的理由及其证据进行审查,并且经审查认定后,应当依据该理由及其证据作出维持驳回决定的审查决定:……(2)驳回决定未指出的明显实质性缺陷或者与驳回决定所指出缺陷性质相同的缺陷。”根据该条规定,专利复审委员会如果发现申请文件存在驳回决定未指出的明显实质性缺陷,可以依据该理由作出维持驳回决定的审查决定。本案专利复审委员会在认定本申请不符合《专利法实施细则》第二条第二款的规定,不属于实用新型专利保护客体的基础上,未再审查本申请是否符合《专利法》第二十五条的规定即作出维持驳回决定的审查决定具有事实和法律依据。至于阮岗侠有关专利复审委员会在复审程序中未送达口头审理通知致使其未能参加口审故其审查程序违法的上诉理由,由于口头审理并不是专利复审委员会对驳回专利申请决定进行复审的必经程序,且本案现有证据也不能证明专利复审委员会针对阮岗侠的口头审理进行了口头审理或通知阮岗侠参加口头审理,故阮岗侠该上诉理由不能成立,本院不予支持。

(参考訳)

 当裁判所は以下のように判断する。《専利法実施細則》第2条第2項の規定を根拠として、専利法において、実用新案とは、製品の形状、構造又はそれらの結合について提案する実用性のある新規な技術的考案を指す。いわゆる技術的考案は、解決が必要な技術問題に対して採用した自然法則の技術的手法を集めたものを指し、技術問題を解決する技術的手段を用い自然法則に符合する技術的効果を得るものではない考案は、実用新案権の保護対象にはならない。

 製品の形状及び表面の図案、色彩又はその結合の新規な考案は、技術問題を解決していないものは実用新案権の保護対象ではないし、製品表面の文字、符号、図表又はその結合の新規な考案も、実用新案権の保護対象ではない。本出願の請求項は一種の文化娯楽用品であるトランプであり、その主要なものはトランプの分類、枚数、素材、色、テキスト、パターン、抽象的なグラフィックシンボル、トランプのルールや遊び方に限定されている。本出願の明細書の記載に基づけば、解決を要する問題は,中国古来の文化である五行相生相克学説を現代のカード類のゲームに結びつけ、公衆に一種の新しい思考を鍛える方法及び文化娯楽のカード類を提供することである。本出願請求項のトランプによって得られる効果は「知能を開発することも思考を鍛えることも可能で、レジャーや娯楽で中国文化の奥深い哲理や摩訶不思議な魅力を理解し、中華民族の優れた伝統文化を承継し発揚すること」である。よって、本出願請求項の技術的考案は、トランプの製品の形状、構造又はその結合について提案した実用的な新規な技術的考案ではなく、技術問題を解決する技術的手段を利用しておらず、自然法則に符合する技術的効果を得るものではない。これにより、本出願は《専利法実施細則》第2条第2項に規定する技術的考案ではなく、実用新案権の保護対象ではない。本出願が《専利法実施細則》第2条第2項を具備するという原告阮岗侠の上訴理由は根拠が不十分であり、当裁判所は支持しない。同時に、当裁判所は、既に本出願が《専利法実施細則》第2条第2項の規定を具備しないと認定していることに鑑み、本出願が《専利法》第25条の規定を具備しているか否かについて再度審理しない。

 《審査指南》第4部分第2章4.1は、次のように規定する:「却下決定が根拠とする理由及び証拠を除き、合議体が審査した文書資料中に以下の欠陥があることを発見した場合は、関係する理由及び証拠について審査を行い、審査認定後、その理由及び証拠に基づいて却下決定を維持する審査決定を行うべきである・・・。(2)却下決定が言及していない明瞭で本質的な欠陥と、却下決定が言及した欠陥の性質が同一である欠陥」。当該条文規定により、審判部が却下決定が言及していない明瞭な本質的な欠陥が出願書類に存在していることを発見した場合、その理由を根拠に、却下決定を維持する審査決定をすることができる。本件審判部が、本出願について《専利法実施細則》第2条第2項の規定に反し、実用新案権の保護対象ではないことを認定したことを根拠に《専利法》第25条の規定を具備するか否かについて再審査を行わずに却下決定を維持する審査決定を行うことは、事実及び法律上の根拠がある。原告阮岗侠が関与した審判手続において口頭審理通知書が送付されず、口頭審理に参加できなかったから審判手続は違法との上訴理由については、口頭審理は審判部が出願却下決定について審理する際に必須の手続ではなく、本件における手元の証拠では、審判部が原告阮岗侠ための口頭審理を実施したことや、原告阮岗侠が口頭審理に参加する旨を通知したことを証明することは不可能であるから、原告阮岗侠の上訴理由は成立せず、当裁判所は支持しない。

 

*2010年改正により、この規定は削除されている。

 

【留意事項】

 中国の実用新案は実体審査を経ることなく設定登録されると説明されるが、審査指南によれば、実用新案出願の方式審査は「形式審査」又は「出願書類の顕著な実質的欠陥の審査」などを含むとされ(審査指南第1部分第2章1)、実施細則第2条第2項の審査において、出願対象が技術的考案に該当するかが判断される。

 日本企業は現地代理人を通して出願するのが一般的であるため、本件のように保護対象外のものを出願することはほとんどないであろうが、実体審査を行わないとされる実用新案制度において、保護対象外の出願がどのように扱われるのかを具体的に示す目的で本案を取り上げた次第である。参考までに、本考案の請求項の記載(補正後のもの)の参考訳を以下に示す。

 「本実用新案は一種の文化娯楽用品のトランプに関連するもので、その特徴は紙、竹、骨、プラスチック、ガラス等を材料とするトランプで、主力カードとエースカードからなり、主力カードは5種類あり、種類ごとに9枚から13枚、エースカードは2枚から5枚ある。各種カードは五行の一つに一致しており、金、木、土、水、火の文字の使用や五行の図案や色彩で区別する表示の使用が可能であり、ハート、ダイヤ、スペード、クラブという普通のカードに、1種類、円を増やすこともできる。各種カードに他種カードを制圧させ、同時に第三のカードも制圧される。その結果、数字が同じでも、カードを制圧可能である。金3は木3を制圧可能で、スペードのAはハートのAを制圧可能で、カードの変数が増え、数字が同じで種類が異なるカードが互いに制圧できないという技術課題を解決した。エースカードをある種のカードと代替で使用する時は、2枚を超える同じ柄のカードに対し、エースが含まれている場合、五行によると、別の同じ柄のカードに互いに変更になり、カードが変化できないという技術的課題を解決し、変数が急激に変わり、面白みが次々に現れる。」(原文:本实用新型发明涉及一种文化娱乐用品的游戏牌,其特征是游戏牌由纸质、竹子、骨、塑料、玻璃等材料制作,由主牌和王牌组成,主牌分五类,每类9至13张,王牌2至5张。每类牌暗合五行之一,既可用文字金、木、土、水、火,也可用表示五行的图案和颜色区别,也可在普通牌红心、方块、黑桃、草花增加一类圆球。使每一类牌只压另一类牌,同时也只被第三类牌压。从而达到数字相同,也可压牌。如金3可压木3,黑桃A可压红桃A,增加牌的变数,解决了相同大小不同花色牌不能相压的技术难题。而用王牌代替任何牌时,对超过2张以上的同花链子牌,如果其中含有王牌,则按五行相生变为另一同花链子牌,解决了牌不能变化的技术难题,变数陡增,趣味横生。)

■ソース
・北京市高級人民法院民事判決2010年10月14日付(2010)高行初字第1129号
・中国専利法
・中国専利法実施細則
・中国専利審査指南 第4部分第2章 復審請求の審査
■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 根本雅成
■協力
中科専利商標代理有限責任公司
■本文書の作成時期

2013.01.14

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