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(中国)証拠の提出期限超過/証拠の翻訳/組物の意匠について

2012年12月18日

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■概要
証拠は定められた期間内に提出しなければならない。本件では、証拠として提出したコピーの内容の信憑性を立証するために法定期限超過後に提出された当該コピーの原本の内容に、コピーと相違する部分があることが問題となったが、既に提出済みの資料の原本であるとして、新たな証拠の提出には該当しないとされた。
また、本件意匠は7つの部品を組み合わせて構成される意匠であり、出願時には、各部品単位の図面が提出されているが、組み合わせて一つの物品として機能するものである場合は、組み合わせた状態の全体形状のみが審査対象となると判断された。
■詳細及び留意点

 本件は、特許庁審判部(中国語「专利复审委员会」)によって、本件登録意匠(中国語「外观设计专利」)は新規性(中国語「新颖性」)がないため無効とすべきとの決定がなされたことを不服として、中級人民法院に提訴した事案である。無効審判(中国語「专利无效宣告」)の請求人は請求時に、本件意匠を無効とするための証拠(コピー)を提出していたが、その信憑性を立証するために、無効審判の口頭審理において原本を追加提出した。この原本が証拠の提出期限を超過した後の提出であったことと、その原本の内容にコピーと相違する部分が存在していたため、争いになった。

 北京中級人民法院は、コピーと原本の相違点について、公証人の署名と「Certified a true copy」という公証人の公証見解の有無の違いに過ぎず、証拠の形式を変更するために提出したものであるから、新たな証拠には該当しないと認定した。

 また、無効審判の請求人と被請求人の間で証拠の翻訳に争いがある場合は、「双方当事者は異議部分について見解を一致させ、双方の最終的な中国語翻訳文が基準」となり、「双方当事者が異議部分について合意できない場合は、特許庁審判部は翻訳を委託することができる」とした。

 一方、本件意匠は、以下の図が示すように、7つの部品を組み合わせて、一つの物品を構成する組物製品(中国語「组件产品」)であり、出願の際に7つの各部品の図面と組み立てた状態の図面を提出している。

出願意匠の図面(一部)

出願意匠の図面(一部)

 

 この点に関しては、「購入時又は使用時に、一般消費者は各部材を組み合わせた後の全体の形態について印象を受けるから、各部材の結合状態の全体形態を比較対象とすべき」であるとし、全体形態の基本的な外形が極めて類似している場合、スナップ継ぎ手の数の違い等は何れも微差に過ぎず、本件意匠は専利法第23条の規定を満たさないとして、特許庁審判部の無効決定を支持した。

 

参考(北京市第一級中級人民法院民事判決2008年10月22日付(2007)中行初字第1181号より抜粋):

一、关于证据问题

 《审查指南》第四部分第八章“外文证据的提交”一节规定,对中文译文出现异议时,双方当事人就异议部分达成一致意见的,以双方最终认可的中文译文为准。双方当事人未能就异议部分达成一致意见的,必要时,专利复审委员会可以委托翻译。完整理解《审查指南》的上述规定可知,即使双方当事人就中文译文的异议部分未达成一致意见,专利复审委员会也仅在认为必要的时候才委托翻译,即是否委托翻译由专利复审委员会自行决定。本案中,被告根据其对双方当事人中文译文的字面理解认为两者并无实质性区别,故未委托翻译机构对“Certified a true copy”进行翻译并无不妥,未违反《审查指南》的有关规定。“Certified a true copy”为公证员签署的公证意见,第三人在口头审理当庭提交载有该公证意见的证据B原件属于《审查指南》第四部分第三章第4.3节规定的用于完善证据法定形式的情形,其目的是为了完善证据B的法定形式,故证据B原件并不属于新证据,无须转送原告。在证据B原件与复印件实质内容一致的前提下,仅凭证据B-2至证据B-24原件的首页上有该公证意见而证据B-2至证据B-24复印件的首页上无此内容,并不能证明证据B的公证程序不合法。

二、本专利是否符合专利法第二十三条的规定

 根据《审查指南》的相关规定,对于组装关系唯一的组件产品,在购买和使用时,一般消费者会对各构件组合后的产品的整体外观设计留下印象,因此,应当以各构件组合状态下的整体外观设计作为比较对象。在两者的整体设计、基本外形极为相近的情况下,扣接件的数量、板材上扣接部位的形状、主箱体下部垫块的数目及形状的差别均属于细微差别,这些差异对于一般消费者的视觉来说不够显著,一般消费者极易将二者误认、混同。因此,本专利与证据B-12所示的外观设计属于相近似的外观设计,本专利不符合专利法第二十三条的规定。

(参考訳)

一、証拠問題について

 《審査指南》第4部第8章「外国語文献の提出」第1節では、中国語翻訳文に対して異議が出された場合、双方当事者は異議部分について見解を一致させ、双方の最終的な中国語翻訳文が基準となる。双方当事者が異議部分について合意できない場合は、必要であれば、特許庁審判部は翻訳を委託することができる。《審査指南》の条規の規定から、双方当事者が中国語の翻訳文の異議部分について見解を統一できなくても、特許庁審判部が必要と認めれば翻訳を委託することが可能で、翻訳を委託するか否かは特許庁審判部の自己決定による。本案において、被告は双方当事者の中国語翻訳文を文面通りに理解し、両者に実質的な違いはないと考えたことから、翻訳会社にCertified a true copyの翻訳の委託をしないことについて何ら問題はなく、《審査指南》の関連規定にも違反しない。Certified a true copyは公証人の公証見解であり、第三者が口頭審理の現場で同公証見解が記載された証拠Bの原本を提出することは、《審査指南》第4部第3章第4.3節に規定する「証拠の法定形式を完備させる場合」に該当し、その目的は証拠Bの法定形式を完備させることであるから、証拠Bは新たな証拠には該当しないため、原告に転送する必要がない。証拠Bの原文とコピーが実質的に一致する場合、証拠B-2から証拠B-24の原本の表紙上方に公証見解があるのに対して、証拠B-2から証拠B-24までのコピーの表紙にこのような内容の表示がないことのみを理由に、証拠Bの公証手順に違法性があると証明することは不可能である。

二、本意匠権が専利法第23条に規定する要件を満たすか否かについて

 審査指南の関連規定によれば、組立関係が唯一であるものは購入時又は使用時に、一般消費者は各部材を組み合わせた後の全体の形態について印象を受けるから、各部材の結合状態の全体形態を比較対象とすべきである。両者の全体形態において、基本的な外形が極めて類似している場合、スナップ継ぎ手の数、プレート上のスナップ継ぎ手の形状、主な箱本体下部のパッドの数や形状の相違は何れも微差に過ぎず、これらの違いは一般消費者の視覚にとって目立つ存在にならないから、一般消費者が両者を誤認混同する可能性は極めて高い。よって、本意匠と証拠B-12が示す意匠は類似する意匠に該当し、本意匠は専利法第23条に規定する要件を満たしていない。

 

【留意事項】

 証拠の提出は法定期限までに必ず提出しなければならない。本件では、法定期限超過後に証拠が追加的に提出されたが、提出済の資料の原本を提出したため、新たな証拠と認定されなかったが、このような期限超過後の証拠の提出は避けるのが望ましい。

 本件の前審である特許庁審判部の無効決定においては、頁の欠如やページ数が一致しないことは起こり得るとし、このような事実があるからといって証拠の信憑性が必然的に否定されるわけではなく、一致しない頁や内容については考慮しないで対応する趣旨の記載がある(原文:证据B-6、B-7的复印件与原件相比有缺页,页数不相对应,此种情形的出现存在一定的可能性和合理性,该情形的存在不能必然否认证据B原件的真实性,但证据B的复印件中没有、而在原件中具有的这些页以及其内容均不予考虑。)。

 しかし、これらは一般論であり、個別の事案でどこまで証拠として受け入れてもらえるのかは不明確である。このような特許審判部や裁判所の対応に頼ることなく立証責任を果たせるよう、心がけるべきである。

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