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(台湾)図面に開示された技術的特徴は図面から直接的且つ一義的に知り得る技術的特徴に限られる旨が示された事例
2013年09月06日
■概要
上訴人は、無効審判を請求された実用新案登録第187718号の「車両のハンドブレーキ構造の改良」に係る考案は、被証案と比較して「ブレーキレバー回動角度」又は「後ろに動く角度」を最大限有すると主張したが、「ブレーキレバー回動角度」や「後ろに動く角度」の内容は図面から直接的且つ一義的に知り得ると認めることはできないため採用されなかった。■詳細及び留意点
【詳細】
上訴人は、係争考案のブレーキレバーは、後ろに動く角度を最大限有するため、被証4に記載されている考案と比較して、ブレーキレバーが外力の衝撃を受けて破壊又は変形することを防止できる効果を奏すると主張した。
しかしながら、判決では、係争考案の請求項1には「ブレーキレバー回動角度」又は「後ろに動く角度」について定義されておらず、さらに、明細書にも「ブレーキレバー回動角度」又は「後ろに動く角度」が、従来技術と比較してどの程度増加したのか記載されていなと認定し、さらに、図面は、明細書を読む際に技術的特徴及び技術手段を理解するための補充的なものであり、図面から主張できる技術的特徴は、図面から直接的且つ一義的に知り得る技術的特徴に限られると判示し、上訴人の主張を採用しなかった。
参考(智慧財産法院民事判決の判決理由より抜粋):
上訴人於補充理由二狀第2頁二雖稱系爭專利之剎車柄,因具有最大之向後動角度,較之被證4 專利之僅有約90度之向後扳動度,系爭專利顯然更具有防止剎車柄因受外力撞擊而斷裂或變型之功能云云。然系爭專利說明書並無記載剎車柄樞擺角度相較習用技術,有何種「剎車柄樞擺角度」或「向後動角度」之增進,且系爭專利請求項1 亦就剎車柄「剎車柄樞擺角度」或「向後動角度」並無加以界定,且圖式之作用在於補充說明書文字不足的部分,使系爭專利所屬技術領域中具有通常知識者閱讀說明書時,得依圖式直接理解系爭專利各個技術特徵及其所構成之技術手段。因系爭專利說明書無「剎車柄樞擺角度」或「向後動角度」等文字說明,故以系爭專利第5 圖所揭露之技術特徵,應以於圖式直接,且無歧異得知之技術特徵為限,而由圖式推知之內容如「剎車柄樞擺角度」或「向後動角度」,難認其為直接且無歧異得知者。
(日本語訳「上訴人は、補充理由二状第2頁二において、被証4の発明は後ろに引かれる角度が約90度に過ぎないのに対し、係争考案のブレーキレバーは、後ろに動く角度を最大限有するため、係争考案は、ブレーキレバーが外力の衝撃を受けて破壊又は変形することを防止できる効果を奏すると主張した。しかしながら、係争考案の明細書には、「ブレーキレバー回動角度」又は「後ろに動く角度」が、従来技術と比較してどの程度増加したのか記載されておらず、且つ係争考案の請求項1には、ブレーキレバーの「ブレーキレバー回動角度」又は「後ろに動く角度」も定義されておらず、且つ図面は、係争考案の属する技術分野における通常の知識を有する者が明細書を読む際に、係争考案の各技術的特徴及びその技術手段を直接に理解できるように、明細書で十分説明できない内容を補充するためのものである。係争考案の明細書には「ブレーキレバー回動角度」又は「後ろに動く角度」との用語の定義は記載されてなく、さらに、係争考案の第5図に開示された技術的特徴というのは図面から直接的且つ一義的に知り得る技術的特徴に限られる。したがって、「ブレーキレバー回動角度」や「後ろに動く角度」の内容は図面から直接的且つ一義的に知り得ると認めることはできない。」)
【留意事項】
図面は、考案の技術的特徴の理解を助けるためのものであって、図面の記載に基づいてその効果を主張できるのは、図面の内容から直接的且つ一義的に知り得る内容に限定される。したがって、請求項に記載した発明特定事項については、当該発明特定事項の意義について図面ではなく明細書に十分に記載しておくべきである。
■ソース
・智慧財産法院裁判書裁判字号101年度民専上字第8号■本文書の作成者
知崇国際特許事務所 弁理士 松本征二■協力
萬國法律事務所 鍾文岳一般社団法人 日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期
2013.01.28