国別・地域別情報

ホーム 国別・地域別情報 アジア 審決例・判例 特許・実用新案 (中国)審判請求時の補正により単一性の拒絶理由が解消するとされ、審査部に差し戻された事例

アジア / 審決例・判例


(中国)審判請求時の補正により単一性の拒絶理由が解消するとされ、審査部に差し戻された事例

2013年02月19日

  • アジア
  • 審決例・判例
  • 特許・実用新案

このコンテンツを印刷する

■概要
本件特許出願は、補正により物を特定する請求項と方法を特定する請求項の間で記載が対応しないこととなったため拒絶査定を受けたが、最終的に審判請求時の補正により単一性の拒絶理由が解消するとされた。
■詳細及び留意点

 本件特許出願は、コンデンサの電極として使われるバルブ金属組成物に関するものであり、主たるバルブ金属に加え、第2の金属を用いることで、電極などに用いる際により高いボンディング強度を得られる材料を得ることに特徴を有するものである。

 拒絶査定時の請求項1及び5は以下のようなものであった。

「【請求項1】ニッケルを有するタンタル線材であって、前記タンタル材料におけるニッケルの濃度が前記タンタル線材の表面又はその近傍で比較的高いタンタル線材。

【請求項5】バルブ金属に第2の金属を加える方法であって、(a)前記第2の金属の塩溶液でバルブ金属表面をコーティングし、(b)酸素ゲッターの存在下で前記バルブ金属とコーティングを加熱して、前記バルブ金属から酸素を除去し且つ周縁部に前記第2の金属を有する前記バルブ金属を提供するのに十分な温度にする、ことを含む方法。」

 

 出願時の請求項1は「第2金属を含むバルブ金属であって、第2金蔵の濃度がバルブ金属の表面又はその近傍で比較的高いバルブ金属。」とされていた。出願人は、補正により請求項1にはニッケルやタンタルといった材料の限定が加えたが、対応する方法の発明である請求項には材料の限定を加えていない。そのため、中国特許庁審査部は、請求項1は発明の目的に必要な技術的特徴が欠けており、請求項1及び5の間で単一性の要件を満たしていないと判断し、本件特許出願を拒絶した。

 これに対し、出願人は、不服審判を請求する際に請求項1を補正し、「ニッケルの含有量が2~2000ppmである」ということを請求項1に盛り込むとともに、対応する方法において金属の材料を限定することのみで拒絶査定は解消する旨主張したが、不服審判請求を受けた審査部における前置審査では、請求項5の方法において金属の限定はなく、単一の総体的な発明思想に属さずやはり拒絶査定を維持すべきである旨の意見書が出された。

 前置審査の後、特許庁審判部(中国語「专利复审委员会」)は、単一性が満たされておらず拒絶査定を維持すべきと考える旨の審判通知書(中国語「復審通知書」)を発出した。この審判通知書を受け、出願人はさらに、請求項5においてさらに金属材料を限定する等の補正を行った。

 

 本件特許出願の請求項1及び5は最終的に以下の様な形で単一性を満たすと特許庁審判部に判断され、審査部に差し戻され、特許(公告)査定された。

「【請求項1】ニッケルを有するタンタル線材であって、前記タンタル材料におけるニッケルの濃度が前記タンタル線材の表面又はその近傍で比較的高く、前記ニッケルの含有量が2~2000ppmであるタンタル線材。

【請求項5】バルブ金属に第2の金属を加える方法であって、(a)前記第2の金属の塩溶液でバルブ金属表面をコーティングし、(b)酸素ゲッターの存在下で前記バルブ金属とコーティングを加熱して、前記バルブ金属から酸素を除去し且つ周縁部に前記第2の金属を有する前記バルブ金属を提供するのに十分な温度にし、前記第2の金属がニッケルであり、前記バルブ金属がタンタルの線材である、ことを含む方法。」

 

参考(中国特許庁審判部拒絶査定不服審決2003年8月29日付第3749号の決定理由より):

请求人于2003年8月12日提交的权利要求书中将权利要求5的第二金属具体限定为镍,阀金属具体限定为钽的线材,从而使权利要求1与权利要求5具有了相同的特定技术特征,克服了原驳回决定所指出的缺陷,符合专利法第31条第1款的规定。

(日本語訳:「請求人が2003年8月12日に提出した請求の範囲には、請求項5の第2の金属をニッケルと具体的に規定し、バルブ金属をタンタルの線材と具体的に規定し、このように、請求項1と請求項5は同一の特別な技術的特徴を有し、拒絶査定に指摘した不備を解消し、専利法第31条第1項に規定する要件を満たすようになった。」)

 

 なお、本文書の作成に当たっては、特許庁平成23年度産業財産権制度問題調査研究「発明の特別な技術的特徴を変更する補正及び発明の単一性の要件に関する調査研究」の報告書の翻訳を用いた。

 

【留意事項】

 本件では最終的に審判時の補正により拒絶理由は解消すると判断されたが、その前の段階においても、単一性の要件を考慮し、請求項の間でどの程度の対応が必要となるかを考慮しつつ補正を検討することが望ましい。

■ソース
・特許庁平成23年度産業財産権制度問題調査研究
「発明の特別な技術的特徴を変更する補正及び発明の単一性の要件に関する調査研究」報告書
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/zaisanken.htm#5003 http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/pdf/zaisanken/2011_03.pdf ・中国特許庁審判部拒絶査定不服審決2003年8月29日付第3749号
・中国特許出願第98805463.9号(公開番号CN1257552A、公告番号CN1149296C、対応PCT出願番号PCT/US98/08170号)
・中国専利法
■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 古田敦浩
■協力
北京林達劉知識産権代理事務所
■本文書の作成時期

2012.12.10

■関連キーワード