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(中国)意匠の類否判断の主体について

2013年07月19日

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■概要
 中国において保護される意匠は、日本と同様、新規性の要件を満たしていなければならない。本案では、公知意匠との類否判断を行う際に想定する主体に関して、意匠に係る物品の一般消費者を主体的判断の基準とするべきであり、一般消費者とは通常、物品の購買者又は使用者を指すと判断された。
■詳細及び留意点

【詳細】

 本案は、パイプの意匠に対して中国特許庁(中国語「专利复审委员会」)が無効決定を行い、それを不服として意匠権者が取消訴訟を提起したが、第一審と第二審が共に無効決定を支持した事案である。第二審である北京高級人民法院は、専利法第23条に規定される判断主体について、「無効審判においては、登録意匠と引用意匠が同一又は類似するか否かの判断する際は、一般的消費者を主体的判断の基準とすべきであり、一般消費者とは、通常、製品の購買者又は使用者を指す」とした。

 その上で、本件意匠と公知意匠について、全体及び部材の形状などが略同一であり、その主要な違いは、円盤状フランジの形状にわずかに存在するくらいで、パイプを連結する際にネジで固定するために設けられた部分は、パイプの接続機能のために一つの特定の形状に限定されるものであるから、意匠の類否判断の際には考慮されず、本件意匠がこのような円形状の孔を省略することは、意匠全体の視覚効果について顕著な影響をもつとは思えず、その他の違いも非常に微細なものに過ぎないため局地的部分的な微細な変化に該当し、意匠全体の視覚効果について顕著な影響があるとはいえないとして、第一審及び特許庁審判部と同様、本件意匠と公知意匠は互いに類似と判断した。

 

参考(北京市高級人民法院民事判決2008年5月23日付(2008)高行初字第214号より抜粋):

 本院认为,根据我国专利法第二十三条的规定,授予专利权的外观设计,应当同申请日以前在国内外出版物上公开发表过或者国内公开使用过的外观设计不相同和不相近似,并不得与他人在先取得的合法权利相冲突。在无效审查过程中判断专利外观设计与在先设计是否构成相同或相似外观设计时,应当采用一般消费者的主体判断标准,而一般消费者通常是产品的购买者或使用者。

 本案附件1公开的中国外观设计专利的授权公告日早于本专利的申请日,属于专利法第二十三条所规定的在先设计。本专利外观设计使用的产品均为直管,附件1所公开的外观设计使用的产品为翻边法兰管,二者属于同类产品。将本专利与附件1所公开的外观设计相比较,二者的整体与部件形状、部件之间的布局与尺寸比例、直管与法兰的连接均基本相同,其主要区别在于圆盘状法兰的形状略有不同,具体表现为:1.本专利的法兰上没有小圆孔,而附件1的法兰靠近边缘的位置有数个小圆孔;2.本专利的法兰面中部有一略微凸起的环状台面,而附件1的法兰面为一个平面,没有凸起台面。对于第1点区别,由于附件1中法兰上设置数个小圆孔的目的是连接管道时供穿过螺丝固定所用,这是由管道的连接功能唯一限定的特定形状,故在判断外观设计的相似性时不予考虑,本专利省略了这种圆孔不会对外观设计整体视觉效果产生显著影响。对于第二点区别,相对于本专利整体外观设计而言,本专利法兰密封面所具有的环状台面凸起仅位于法兰盘密封面上且非常细微,应属于局部的细微变化,对外观设计的整体视觉效果不足以产生显著影响。因此,本专利与附件1所公开的外观设计已构成相似外观设计,科进尼龙公司关于二者不构成相同或相似外观设计的上诉理由不能成立,其上诉请求本院不予支持。

(参考訳)

 当裁判所の判断は以下のとおりである。我が国専利法第23条の規定によれば、専利権が付与される意匠は、出願前の国内外の出版物で公然発表され、又は、国内で公然使用された意匠と同一でも類似でもなく、かつ、他人が合法的に取得した権利と抵触しないものでなければならない。無効審判においては、登録意匠と引用意匠が同一又は類似するか否かを判断する際、一般的消費者を主体的判断の基準とすべきであり、一般消費者とは、通常、製品の購買者又は使用者を指す。

 付属文書1に開示される中国登録意匠は、登録公告日が本件意匠の出願日よりも前であるから、専利法第23条に規定する先行意匠に該当する。本件意匠に係る物品はパイプであり、付属文書1に開示される意匠に係る物品はフランジパイプであり、両者は同種の物品である。本件意匠と付属文書1に開示される意匠とを比較すると、両者は全体及び部材の形状、部材同士の配置及び寸法比率、パイプとフランジの連結形態がいずれも略同一であり、その主要な違いは、円盤状フランジの形状にわずかに差異が存在するくらいで、具体的には次の通りである。1)本件意匠のフランジ上には小さな円形の孔はないが、付属文書1の意匠には、フランジのエッジに複数の小さな円形の孔が存在すること、2)本件意匠のフランジ表面の中央部にわずかに突起した環状の段部があるが、付属文書1の意匠のフランジは平面であり、突起する段部は存在しないこと。前者の相違については、付属文書1の意匠のフランジ上に複数の小さな円形の孔を設けた目的は、パイプを連結する際にネジで固定するためであり、これはパイプの接続機能のために一つの特定の形状に限定されるものであるから、意匠の類否判断の際には考慮されず、本件意匠がこのような円形状の孔を省略することは、意匠全体の視覚効果について顕著な影響を発生させるとは思えない。後者の相違については、本件意匠の全体の形態から、本件意匠のフランジのシール面における環状の段部の突起は、フランジのシール面にのみ形成された非常に微細なものに過ぎず、局地的部分的な微細な変化に該当し、意匠全体の視覚効果について、顕著な影響があるとはいえない。よって、本件意匠と付属文書1に開示される意匠とは互いに類似する意匠に該当し、科進尼龍公司の両意匠は互いに同一又は類似する意匠に該当しないとする上訴理由は成立せず、上訴請求を当裁判所は支持しない。

登録意匠の図面

登録意匠の図面

【留意事項】

 意匠の類否判断は、形態が共通する部分と異なる部分を認定し、どちらの部分が意匠全体の視覚効果に顕著な影響をもつかに関する論理付けを通じて行われる。物品の基本的な形状が共通していれば、共通形状部分の意匠全体の視覚効果への影響が大きいといえるため、形態が異なる部分が存在していても、共通形状部分の視覚効果への影響力が異なる部分の影響力を上回っているとして、意匠は互いに類似するとの結論になる。この意匠全体の視覚効果への影響力の大小の論理付けは、一般消費者の立場から行われるというのが北京高級人民法院の立場であるので、意匠の類似又は非類似の主張は、その物品の一般消費者の目線から論理展開していくことが求められる。

■ソース
・北京市高級人民法院民事判決2008年5月23日付(2008)高行初字第214号
・中国専利法
■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 根本雅成
■協力
北京林達劉知識産権代理事務所
■本文書の作成時期

2013.01.31

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