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韓国における競合事業者の取引先への警告状発送による損害賠償責任

2016年05月31日

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■概要
ソウル中央地方法院は、特許権侵害を断定することができないにもかかわらず、特許権の侵害を理由に製品の販売中止を要求する警告状を競合事業者の取引先に発送した行為に対して、過失による営業活動妨害を認め損害賠償を命じる判決を言い渡した。警告状の発送に際しては、競合事業者の取引先に直ちに警告状を発送するのではなく、まずは競合事業者に警告状を発送し、状況に応じて、その後の法的救済手段を適切に講じていくことが望ましい。
■詳細及び留意点

【詳細】

 ソウル中央地方法院は、特許権侵害を断定することができないにもかかわらず、特許権の侵害を理由に製品の販売中止を要求する警告状を競合事業者の取引先に発送した行為に対して、過失による営業活動妨害を認め損害賠償を命じる判決を言い渡した(ソウル中央地方法院2015年5月1日付第2014ガ合551954号判決)。

 

1.事実関係

 原告Aは「Quick Milk Magic Sipper」という商品名のストロー(以下「本件製品」)を外国のP社から輸入して流通する会社であり、原告BおよびCは、原告Aから本件製品の供給を受け国内大型マートであるホームプラス、ハナロマート、イーマート(以下「取引先」)に納品していた。

 国内で「飲み物の味を出すストロー」に対する特許(以下「本件特許」)を保有する外国法人Q社は国内の弁護士を通して、原告BおよびCの取引先に本件製品がQ社の本件特許権を侵害しているため原告らとの取引を中止し、直ちに販売を中止せよとの趣旨の警告状を発送した。警告状を受け取ったホームプラスとハナロマートは本件製品の買い入れを中止し、または買い入れ量を大幅に減らした。

 この事実を知った原告Aは外国でP社の本件製品がQ社の特許権を侵害しないとする判決が下された事実を挙げ、警告状の発送行為に対する謝罪文をホームプラス、ハナロマート、Eマートなどの取引先に発信することを要請したものの、Q社がこれに応じなかったため、本件製品が本件特許の権利範囲に属さないという趣旨の権利範囲確認審判を提起し、特許庁から権利範囲に属さないとする審決を受けた。その後、原告は被告(特許権者のQ社を代理して警告状を送付した弁護士)を相手取り、警告状発送行為の違法性を主張し、損害賠償請求訴訟を提起した。

 

2.法院の判断

2-1.警告状発送行為の違法性

 競合事業者の警告状を発送する行為が、違法かどうか問題になったが、法院は(1)本件の警告状は単純に特許権侵害の可能性に言及したのではなく、本件製品が本件特許を侵害していると断定している点、(2)取引先は本件製品が本件特許を侵害しているか否かを判断する客観的な能力があると見難い点、(3)警告状を受け取った取引先は法的紛争に巻き込まれるリスクを負ってまで本件製品の販売を強行することは難しい点、(4)競合事業者の取引先に対する警告状発送によって競合事業者と取引先間の取引関係が中断される場合、その取引関係を再び原状回復させるのは難しく、競合事業者が回復し難い打撃を受ける可能性がある点などを総合的に考慮し、警告状発送行為の違法性を認めた。

 

2-2.故意、過失の有無

 競合事業者の警告状を発送した行為について、過失を認めることができるかどうかが問題になったが、法院は(1)一部の国の裁判所で本件製品が本件特許を侵害しないという趣旨の判決が下され、特許権侵害の有無を簡単に判断することができなかった点、(2)それにもかかわらず、被告は法院に特許権侵害を原因とした仮処分申請をしないまま侵害すると断定して警告状を発送した点、(3)被告は警告状発送後、原告Aから海外での本件特許を非侵害とする判決文などの具体的な判断根拠資料まで受領したのにもかかわらず、特に措置を取らなかった点、(4)警告状を原告に先に送らず、原告の取引先に先に警告状を発送する行為は競合事業者から取引先を奪う手段として悪用される可能性があるという点などを認め、少なくとも被告が過失によって原告の営業活動を妨害したと見られると判示した。

 最終的に、法院は特許権侵害を断定することができないにもかかわらず、特許権者を代理して競合事業者の取引先に警告状を発送する行為は違法であり過失も認められ、原告の取引先に対する納品中断や減少にともなう財産上の損害賠償の支払いを命じる判決を下した。

 

【留意事項】

 本判決により、特許権者が訴訟前に侵害問題の円満な解決のために警告状を発送する行為自体が違法であるとはされていない。

 しかし、競合事業者の取引先に直ちに警告状を発送するのではなく、まずは競合事業者に警告状を発送した方が望ましく、それでも侵害品の輸入、販売中止などの是正がなされない場合には、競合事業者に対して訴訟などの法的救済手段を取り、その上で必要であれば取引先に対して訴訟提起の有無などの客観的な「事実」のみを知らせた方が安全であると思われる。また、事前侵害分析を通して、侵害に確信を持てる場合以外には警告状に「侵害している」などの断定的な表現は使わないようにすべきである。

■ソース
・ソウル中央地方法院2015年5月1日付第2014ガ合551954号判決
■本文書の作成者
金・張法律事務所
■協力
日本技術貿易株式会社
■本文書の作成時期
2015.08.31
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