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(韓国)特許請求の範囲と発明の詳細な説明が異なる場合であっても、明細書全体を参酌し、特許を受けることができる完成された発明とみることはできるが、上記記載の差異から、特許請求の範囲の記載不備のため特許は無効とされるべきとされた事例。

2012年07月31日

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■詳細及び留意点

本件は、「断面が長方形であるコイルスプリングの製造方法」に関する本件特許発明に関し、未完成発明であるかと特許請求範囲の記載不備につき争われた。

 

該当の技術分野における通常の知識を持った者が特許請求の範囲の記載だけでなく明細書などを全体的に考慮し、発明が属する分野で当業者が反復実施して目的とする技術的効果を得ることができる程度に具体的、客観的に構成されていれば、たとえ特許請求の範囲に記載された内容と発明の詳細な説明及び図面に記載された内容が一部異なるとしても、一応特許を受けることができる完成された発明に該当するものと見ることができる。しかし、異なる記載内容がある場合には特許請求の範囲の記載が不明瞭になる結果をもたらすため、特許法第42条第4項第2号に違反し特許請求の範囲の記載不備に該当する。

 

特許法院は、第一に、本件特許発明が未完成発明であるかどうかと関連し、「完成された発明とは、その発明が属する分野で通常の知識を持った者が反復実施して目的とする技術的効果を得ることができる程度にまで具体的、客観的に構成されている発明であって、その判断は特許出願の明細書に記載された発明の目的、構成及び作用効果などを全体的に考慮し出願当時の技術水準に基づいて判断しなければならない」という法理に基づき、「本件特許発明の特許請求の範囲の記載から把握される本件特許発明の第2成形工程の結果として形成される素材の断面形状は『全体的に長方形の形状を持ってはいるが、その中の一辺が直線でない曲線形状を持ったもの』であるのに比べて、本件特許発明の明細書の全体的な記載と図面の図示を総合して把握される本件特許発明の第2成形工程の結果として形成される断面形状は『外径側の幅が大きく、内径側の幅が小さく、内径はラウンディング面とされた断面』、つまり『片方面にラウンディング面を持つ台形状の断面』であり互いに一致しない。しかし、上記のように、特許出願の明細書に記載された発明の目的、構成及び作用効果などを全体的に考慮して判断した場合、特許請求の範囲の記載にもかかわらず、通常の技術者が本件特許発明の第2成形工程の結果として形成される素材の断面形状を、『外径側の幅が大きく、内径側の幅が小さく、内径はラウンディング面とされた断面』、つまり『片方面にラウンディング面を持つ台形状の断面』と認識することが可能であるため、本件特許発明が未完成の発明に該当すると見ることはできない」と判断した。

 

特許法院は、第二に、本件特許発明の請求範囲が記載不備に該当するかどうかと関連し、「請求項には明確な記載だけが許容され、発明の構成を不明瞭に表現する用語は原則的に許容されず、さらに特許請求の範囲の解釈は明細書を参照してなされることに照らし、特許請求の範囲には発明の詳細な説明で定義している用語の定義と異なる意味で用語を使用するなど、結果的に請求範囲を不明瞭にすることも許容されない」という法理に基づき、「『長方形』は、四角形の中でもその内角が全て直角である長方形を意味する用語であるため、『台形状』まで『長方形』に含まれると見ることはできず、本件特許発明の詳細な説明及び図面の全体的な趣旨から、厚肉帯(13)が発生するという従来技術の問題点を解決うるためには、コイルリングにおける圧縮成形による応力変形を補正するため、コイル形状に成形する直前の素材の断面を『外径側の幅が大きく、内径側の幅が小さく、内径はラウンディング面とされた断面』としなければならず、これに対し、『内径と外径の幅を同じにしながら、一方をラウンディング面とした構成』だけでは本件発明の目的を達成するのは難しい」ことから、「本件特許発明の特許請求の範囲の第1項の記載は発明が明確に記載されていない場合に該当し、特許請求の範囲の記載不備に該当」するとして、本件特許は無効とされるべきであると判断した。

 

特許法院は、最後に、予備的判断として本件特許発明は比較対象発明に比べて進歩性がないと判断し、結局本件特許発明は無効とされなければならないとして原告の請求を認容した。

 

【留意事項】

特許請求の範囲の記載と、発明の詳細な説明及び図面の記載が互いに異なる場合には発明の実施が不可能であり、未完成発明として特許を受けることができないか、特許法第42条第4項第2号に違反し特許請求の範囲の記載不備として特許を受けることができないという2つの場合があり得る。未完成発明に関する主張と記載不備に関する主張は、それぞれ観点が異なることから、それぞれについて対応することが重要である。

■ソース
韓国特許法院判決2010年10月29日付2010허3622
http://glaw.scourt.go.kr/jbsonw/jbsonc08r01.do?docID=976E0E25153DE0F2E043AC100C64E0F2
■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 中村敬子
特許庁総務部企画調査課 古田敦浩
■協力
崔達龍国際特許法律事務所
■本文書の作成時期

2012.07.04

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