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(台湾)理論上の効果と事実上の効果が争点となった事例

2013年06月07日

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■概要
被告は、係争特許第I243388号「複数の電極のコンデンサ構造と製造工程」において、その請求項1に係る発明の効果が実務上必ずしも生じないと主張した。しかしながら、判決は、智慧財産法院は、請求項1では、同一の導電平面を複数個の電極板に分割して該複数個の電極板を均等に分けると限定していないため、請求項1に係る発明は、明細書の各実施例の効果を達成できるとして、被告の主張を却下した。
■詳細及び留意点

【詳細】

 特許権者は、被告の製品が請求項に係る発明を侵害したと主張した。被告は、請求項1に記載された「導電平面が複数個の電極板に分割されている」との技術的特徴において、実務上、電極板の分割により僅かな異なる等電位効果を生じ、それにより結合静電容量が生じるため、この結合静電容量により該技術的特徴が特許権者の主張の効果を失うと主張した。しかしながら、智慧財産法院は、係争特許明細書に、「理論上」で等電位であり結合静電容量が存在しないが、事実上で電極板の分割により僅かな非等電位効果が生じ、それにより結合静電容量が生じることも記載されていたことから、複数の電極の分割が、工程の変化や誤差により異なることを係争特許明細書が教示していることは明らかであるとした上で、請求項1では、同一の導電平面を複数個の電極板に分割して該複数個の電極板を均等に分けると限定していないため、請求項1に係る発明は、明細書の各実施例の効果を達成できるとして、被告の主張を却下した。

 

参考(智慧財産法院民事判決の判決理由より抜粋):

 

被告雖辯稱:同一導電平面切分成複數個電極板,此複數個電極板「理論上為等電位,不會有耦合電容存在,但事實上因為電極板的分割會有些微的不同等電位效應而產生寄生的耦合電容」。換言之,同一導電平面切分成複數個電極板後,此複數個電極板有可能為等電位而        不會產生耦合電容。是依系爭專利一專利說明書所述,將導電平面切分成複數個電極板後,此複數個電極板間未必會產生原告所宣稱系爭專利一申請專利範圍第1 項之功效等語。然系爭專利一專利說明書已載明「理論」與「事實」上確實不同,實施系爭專利一同一導電平面切分成複數個電極板,蝕刻製程會有變異、誤差,實務上不可能將系爭專利一在同一導電平面切分為複數個電極均分,就通常知識可理解分佈在上開不均複數個電極表面上之電荷會有不同,所產生的電位也會有不同,自然會使上開複數電極板邊緣間產生耦合效應,即符合系爭專利一說明書所載「事實上」因為電極板的分割會有些微不同等電位效應而產生寄生的耦合電容。其次,系爭專利一專利說明書亦已載明「理論上」為等電位不會有耦合電容存在,但事實上因為電極板的分割會有些微的不等電位效應而產生寄生的耦合電容,足徵系爭專利一說明書已教示複數電極的分割會因製程變異、誤差而有不同。另參酌系爭專利一專利說明書第9 頁第2 行所載「既然是複數個電極板的電容,當然可以由不同形狀且不同分塊的結構完成之,切割方式只要有適當合即可,切割不一定要大小一致,……,並不以對稱或偶數或奇數為限。」且系爭專利一申請專利範圍第1 項並未限定同一導電平面切分成複數個電極板,該複數個電極板均分,堪信系爭專利一申請專利範圍第1 項即可達成發明說明各實施例之功效。

 

(日本語訳「被告は、同一導電平面が複数個の電極板に分割され、この複数個の電極板において「理論上は等電位であり、結合静電容量は存在しないが、事実上、電極板の分割により僅かな異なる等電位効果を生じ、それにより結合静電容量が生じる」と反論した。換言すれば、同一の導電平面を複数個の電極板に分割した後、この複数個の電極板が等電位であるため結合静電容量が生じない可能性がある。よって、係争特許明細書によれば、導電平面を複数個の電極板に分割した後、この複数個の電極板の間に必ずしも、原告の主張した請求項1に係る発明の効果は生じない。しかしながら、係争特許明細書には、「理論」上と「事実」上で確かに異なることが記載されており、係争発明における、同一の導電平面を複数個の電極板に分割することの実施において、エッチング工程に変化や誤差があり、実務上、係争発明において同一の導電平面を複数個の電極に均等に分けることは不可能である。そうすると、通常の知識から明らかなように、上記均等でない複数個の電極の表面に分布する電荷は異なり、生じる電位も異なり、これにより、上記複数の電極板の縁の間にカップリング効果が当然生じる。すなわち、係争特許明細書に記載された、「事実上」で電極板の分割により僅かな異なる等電位効果が生じ、それにより結合静電容量が生じることに符合する。そして、係争特許明細書に、「理論上」で等電位であり結合静電容量が存在しないが、事実上で電極板の分割により僅かな非等電位効果が生じ、それにより結合静電容量が生じることも記載されていたことから、複数の電極の分割が、工程の変化や誤差により異なることを係争特許明細書が教示していることは明らかである。また、係争特許明細書第9頁第2行に記載された「複数個の電極板の静電容量であるから、異なる形状と異なるサブブロックの構造により当然完成されており、切断手段が適当であればよく、切断は大きさが一致するようにするとは限らない。……対称又は偶数又は奇数とは限らない。」を考慮し、かつ請求項1では、同一の導電平面を複数個の電極板に分割して該複数個の電極板を均等に分けると限定していないため、請求項1に係る発明が明細書の各実施例の効果を達成できると確信する。」)

 

【留意事項】

 明細書に記載した効果は、理論のみに基づいて達成できると主張することが可能である。したがって、実施例として記載した実験のデータが明細書に記載した効果を100%支持しなくても、出願人は理論のみからの観点を主張して反論することができ、審査官や裁判官が当該主張を採用すれば特許になる可能性がある。

■ソース
智慧財産法院民事判決99年度民専訴字第156号
■本文書の作成者
知崇国際特許事務所 弁理士 松本征二
■協力
萬國法律事務所 鍾文岳
一般社団法人 日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2013.01.07

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