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(韓国)明細書に記載されていない有利な効果を進歩性の判断において参酌した事例

2013年04月16日

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■概要
大法院は、特許発明の有利な効果が詳細な説明に記載されていない場合にも、その発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者が詳細な説明の記載から有利な効果を推論できるのであれば、進歩性判断の際にその効果も参酌する必要があると判示した。

本件特許発明は、その明細書にノッチ部の作用効果が具体的に記載されていないが、その効果は明細書全体の記載から容易に分かることができ、当業者にとって容易に見出し難いノッチ部という新規構成を通じて、より向上された作用効果をもたらしたことが認められ、引用考案等と比較し、その進歩性が認められた事例である。大法院は、原審の判断・認定が正当であるとして上告を棄却した。
■詳細及び留意点

 (1) 本件の大法院判決は、「進歩性の有無を判断する創作の難易度は、その技術構成の差と作用効果を考慮し判断されるものであり、特許を受けた技術の構成が、先行技術との差があるだけでなく、その作用効果においても先行技術に比べて著しく向上・進歩された場合には、技術の進歩・発展を図る特許制度の目的に照らして特許発明の進歩性を認めるべきであり」という基準に付け加えて、「特許発明の有利な効果が詳細な説明に記載されていない場合にも、その発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者が詳細な説明の記載から有利な効果を推論することができるのであれば、進歩性判断の際にその効果も参酌する必要がある」との基準を提示した点で意義がある。

 

 (2) 本件大法院判決は、具体的な事案において、「引用考案等の場合は、縦横フランジが切断溝と折り曲げ線との間の角のところまで延長されていて、フランジ部とコーナー部を同時に折り曲げさせなければならないため、この事件の特許発明のように完璧にコーナー部で起きるウエーブ現象を吸収消滅させてくれるとは考え難く、金属パネルの折り曲げ作業の容易性においても差が存在する」、「この事件の特許発明の明細書には上記のノッチ部の作用効果が具体的に記載されていないにもかかわらず、このような効果は明細書の全体の記載から容易に分かることができ、この事件の特許発明は、当業者にとって容易に見出し難いノッチ部という新規構成を通じて、より向上された作用効果をもたらしたことが認められ、引用考案1及び2と比較し、その進歩性が認められる」趣旨の判断をした原審の認定及び判断は、正当であるとして、上告を棄却した。

 

 (3) 本件大法院判決の判断は、効果の記載されていない構成以外の残りの構成が引用考案と同一である本件事案において、明細書の全体の記載から通常の技術者が容易に分かる効果を、通常の技術者にとって容易に予測できない「顕著な効果」として認めるというものであり、この判断は、明細書において効果が記載されていなくても、構成が記載されていれば、その構成を備えることにより未記載の効果も当然得られることになる点では妥当であるが、このような基準を一般化してしまうと明細書に効果を記載せずに構成のみを記載しても構わないという結論に至る可能性があり、明確に記載されていない効果を進歩性認定の唯一の効果として認めるのが適切であろうかという点で、過度な拡大解釈にならないよう注意する必要がある。

 本件大法院判決は、構成から導出される効果を無制限的に許容すべきであるとの趣旨で判断されたものではなく、ただ、進歩性の判断において、明細書に記載の「新規」構成から生じる効果があれば、その効果が明細書に記載されていないとの理由だけで排除されてはいけないことについて明らかにしたものとして理解するのが妥当であろう。

 

参考(大法院判決2002年8月23日付宣告2000후3234 【登録無効(特)】より抜粋):

 

1. 특허법 제29조 제1항 제2호、 제2항의 각 규정은 특허출원 전에 국내 또는 국외에서 반포된 간행물에 기재된 발명이나、 선행의 공지기술로부터 용이하게 도출될 수 있는 창작일 때에는 신규성이나 진보성을 결여한 것으로 보고 특허를 받을 수 없도록 하려는 취지인바、 이와 같은 진보성 유무를 가늠하는 창작의 난이도는 그 기술구성의 차이와 작용효과를 고려하여 판단하여야 하는 것이므로、 특허된 기술의 구성이 선행기술과 차이가 있을 뿐 아니라 그 작용효과에 있어서 선행기술에 비하여 현저하게 향상 진보된 것인 때에는、 기술의 진보발전을 도모하는 특허제도의 목적에 비추어 특허발명의 진보성을 인정하여야 하고 (대법원 1997. 12. 9. 선고 97후44 판결、 1999. 4. 9. 선고 97후2033 판결 등 참조)、 특허발명의 유리한 효과가 상세한 설명에 기재되어 있지 아니하더라도 그 발명이 속하는 기술분야에서 통상의 지식을 가진 자가 상세한 설명의 기재로부터 유리한 효과를 추론할 수 있을 때에는 진보성 판단을 함에 있어서 그 효과도 참작하여야 한다.

 

2. 원심판결 이유에 의하면、 원심은 명칭을 “후가공금속판넬의 코너링 절곡방법”으로 하는 이 사건 특허발명(특허번호 제138797호)의 구성요소와 공개실용신안공보 제91-20310호에 나타난 고안(이하 ‘인용고안 1’이라 한다)과 일본국 실용신안공보 평3-24734호에 나타난 고안(이하 ‘인용고안 2’라 한다)의 기술적 구성을 대비하면서、 이 사건 특허발명은 절개부(5)에 있어서 노치부(5a)가 형성된 데 비하여 인용고안 1、 2는 노치부가 형성되지 않고、 그로 인하여 절곡의 방법이 다른 차이만 있고 나머지 구성은 모두 동일하지만、 이 사건 특허발명은 노치부가 있음으로 인하여 코너부(7)는 제외된 채 가로 세로 플랜지(2)(4)만이 절곡선(3a)을 따라 깨끗하게 절곡되어지기 때문에 금속패널을 프레스로 절곡 벤딩시킬 때 플랜지의 가로방향과 세로방향에 있어서 모서리를 향하여 강제로 밀리어 생길 수 있는 주름(웨이브)이 흡수 소멸되는 효과를 가져와 금속패널의 표면에 피복된 피복층의 손상 없이 평탄도가 유지되고、 가로 세로 플랜지와 코너부가 분리되어 절곡되어지기 때문에 코너부만을 따로 용이하게 절곡 벤딩하며、 부드러운 만곡면을 이루게 하는 효과가 있는데 비하여、 인용고안들의 경우는 가로 세로 플랜지가 절단홈과 절곡선 사이의 모서리 부분까지 연장되어 있고、 플랜지 부분과 코너부를 동시에 절곡 벤딩하여야 하므로 이 사건 특허발명만큼 완벽하게 코너부에서 일어나는 웨이브 현상을 흡수 소멸시켜 준다고 보기 어렵고、 금속패널의 절곡작업의 용이성에도 차이가 있으며、 이 사건 특허발명의 명세서에 위와 같은 노치부의 작용효과가 구체적으로 기재되어 있지는 않지만 이와 같은 효과는 명세서의 전체 기재로부터 쉽게 알 수 있다고 한 다음 이 사건 특허발명은 당업자가 용이하게 생각해내기 어려운 노치부라는 신규한 구성을 통하여 보다 향상된 작용효과를 가져온 것이어서 인용고안 1 및 2에 비하여 진보성이 인정된다는 취지로 판단하였다.

 

(日本語訳「1.特許法第29条第1項第2号及び第2項の各規定は、特許出願の前に韓国内又は外国において頒布された刊行物に掲載された発明又は先行の公知技術から容易に導出することのできる創作の場合には、新規性や進歩性に欠けていると認め、特許を受けられないようにする趣旨であり、このような進歩性の有無を判断する創作の難易度は、その技術構成の差と作用効果を考慮し判断されるものであり、特許を受けた技術の構成が、先行技術との差があるだけでなく、その作用効果においても先行技術に比べて著しく向上・進歩された場合には、技術の進歩・発展を図る特許制度の目的に照らして特許発明の進歩性を認めるべきであり(大法院判決 1997年12月9日付宣告97후44、1999年4月9日付宣告 97후2033などを参照)、特許発明の有利な効果が詳細な説明に記載されていない場合にも、その発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者が詳細な説明の記載から有利な効果を推論することができるのであれば、進歩性判断の際にその効果も参酌する必要がある。

 

2.原審判決の理由によると、原審では、名称が「後加工金属パネルのコーナリングの折り曲げ方法」であるこの事件の特許発明(特許番号第138797号)の構成要素と、公開実用新案公報第91-20310号に示された考案(以下、「引用考案1」という)と、日本国実用新案公報平3-24734号に示された考案(以下、「引用考案2」という)の技術的な構成を対比し、この事件の特許発明では切開部(5)にノッチ部(5a)が形成されているのに対し、引用考案の1及び2ではノッチ部が形成されておらず、折り曲げ方法だけが異なり、他の構成は全て同一になるが、この事件の特許発明は、ノッチ部が存在することによってコーナー部(7)が除外され、縦横フランジ(2)(4)のみが折り曲げ線(3a)に沿って綺麗に折り曲げられるので、金属パネルをプレスで折り曲げさせる際に、フランジの縦方向と横方向において、角に向けて強引に押されて生成されるしわ(ウエーブ)が吸収消滅される効果をもたらすため、金属パネルの表面の被覆層を損傷せずに平坦度が維持されるようになり、縦横フランジとコーナー部が分離されて折り曲げられるから、コーナー部のみを別に容易に折り曲げさせ、柔らかい湾曲面にする効果を持つのに対し、引用考案等の場合は、縦横フランジが切断溝と折り曲げ線との間の角のところまで延長されていて、フランジ部とコーナー部を同時に折り曲げさせなければならないため、この事件の特許発明のように完璧にコーナー部で起きるウエーブ現象を吸収消滅させてくれるとは考え難く、金属パネルの折り曲げ作業の容易性においても差が存在するため、この事件の特許発明の明細書には上記のノッチ部の作用効果が具体的に記載されていないにもかかわらず、このような効果は明細書の全体の記載から容易に分かることができ、この事件の特許発明は、当業者にとって容易に見出し難いノッチ部という新規構成を通じて、より向上された作用効果をもたらしたことが認められ、引用考案1及び2と比較し、その進歩性が認められる趣旨の判断をした。」)

 

【留意事項】

 明細書に記載の構成から認められる効果に対しては、特別な事情がなければ明細書に効果に関する具体的な記載が存在しなくてもその効果を認めるのが一般的であるが、進歩性判断の実務において、明細書に記載されていない効果を進歩性が認められる唯一の効果として認めることについては消極的な傾向がある。これは、明細書に顕著な効果を記載しないことは技術の公開が不十分である点、通常の技術者にとって構成だけで容易に予測できる効果であれば顕著な効果とはいえない点が考慮されることに起因すると思われる。例えば、大法院判決2004年11月12日付宣告2003후1512では、本件判決が引用されているが、結論に至って進歩性は否定された。したがって、明細書に記載されていない効果による進歩性を主張するためには、明細書に記載の構成から生じる効果についての主張だけでなく、そのような構成が提示されていない状態では、その構成から生じる効果を容易に認識することができない点についても積極的に主張及び立証が必要とされるであろう。

■ソース
大法院判決 2002年8月23日付宣告2000후3234
http://glaw.scourt.go.kr/jbsonw/jbsonc08r01.do?docID=350F8B32D54E00EAE0438C01398200EA&courtName=대법원&caseNum=2000후3234&pageid=#
■本文書の作成者
正林国際特許商標事務所 弁理士 北村明弘
■協力
特許法人AIP
一般社団法人 日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2013.01.08

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