国別・地域別情報

ホーム 国別・地域別情報 アジア 審決例・判例 意匠 (中国)意匠の職務発明の認定について

アジア / 審決例・判例


(中国)意匠の職務発明の認定について

2013年09月02日

  • アジア
  • 審決例・判例
  • 意匠

このコンテンツを印刷する

■概要
本件は意匠の職務発明に関する事案である。主力製品の製造工場の工場長を務めた意匠創作者について、工場の図面等の技術資料を調査確認し、事業に関係する図面や資料、物質施設等を利用できる立場であり、同工場の製品と関連がある製品に関係する意匠であったことから、職務発明と認められた。
■詳細及び留意点

【詳細】

 高級人民法院は、職務発明について、「事業体の任務の実行又は主に事業体の物資・技術条件を利用して完成した発明創造」や「退職、休職又は職務変更後一年以内に創作し、元事業体の職務又は任務に関係する発明創造」は職務発明の創造に該当するとし、ここでいう事業体の物資・技術条件は、「事業体の資金、設備、部品、原材料又は外部に公開されていない技術資料などを指す」と、専利法実施細則の規定を確認した。

 その上で、本件意匠は離職後2ヶ月以内に出願したものであることや、創作者が生産の職責を負う工場長で、製品部品の図面について修正し、最終的決定を下し、工場の技術力を監督する責務を負っていたこと、工場長として工場の図面等の技術資料を調査確認し、事業に関係する図面や資料、物質施設等を利用していた事実を認定し、問題の意匠が会社の生産経営活動に密接関連するものであったため、職務発明の具体的な時期、職責、関連などの相関要素と符合するとして、職務発明に該当するとした。

 

参考(広東省高級人民法院民事判決2006年12月15日付(2006)粤高法民三终字第139号より抜粋):

 根据《中华人民共和国专利法》及其实施细则的有关规定,执行本单位的任务或者主要是利用本单位的物质技术条件所完成的发明创造为职务发明创造;退职、退休或者调动工作后一年内作出的,与其在原单位承担的本职工作或者原单位分配的任务有关的发明创造属于执行本单位的任务所完成的职务发明创造。本单位的物质技术条件,是指本单位的资金、设备、零部件、原材料或者不对外公开的技术资料等。职务发明创造申请专利的权利属于该单位,申请被批准后,该单位为专利权人。本案黄潮平的涉案专利是其在离开丽维丝公司后两个多月内申请的,黄潮平是丽维丝公司的负责生产的厂长,并对丽维丝公司工厂生产的储物架产品部件的图纸负有修改、拍板的职责,对工厂的技术有把关的义务。储物架产品是丽维丝公司经营的主要产品,作为厂长,黄潮平有了解、接触工厂的图纸等技术资料,利用单位有关的图纸、资料等物质条件等的便利条件。黄潮平在离任丽维丝公司后作出的“橱柜内置物架(一)”外观设计专利是与丽维丝公司的生产经营活动密切相关的发明创造,符合职务发明创造所具备的时间、职责、关联等相关因素,现黄潮平没有证据证明其在进厂前与丽维丝公司就有关发明创造与丽维丝公司另有合同约定,或黄潮平在任职丽维丝公司之前已经完成了涉案发明创造成果,由此可以认定本案的ZL200430059532.X号外观设计专利应属职务发明创造,专利权应属丽维丝公司所有。在单位担任有关技术工作时间的长短不是职务发明创造归属的决定性因素,本身是否专职的技术、设计人员也不是职务发明创造归属的唯一主体因素。本案中,虽然黄潮平只在丽维丝公司任职半年多,但黄潮平担任的是厂长职务,有负责工厂储物架产品技术图纸把关的职责,只要黄潮平的涉案发明创造符合职务发明创造的法定条件,仍然可以认定本案专利权的归属。黄潮平认为原审认定涉案专利是个人发明创造的上诉理由依据不足,本院不予采纳。

(参考訳)

 《中華人民共和国専利法》及び実施細則の関連規定によれば、事業体の任務の実行又は主に事業体の物資・技術条件を利用して完成した発明創造は職務発明である。退職、休職又は職務変更後一年以内に創作し、元事業体の職務又は任務に関係する発明創造は事業体の任務を実行して完成した職務発明の創造に該当する。事業体の物資・技術条件というのは、事業体の資金、設備、部品、原材料又は外部に公開されていない技術資料などを指す。職務発明創造の専利出願の権利は事業体に帰属し、出願が認められた後は、同事業体が権利者になる。本件黄潮平の意匠は丽维丝公司離職後2ヶ月以内に出願したものであり、黄潮平は丽维丝公司の生産の職責を負う工場長で、丽维丝公司のストレージラック製品の部品の図面について修正し、最終的決定を下し、工場の技術力を監督する責務を負っていた。ストレージラックは丽维丝公司の経営上主要な製品であり、工場長として黄潮平は工場の図面等の技術資料を調査確認し、事業に関係する図面や資料、物質施設等を利用した。黄潮平が丽维丝公司離職後に創作した食器棚用の棚(1)の意匠権は、丽维丝公司の生産経営活動に密接関連する発明創造であり、職務発明の具体的な時期、職責、関連などの相関要素と符合する。黄潮平は、工場に赴任する前に丽维丝公司と関連発明創造について別途契約しているとか、丽维丝公司の勤務前に本件発明創造を既に完成していたことを証明する証拠を持っていないから、本件ZL200430059532X号の意匠は職務発明創造に該当し、意匠権は丽维丝公司が所有すると認定することができる。事業体において関連技術職務を担当する時間の長短は、職務発明の帰属を決定する要素ではなく、それ自体が専門職の技術であるか設計人員かについても職務発明創造の帰属の唯一の主体的要素ではない。本案では黄潮平は丽维丝公司に半年超だけ勤務したが、黄潮平が担当したのは工場長任務であり、工場のストレージラック製品技術図面管理の責任を負う職責を有し、黄潮平の本案発明創造が職務発明の法的要件を具備してさえすれば、本案専利権の帰属を認定することができる。原審は本件意匠を個人発明創造と認定すべきだったとする黄潮平の上訴理由は根拠が不足しており、当裁判所は支持しない。

 

【留意事項】

 中国の職務発明は、主に専利法第6条と専利法実施細則第12条で規定されている。専利法第6条は「当該部門の職務を遂行して、又は主に当該部門の物質・技術条件を利用して完成した発明創造は職務発明創造とする」と定め、「職務発明創造の専利出願の権利は当該部門に帰属し、出願が認可された場合は当該部門を専利権者とする」としている。一方、専利法実施細則第12条は、職務発明として1) 本来の職務の中で行った発明創造、2) 所属機関から与えられた本来の職務以外の任務の履行によって行われた発明創造、3) 定年退職、元の所属機関から転職した後又は労働や人事関係終止後の1年以内に行った、元の所属機関で担当していた本来の職務又は元の所属機関から与えられた任務と関係のある発明創造の3態様を定め、専利法第6条の物質・技術条件を「所属機関の資金、設備、部品、原材料、又は一般的に開示されていない技術資料などを指す」とする。

 本案では、意匠創作者が離職後2ヶ月以内に出願していたことや、創作者が生産の職責を負う工場長の立場であり、会社の施設を利用していたとして、本案意匠を職務発明に該当するとした。職務発明に該当すると結論付ける前に、判決は工場に赴任する前に会社側と関連発明創造について別途契約しているとか、勤務前に本件発明創造を既に完成していた事実の証明がないとしていることから、このような事実は、職務発明該当性の阻却事由になると思われる。

 職務発明であると裁判所に認定されて判決が確定した場合、専利審査指南第1部分第1章6.7.2.2(1)及び専利法実施細則第14条の各規定により、職務発明に該当するとの判決を受けた事業主は、国務院専利行政部門に判決文を提出し、別途専利権移転手続を行う必要がある。

■ソース
・広東省高級人民法院民事判決2006年12月15日付(2006)粤高法民三终字第139号
・中国専利法
・中国専利法実施細則
・中国専利審査指南 第1部分第1章 発明専利出願の方式審査
■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 根本雅成
■協力
中科専利商標代理有限責任公司
■本文書の作成時期

2013.01.14

■関連キーワード