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(中国)建築材のボードの類否について
2013年06月27日
■概要
中国で意匠登録を行うには新規性と創作性が求められるが、本案は新規性について争われた事案である。縦横の比率の異なる2種類の長方形を組み合わせた本件意匠と、長方形と正方形を組み合わせた公知意匠について、類似と判断して無効と決定した特許庁審判部の判断が第一審判決で覆されたため特許庁審判部が上訴したが、北京高級人民法院は第一審を支持した。■詳細及び留意点
【詳細】
本案で無効決定がなされた登録意匠は建築材のボードである。登録意匠は縦横の比率が異なる2種類の長方形を組み合わせた意匠であり、長方形と正方形とを組み合わせた公知意匠が引用されていた。
高級人民法院は、両意匠の共通点として、「薄型の床レンガであること」、「正面に縦横方向の継ぎ目状の溝があること」、「交錯するように貼り合わされた長方形の配列形態が同じ」であることを挙げ、相違点としては、「全体形状において長方形と略正方形であること」、「ボードの四角形が、本件意匠は長方形で、引用意匠(中国語「在先设计」)は正方形であること」、「ユニットが3列設計と4列設計であること」、「引用意匠には本件意匠が示す縦縞がないこと」などを挙げた上で、「一般消費者が正方形レンガと長方形レンガについて、混同及び誤認を生じるとは思えない」、「両者の全体形状と交錯した貼付ユニットの配列数が明らかに異なるから、一般消費者が感じ取る本件意匠と引用意匠の視覚効果は同一でもなく類似でもない」、「建築物表面に連続して敷いて貼る場合の状態を比較すれば、本件意匠と引用意匠に上述の違いがあるため、本件意匠を敷いて貼る視覚効果と、引用意匠の敷いて貼る視覚効果は、一般消費者の立場から見れば、両者には顕著な違いが存在する」として、両意匠を互いに非類似とした。
参考(北京市高級人民法院民事判決2008年5月6日付(2008)高行初字第27号より抜粋):
本案中,本专利与在先设计均为薄片设计的地板砖,正面均有纵向、横向仿砌缝凹槽;均有长方形交错拼贴单元,其交错单元的排列方式相同。本专利与在先设计相比较,二者不同之处主要在于:整体形状上分别为长方形和近似正方形;交错拼贴单元上本专利均为长方形,在先设计还包括方形单元;本专利交错拼贴单元排列为三排设计,而在先设计交错拼贴单元排列为四排设计;在先设计无本专利所示竖向条纹;二者的仿砌缝凹槽截面形状分别为近似圆弧槽和矩形槽。
地板砖类产品形状通常为方砖或者条形砖,因此,一般消费者对正方形砖和长方形砖不会产生混淆和误认。本专利与在先设计从形状上比较,在先设计为近似正方形,本专利为长方形,二者形状不相近似。本专利与在先设计相比减少了一排交错拼贴单元的设计,但是,该差异导致二者的整体形状及交错拼贴单元的排数明显不同,一般消费者所感受到的本专利与在先设计的视觉效果不相同也不相近似。将本专利与在先设计在使用状态下,即连续铺贴在建筑物表面时进行比较,由于本专利与在先设计存在的上述不同,故本专利铺贴的视觉效果,与在先设计铺贴的视觉效果,从一般消费者的角度,二者存在显著的差异。本专利与在先设计相比不相同也不相近似。专利复审委员会在第8792号无效决定中关于本专利与在先设计相比属于相近似的外观设计的认定,属于认定事实不清,其适用法律也是错误的。由于第8792号无效决定对欧迪斯公司和宝达公司的其他无效理由和证据未作评述,因此,专利复审委员会应当在进一步认定事实的基础上予以判定。
专利复审委员会的上诉理由不能成立,其上诉请求本院不予支持。
(参考訳)
本案では、本件意匠と引用意匠は共に薄型の床レンガで、共に正面に縦横方向の継ぎ目状溝があり、共に長方形が交錯するように貼り合わされたユニットを有し、その交錯したユニットの配列形態は同じである。本件意匠と引用意匠とを比較すると、両者の相違点は主に、全体形状が、一方は長方形で他方は略正方形である点、交錯するように配置されたユニットについて、本件意匠では長方形であるのに対し、引用意匠は正方形もユニットに入っている点、本件意匠の交錯するように配置されたユニットは3列設計であるのに対し、引用意匠の交錯するように配置されたユニットは4列設計である点、引用意匠には本件意匠が示す縦縞がない点、両者の継ぎ目状溝の断面形状が、一方は略円弧状の溝であり、他方は矩形状の溝である点にある。
床レンガ類の製品の形状は四角又は細長であるのが一般的であるため、一般消費者が正方形レンガと長方形レンガについて、混同及び誤認を生じるとは思えない。本件意匠と引用意匠の形状を比較すると、引用意匠は略正方形で本件意匠は長方形であるから、両者の形状は同一でも類似でもない。本件意匠と引用意匠を比較すると、交錯した貼付ユニットが1列少なくなったが、同差異によって、両者の全体形状と交錯した貼付ユニットの配列数が明らかに異なるから、一般消費者が感じ取る本件意匠と引用意匠の視覚効果は同一でもなく類似でもない。本件意匠と引用意匠の使用状態、すなわち、建築物表面に連続して敷いて貼る場合の状態を比較すれば、本件意匠と引用意匠に上述の違いが存在するため、本件意匠を敷いて貼る視覚効果と、引用意匠の敷いて貼る視覚効果は、一般消費者の立場から見れば、両者には顕著な違いが存在する。本件意匠と引用意匠を対比すれば、互いに同一でも類似でもない。特許庁審判部が第8792号の無効決定において、本件意匠と引用意匠と対比して互いに類似意匠とした認定は、事実不明瞭な認定であり、その法律の適用も間違ったものである。第8792号の無効決定には、欧迪斯公司及び宝達公司のその他の無効理由や証拠についての評価や論述がないため、特許庁審判部は、更に事実認定をした上で決定をしなければならない。
特許庁審判部の上訴理由は成立せず、その上訴請求を当裁判所は支持しない。
【留意事項】
専利法第23条の新規性の判断は一般消費者の立場で検討するというのが基本であるが、本案では、意匠の実施場面を想定して一般消費者は間違えないとして、新規性ありと判断している。本案では新規性がないとして無効決定がなされたことから新規性の有無のみが争点となったが、意匠登録されるためには、創作非容易性の要件も具備しなければならないため、差戻し後の無効審判で創作容易と判断される可能性もある点に留意する必要がある。
■ソース
・北京市高級人民法院民事判決2008年5月6日付(2008)高行終字第27号http://bjgy.chinacourt.org/public/paperview.php?id=27136 ・中国専利法
■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 根本雅成■協力
北京林達劉知識産権代理事務所■本文書の作成時期
2012.12.17