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(中国)公知意匠の特定について

2013年05月10日

  • アジア
  • 審決例・判例
  • 意匠

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■概要
意匠の類否判断を行う前提として、無効理由の根拠となる意匠を明確に特定する必要がある。本件では、無効理由の根拠として引用した意匠について、外観形状に不明な面があるために複数の外観形状が考えられる結果、意匠の類否判断を行う前提である意匠の特定ができないとして、特許庁審判部は公知意匠と類似するとの無効審判請求人の主張を退け、第一審及び第二審と共に、特許庁審判部の維持決定を支持した。
■詳細及び留意点

 本件意匠は上水口の意匠である。第二審の北京高級人民法院は、「引用意匠と本意匠が同一又は類似であるか否かを判断するにあたり、両者の全体の外観形状をまず特定しなければならない」とし、上訴人が提出した断面図について、「機械製図の基本原理からすれば、一つの断面図に対応する製品の外観形状が複数存在する可能性があ」り、本件の引用意匠(登録実用新案である証拠2の図面に示されたもの)は断面図しかなく、平面図や底面図がないためその外観形状を特定することは不可能であり、証拠2の明細書の記載内容を踏まえても、引用意匠の外観形状を一つに特定することはできないとした。その結果、「現存の証拠では本意匠と引用意匠が同一又は類似であると認定することはできず、本意匠が専利法第23条の規定に合致しないと証明することはできない」として、第一審判決と特許庁審判部(中国語「专利复审委员会」)の維持決定を支持した。

 なお、上訴人は、無効審判段階で提出しなかった3件の証拠を第一審の北京中級人民法院の段階で提出したが、行政行為の合法性を事実に照らして審査する裁判所としては、正当な理由なく無効審判で提出しなかった証拠を採用することはできないとして、これら3件の証拠を採用しなかった。

 

参考(北京市高級人民法院民事判決2008年4月18日付(2008)高行初字第26号より抜粋):

 根据专利法第二十三条的规定,授予专利权的外观设计,应当同申请日以前在国内外出版物上公开发表过的外观设计不相同和不相近似。判断在先设计与本专利是否相同或相近似,首先必须确定二者的整体外观形状。

 根据机械制图的基本原理,同一剖视图所对应的产品的外观形状存在多种可能性。本案中,在先设计即证据2的附图1和附图2中所反映的上水口5的视图均为剖视图,缺少了俯视图和仰视图,仅以该两幅剖视图不能确定其上水口5的外观形状。虽然结合证据2的说明书记载的关于“本实用新型椭圆形凹槽19与凸台18配合,保证了上水口5的准确定位”的内容可以确定上水口5的长方形部分即凸台18的形状应是椭圆柱体,但是,就上水口5的梯形部分而言,仅以两幅剖视图不能唯一确定其外观形状。上诉人麦哈勃张证据2的附图1和附图2中所反映的上水口5的梯形部分必然是圆锥体或圆台的推论,缺乏证据支持,本院不予采纳。因此,根据证据2的附图1和附图2公开的内容不能唯一确定上水口5的整体外观形状。 综上,根据现有证据不能认定本专利与该在先设计相同或者相近似,不能证明本专利不符合专利法第二十三条的规定。

(参考訳)

 専利法第23条の規定は、専利権を付与する意匠は、出願前に国内外出版物で公然公表された意匠と同一でも類似でもないものとしている。引用意匠と本意匠が同一又は類似であるか否かを判断するにあたり、両者の全体の外観形状をまず特定しなければならない。

 機械製図の基本原理からすれば、一つの断面図に対応する製品の外観形状が複数存在する可能性がある。本案において、引用意匠すなわち証拠2の図1と図2に表れている上水口5の図面は何れも断面図で、平面図と底面図を欠いており、これら2つの断面図から、上水口5の外観形状を特定することは不可能である。証拠2の明細書の「本考案は、楕円形凹部19と凸部18との係合により、上水口5の正確な位置決めを確保した」という記載から、上水口5の長方形部分すなわち、凸部18の形状は楕円柱であると判断できるが、上水口5の台形部分に関しては、2つの断面図のみによってその外観形状を一つに特定することはできない。上訴人である麦哈勃は、証拠2の図1と図2に示されている上水口5の台形部分は必ず円錐形又は円錐台になるとの推論を主張したが、裏付ける証拠がないため、当裁判所は採用できない。よって、証拠2の図1と図2に開示される内容では、上水口5の全体の外観形状を一つに特定することはできない。以上により、現存の証拠では本意匠と引用意匠が同一又は類似であると認定することはできず、本意匠が専利法第23条の規定に合致しないと証明することはできない。

登録意匠

登録意匠

 

【留意事項】

 意匠権を無効にする場合、公知意匠を引き合いに出して専利法第23条違反と主張する場合が多いと思われるが、その前提として、登録意匠と無効の根拠とする公知意匠を特定しなければならない。この作業は無効を主張する側の責任で行われる。登録意匠は意匠公報によって六面を特定することができるが、無効原因とする公知意匠については、その公知意匠が登録意匠であれば、意匠公報を入手することによって容易に特定できる。一方、意匠公報以外の資料で公知意匠を特定する場合、たとえば、新聞、雑誌またはやインターネット上の情報であれば、物品の六面全てが掲載されていることは稀であろう。また、特許や実用新案の公報は、物品の一面しか現れていない場合が多い。このような資料を利用して公知意匠を特定する場合、丁寧な証拠収集作業が必要になる。

 本件の場合、実用新案の公報によって引用意匠を特定しようとしたようであるが、判決を読む限り、無効審判の段階で審判請求人が実用新案の公報以外の資料を十分用意していたようには見えない。無効審判の決定で公知意匠の特定ができないと指摘され、審決取消訴訟の段階で証拠を追加したようである。裁判所は審判段階で提出された証拠に照らして特許庁審判部の判断の違法性について判断する立場から、裁判段階で追加した資料を判断材料にしないとした判断は十分理解できる。本件は、無効審判請求段階の不十分な立証活動が、無効審判請求人側に不利に働いた事案といえるだろう。

本件から導き出せることは、自社の意匠はすでに特許公報、新聞または雑誌に掲載されたから、中国で同じ意匠が登録されても無効にできると考えることは危険ということである。実体審査なく登録される中国の意匠制度において、自社の意匠に他者の意匠権を設定させないためには、自社意匠が無効審判において特定できるようなかたちで公知にするなど、「意匠権を設定させない」という目的にしっかり対応した作業を行う必要があることを認識しなければならない。

■ソース
・北京市高級人民法院民事判決2008年4月18日付(2008)高行終字第26号
http://bjgy.chinacourt.org/public/paperview.php?id=27171 ・中国専利法
■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 根本雅成
■協力
北京林達劉知識産権代理事務所
■本文書の作成時期
2013.01.08
■関連キーワード
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