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(台湾)進歩性を判断する際に出願全体を対象とすべきである旨が判示された事例

2013年04月09日

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■概要
原告は係争実用新案登録第M338634 号「脱水装置」において請求項1の単一の技術的特徴(歯列)が証拠5に開示されていると主張した。判決は、原告は、係争実用新案登録の請求項1における歯列以外の技術的特徴を無視し、一部の要素の特徴機能が同じであるだけで進歩性を有しないと主張しているに過ぎず、進歩性を判断する際には出願全体を対象とすべきであると認定したため、原告の主張は採用されなかった。
■詳細及び留意点

 無効審判請求人は、係争実用新案登録の請求項1に記載の技術的特徴「歯列」は、機能と目的においていずれも証拠5の「ラック」と同じであると認識したため、係争実用新案登録の請求項1は進歩性を有しないと主張した。しかし、智慧財産法院の判決は、専利審査基準第二篇第三章2-3-22を引用し、進歩性を判断する際には、出願全体を対象とすべきであると認定した上で、係争実用新案登録の単一の技術的特徴「歯列」と証拠5の「ラック」は機能において同じであるが、ほかの技術的特徴の差異および構成要素の間の連結関係が異なり、これにより、係争実用新案登録全体の効果が証拠5と異なる可能性があることを考慮し、無効審判請求人の主張を却下した。

 

<本願考案>

<本願考案>


<証拠5>

<証拠5>

 

参考(智慧財産法院行政判決の判決理由より抜粋):

 

原告主張證據5 齒條(42)與系爭專利齒排(31)目的均是帶動齒輪旋轉用,不論主動推齒輪或齒輪主動移位,兩者均提供齒輪旋轉,原處分認定主動與被動有所差異不客觀云云(起訴狀第17頁第4 行至第8 行)。惟按判斷進步性時,應以申請專利之發明之整體為對象(參照專利審查基準第二篇第三章2-3-22)。經查,齒條與齒排功能確實可提供齒輪旋轉,證據5 之齒條帶動齒輪轉動功能,與系爭專利申請專利範圍第1 項之單一技術特徵(齒排)本身功能相同,惟於元件之連結關係不同時,申請專利之發明所產生之整體功效有    可能不同,原告忽略系爭專利申請專利範圍第1 項除齒排外其他技術特徵,僅以部分原件特徵功能相同,即認定系爭專利不具進步性,為屬所屬技術領域中具有通常知識者可輕易完成云云,所述尚非可採。

 

(日本語訳「原告は、証拠5のラック(42)と係争実用新案登録の歯列(31)は、いずれも歯車を回転駆動するためのものであり、歯車を能動的に押すか歯車が能動的に変位するかにかかわらず、両者はいずれも歯車を回転させるものであると主張したが、原処分は能動と受動が異なり客観的でないと認定した(起訴状第17頁第4行ないし第8 行)。しかしながら、進歩性を判断する際には、出願全体を対象とすべきである(専利審査基準第二篇第三章2-3-22参照)。調べにより、ラックと歯列の機能は確かに歯車を回転させることができ、証拠5 のラックの歯車を回転駆動する機能と、係争実用新案登録の請求項1の単一の技術的特徴(歯列)の機能とは同じであるが、構成要素の間の連結関係が異なる場合、出願全体の効果が異なる可能性がある。このため、原告が係争実用新案登録の請求項1における歯列以外の技術的特徴を無視し、一部の構成要素の特徴・機能が同じであるとの理由のみで係争実用新案登録が進歩性を有さず、その考案の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に想到できるとの原告の主張は採用できない。」)

 

【留意事項】

 進歩性の判断は出願全体を対象とするため、出願人は、請求項に係る考案の特徴部分が先行技術と同一であったとしても、請求項に係る考案の他の構成要素が先行技術として開示されているか否かを精査すべきである。考案の特徴部分と他の構成要素の結合等の関係により、先行技術と異なる効果を奏する場合等は、進歩性が認められ得る。

■ソース
智慧財産法院行政判決100年度行専訴字第62号
■本文書の作成者
知崇国際特許事務所 弁理士 松本征二
■協力
萬國法律事務所 鍾文岳
一般社団法人 日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2013.01.07

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