国別・地域別情報

ホーム 国別・地域別情報 アジア 審決例・判例 商標 (中国)未登録周知商標について(その2)

アジア / 審決例・判例


(中国)未登録周知商標について(その2)

2013年08月02日

  • アジア
  • 審決例・判例
  • 商標

このコンテンツを印刷する

■概要
中国商標法第31条は「商標登録の出願は、他人が先に使用している一定の影響力を有する商標を不正な手段で登録してはならない。」と規定し、一定の知名度を有する他人の未登録商標を同一又は類似の商品や役務において登録することを排除している。本案では、一定の地域に一定の影響力を有する未登録商標も第31条の対象となるとされており、一定の影響力を有する商標の存在を知って先行登録を狙って出願していれば、不正手段とみなされている。
■詳細及び留意点

【詳細】

 本案で問題となった登録商標は「康大师」の文字商標(第21類)であり、中国商標法第31条の「商標登録の出願は、不正手段により他人が先に使用し、一定の影響力を有する商標を先取りして登録することはできない」との規定に該当するかについて争われた。

 本案では、引用商標の一定の影響力の有無の認定において、引用商標の使用実績について、「シャワーブロック、モップ、ブラシなどを含む商品の販売累計金額は6万元前後」であり、「モップ等の商品を含む販売累計金額は4万元超」と認定され、「康大师厂の印刷した包装袋の数量と、この類の小物商品の単価が比較的廉価なことと組み合わせれば、上述の販売金額に対応する一定の販売数量が存在する」として、「康大师厂はシャワーブロック、モップ等の商品に一定の販売量をもち、一定の地域範囲の公衆に一定の影響力を持っている」と認定された。

 次に、不正の手段については、引用商標が特定の商品について一定の地域範囲で一定の影響力を有するとの認定を前提に、登録商標の所有者と引用商標の所有者が共に福建省に所在し、互いに同業者であることから、参加した展示会等を通じて登録商標の所有者が引用商標の存在を知っていたと認定され、最終的に商標法第31条に該当するとされた。

 

参考(北京市高級人民法院行政判決書2008年4月14日付(2008)高行終字第100号より抜粋):

 虽然商标评审委员会在评审程序时未要求康大师厂提交证据1-7的原件不当,但在原审庭审中,康大师厂提交了其证据1-7的原件,云蕊公司对上述证据原件和相对应的复印件的一致性并未表示异议,因此在证据1-7的真实性得到确认的情况下,商标评审委员会据此作出的决定并无不当。

 商标法第三十一条规定:申请注册商标不得以不正当手段抢先注册他人已经使用并有一定影响的商标。本案中,证据2、3是购销合同及相应的发票,在购销合同中已经写明销售的是康大师厂生产的康大师牌系列家庭日用品,证据4的协议书中亦写明印制的是“康大师”品牌外包装,在购销合同或协议书与发票在商品、时间均可相互对应的情况下,应认定证据2、3的购销合同已实际履行,即在争议商标申请注册之前,康大师厂已在先使用“康大师”标识。因此云蕊公司关于商标评审委员会和康大师厂所举证据不足以证明康大师厂在沐浴海绵等四项商品上对“康大师”商标使用在先的主张与事实不符,本院不予支持。

 根据本案查明的事实,在争议商标申请注册前,康大师厂并未使用除“康大师”外的其他商标;其次,康大师厂提交的证据2表明包括沐浴块、地拖、刷子等商品在内的销售金额累计6万元左右、证据3表明包括地拖等商品在内的销售金额累计已超过4万元。同时结合证据4载明的康大师厂印制包装袋的数量,并且由于该类小商品单价较低,与上述销售数额相对应具有一定的销售数量。因此应认定康大师厂在沐浴海绵、拖把等商品上有一定的销量,在一定地域范围的相关公众中已具有一定影响。

 此外,如前所述,在争议商标申请注册前,康大师厂在相关商品上使用“康大师”商标,在一定地域范围的相关公众中已具有一定影响,云蕊公司与康大师厂同处福建省,云蕊公司作为同行业者,对此应当知晓。且通过参加展会等途径云蕊公司也应知“康大师”为他人商标。因此应认定云蕊公司主观上知晓“康大师”商标被康大师厂在先使用在沐浴海绵、拖把等商品上,其抢先注册“康大师”商标的行为属于商标法第三十一条规定的“以不正当手段抢先注册他人已经使用并有一定影响的商标”的行为。云蕊公司关于其并不知晓“康大师”商标被他人在沐浴海绵等四项商品上使用在先的主张与事实不符,本院对此不予支持。

(参考訳)

 中国商標審判部が評審過程において康大师厂に証拠1-7の原本の提出を要求しなかったことは不当であるが、原審の審理中に康大师厂が証拠1-7の原本を提出し、云蕊公司が上述証拠の原本と対応する複写物の同一性について反対意見を申し立ていないことから、証拠1-7の真実性の確証が得られている状況下では、中国商標審判部の決定に不備はない。

 商標法第31条は「商標登録の出願は、他人が先に使用している一定の影響力のある商標を不正な手段で登録してはならない。」と規定する。本案中、証拠2及び3は購入契約とそれに対応する領収書であるが、購入契約において購入物は康大师厂製造の康大师ブランドの家庭用品であることを明らかに記載している。また、証拠4の協議書でも印刷物は康大师ブランドの外包装であることを明らかに記載している。購入契約又は協議書は領収書と商品や時期が相互に対応している状況から、証拠2及び3の購入契約は実際に既に履行されたと認定すべきである。即ち、係争商標の登録出願前に、康大师厂は既に「康大师」の標識を使用していたと言える。よって、云蕊公司が中国商標審判部や康大师厂が挙げた証拠について、康大师厂がスポンジ等の4つの商品に「康大师」商標を先に使用したとの証明として不十分とする主張は事実と符合せず、当裁判所は支持しない。

 本案審理で明らかとなった事実によれば、係争商標の登録出願前に、康大师厂は「康大师」を除いたその他の商標を使用していなかった。次に、康大师厂が提出した証拠2によれば、シャワーブロック、モップ、ブラシなどを含む商品の販売累計金額は6万元前後であり、証拠3によれば、モップ等の商品を含む販売累計金額は4万元超である。同時に、証拠4から明らかとなった康大师厂の印刷した包装袋の数量を結びつけると、この類の小物商品の単価が比較的廉価であるから、上述の販売金額に対応した一定の販売数量が存在することが分かる。よって、康大师厂はシャワーブロック、モップ等の商品に一定の販売量をもち、一定の地域範囲の公衆に一定の影響力を持っていると認定すべきである。

 その他、前に述べたように、係争商標の登録出願前から康大师厂は関連商品に「康大师」商標を使用しており、一定地域の範囲の公衆に既に一定の影響力を持っており、云蕊公司と康大师厂は同じ福建省にあり、云蕊公司は同業者であるから、この事実について当然知っているはずである。展示会への参加等のルートを通じて、云蕊公司は「康大师」が他人の商標であると知っていたはずである。よって、云蕊公司は「康大师」商標が康大师厂によってシャワーブロック、モップ等の商品に先に使用されていることを自ら認識しており、「康大师」商標を先取りして登録する行為は商標法第31条が規定する「他人が先に使用している一定の影響力を有する商標を不正な手段で登録する」行為に該当すると認定されるべきである。云蕊公司が「康大师」商標が他人によってスポンジ等の4つの商品に先に使用されていたことを知らなかったとの主張は事実と符合せず、当裁判所は支持しない。

本件商標

【留意事項】

 本案では、一定の影響力を有するか否かの判断過程において具体的な販売額(6万元や4万元)が検討されている。問題の商品が比較的単価が安いという事情も考慮して販売数量を多いと認定している。影響力の有無の判断において販売数量は重要な判断要素になると考えられるので、冒認出願への対応策として、販売数量の水準を具体的に示せるようにしておくことは重要である。

■ソース
・北京市高級人民法院行政判決書2008年4月14日付(2008)高行終字第100号
・中国商標法
■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 根本雅成
■協力
北京林達劉知識産権代理事務所
■本文書の作成時期

2012.12.19

■関連キーワード