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(中国)特別な技術的特徴等に基づき単一性の判断をおこなった事例
2013年02月26日
■概要
本件では、特許出願の請求項1に進歩性がないためこれに従属する請求項2等について単一性の要件を満たさないと判断されたが、最終的に請求項2の構成を請求項1に追加する補正を加えたことにより、特許庁審判部において特許性の要件が満たされると判断された。■詳細及び留意点
本件特許出願は、連続読取制御スイッチをONにすることで従来のように本のページなどを続けて読み取る際に毎回スタートスイッチを押さなくて済むことに特徴を有するイメージ読取装置に関するものである。
本件特許出願の当初クレームの請求項1及び2は以下のようなものであった。
「1.待ち処理文書を連続的に読み取り、かつ複数イメージ信号を出力するイメージ連続読取可能なイメージ読取装置であって、連続読取命令を受信し、制御信号を出力することにより、当該イメージ読取装置の連続読取と出力動作を制御する連続読取制御スイッチと当該イメージ読取装置を制御し、かつ当該制御信号を受信することにより、当該イメージ読取装置の連続読取と出力動作を処理する制御ユニットとを含むことを特徴とするイメージ読取装置。
2.2回連続イメージ読取の間隔時間を設定する時間調整器を含むことを特徴とする請求項1記載のイメージ読取装置。」
中国特許庁審査部は、請求項1、7、8、11、18は光センサーにより読取制御を行うことが開示されている引用文献1(中国特許出願第99104844.X号(公開番号CN1269563A))等により進歩性(中国語「创造性」)を有さないことから、これに従属する請求項2等は単一の総体的な発明思想に属さず、技術的に相互の連関がなく、同一の又は対応する特別な技術的特徴がないため単一性を有しない旨の拒絶理由通知書(中国語「审查意见通知书」)を出した。出願人はこれに承伏できない旨の意見書を提出したが、審査部は出願人の意見を採用せず、本件特許出願は進歩性及び単一性の要件を満たしていないとして拒絶査定を出した。
出願人は、拒絶査定不服審判請求(中国語「专利复审请求」)をおこなうとともに、「複数の待ち処理文書を連続読取する場合、当該連続読取制御スイッチを起動させるだけで、イメージ読取装置を連続読取状態にさせることができる」という内容を追加して、かつ明細書に対しても同様の補正を行った。
このような審判請求に対し、前置審査では、審査部は拒絶査定を維持するべきとの意見書を出し、特許庁審判部(中国語「专利复审委员会」)も、引用文献1ではセンサー孔を制御信号入力スイッチとして、スキャナーのスキャン、FAX又はコピー等の機能を制御することが開示されており、また連続読取命令と連続読取信号はよくある制御命令と制御信号であるので、請求項1は創造性を有しないと判断し、請求項2等は単一性の要件を満たさない旨の審判通知書を出した。
これに対し、出願人は請求項1に「連続2回のイメージ読取の時間間隔を設定する時間調整器」という元の請求項2に記載されていた構成を加える補正を行い、このような補正後のクレームについて、特許庁審判部は拒絶を維持できないと判断し、本件を審査部に差し戻す審決を出した。
本件特許出願は上記のような補正を受けた形で2007年4月25日に特許公告された。
なお、本文書の作成に当たっては、特許庁平成23年度産業財産権制度問題調査研究「発明の特別な技術的特徴を変更する補正及び発明の単一性の要件に関する調査研究」の報告書の翻訳を用いた。
【留意事項】
単一性の要件は審査の公平性等を考慮した手続的な要件であるが、事後的に発見される単一性の要件違反に関して公知文献の内容により審査範囲が変わってくることがあり得ることに注意する必要がある。公知文献において何が開示されているのかを良く検討し、技術水準等も踏まえ、単一性の要件を満たすために必要以上にクレームを狭くしないよう補正の内容を十分に検討するべきである。
■ソース
・特許庁平成23年度産業財産権制度問題調査研究「発明の特別な技術的特徴を変更する補正及び発明の単一性の要件に関する調査研究」報告書
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/zaisanken.htm#5003 http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/pdf/zaisanken/2011_03.pdf ・中国特許庁審判部拒絶査定不服審決2009年5月26日付第17351号
・中国特許出願第01103098.4号(公開番号CN1368704A、公告番号CN1312622C)
・中国特許出願第99104844.X号(公開番号CN1269563A)
・中国専利法
■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 古田敦浩■協力
北京林達劉知識産権代理事務所■本文書の作成時期
2012.12.12