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マレーシアにおける知的財産関連機関・サイト
2022年01月20日
■概要
マレーシアには、知的財産とその権利の保護に関連するさまざまな公的機関や組織がある。各機関・組織の詳細は、以下に示すとおりである。■詳細及び留意点
1.立法機関
(a) マレーシア議会(Parliament)
https://www.parlimen.gov.my/
マレーシアにおける最高位の立法機関は、国家元首としての国王、上院および下院から構成される議会である。
議会は複数政党制に従い、政府組織は単純小選挙区制(first-past-the-post system)によって選出された議員が最も多く所属する政党がつかさどる。下院議員は法律により最大5年の任期である。国王はいつでも下院議会を解散することができ、通常は首相の助言に基づいて解散する。
上院議員は、州議会によって選出された議員と首相の助言に基づき国王が任命した議員がおり、1期3年、最大2期6年の任期であり、解散はない。
議会によって制定された法律(law)は、「成文法(Statutes)」または「法律(Acts)」と呼ばれる。法律は、法案(Bill;提案された法律案)から始まり、法案は、省、国会議員(MP:member of Parliament)、または上院議員により作成される。その後、法案は議会に提出される。
法案は、下院または上院のいずれかに最初に提出することができる。法案が成立するためには、最初に法案が提出された院を可決通過した後、もう一方の院に送付され可決通過しなければならない。
法案は、各院で3度の読み上げが行われる。1度目の読み上げで法案が紹介され、2度目の読み上げで法案が議論され、3度目の読み上げで法案が投票にかけられる。単純過半数または特別過半数(特定の法案の場合)を得られれば法案は可決される。この過程は上下両院ともに同じである。
法案が可決されると国王の裁可(the Royal Assent)のために、可決から30日以内に、国王に提示される。国王が30日以内に裁可しない場合でも、法案は自動的に法律となる。
下院で提案・可決された法案は、上院で可決されない場合でも法律となるが、その逆は当てはまらず、上院に提案された法律の制定には下院での可決が必須である。
マレーシアでは、知的財産に関する法律は成文法や慣習法(common law)であり、慣習法としては詐称通用、機密情報または企業秘密の保護などがある。
マレーシアの知的財産に関する法律は以下のとおりである。
i. 商標法2019年および商標規則2019年
ii. 著作権法1987年
iii. 意匠法1996年および意匠規則1999年
iv. 特許法1983年および特許規則1986年
v. 地理的表示法2000年および地理的表示規則2001年
vi. 新植物品種保護法2004年、集積回路配置設計法2000年
vii. 光ディスク法2000年および光ディスク規則2000年
viii.貿易記述法2011年
2.行政機関
(a) 国内取引・消費者省(Ministry of Domestic Trade and Consumer Affairs)
https://www.kpdnhep.gov.my/en/
国内取引・消費者省は1990年10月27日に設立されたマレーシア政府の省であり、国内取引、協同組合、消費者保護、フランチャイズ、企業、知的財産、競争、統制商品、価格統制、直接販売、消費者権利などを取り扱う。省の下には23の部門と7つの連邦機関がある。
商標および著作権の侵害について、権利者は民事訴訟(civil action)および強制執行(enforcement action)に頼ることができるが、特許および意匠の侵害については民事訴訟のみが利用可能であり、高等裁判所レベルの専門裁判所である知的財産裁判所(以下に詳細を説明する)で裁定される。
強制執行措置が取られた場合、関連する政府機関は国内取引・消費者省の執行局(Enforcement Unit)である。執行局は、強制捜査を行い、問題のある物品を押収する権限を持っており、刑事裁判所で侵害者を告発するかどうかを決定する。
(b) マレーシア知的財産公社(MyIPO: Intellectual Property Corporation of Malaysia)
https://www.myipo.gov.my/en/home/
マレーシア知的財産公社は、国内取引・消費者省傘下の連邦機関である。当初は同省傘下の事務所でとして開設され、その後部門となり、2002年マレーシア知的財産公社法に基づいて正式に法人化されたが、現在も国内取引・消費者省傘下の政府機関である。
特許法、商標法、著作権法、意匠法、集積回路配置設計法、地理的表示法、およびマレーシアでのさまざまな知的財産権の登録を担当する機関を管理する任務がある。
MyIPOはクアラルンプールに本社を置き、ペナン、マラッカ、ジョホール、パハン、サバ、サラワクに6つの支社がある。
MyIPOには19の部門があり、その主なものを以下に示す。
i. 商標様式および国際登録部
ii. 商標および地理的表示部
iii. 著作権部
iv. 特許工学部
v. 特許科学および伝統的知識部
vi. 特許様式および国際登録部
vii. 意匠および集積回路配置部
MyIPOの主な機能は次のとおりである(マレーシア知的財産公社法2002年、第17条参照)。
・知的財産法に関連する知的財産に関する問題、事項の規制および監督
・知的財産法の見直しと更新についての助言
・知的財産権登録サービスの提供および登録・事務所(商標登録事務所、特許登録事
務所、意匠登録事務所、中央地理的表示登録事務所)の管理
(c) 農業食品産業省(MAFI: Ministry of Agriculture and Food Industries)
https://www.mafi.gov.my/
農業食品産業省は、マレーシア政府の省であり、農業に関連する問題、農業関連産業、農業観光、家畜、獣医サービス、漁業、検疫、検査、農業研究、農業開発、マーケティング、農業事業、植物園、食料安全保障、食糧主権などの処理を担当している。
同省には15の部門、3つのユニット、4つの連邦部門、9つの連邦機関がある。農務省を通じて植物品種保護法を管理することが任務である。
(d) マレーシア王立税関局(Royal Malaysian Customs Department)http://www.customs.gov.my/en/pages/main.aspx
マレーシア王立税関局は、財務省傘下の部門であり、マレーシアの間接税政策、国境の管理、麻薬犯罪の管理を担当し、9つの部門がある。
商標法2019年の下で、同局の担当範囲である国境措置が実施されているが、これを実施するには負担が掛かる。登録官は、登録された所有者から実際の侵害の証拠、情報および申請を受け取った場合にのみ、税関に通知するための措置を講ずる。換言すれば、税関が独自に監視業務を行うことはない。登録商標の所有者は、宣誓供述書とともに、登録商標商品の偽造品が輸入される予定の日時、場所を記載した申請書を提出する必要がある。
国境措置の申請者は、さらに、乱用を防ぎ、輸入者を保護するため、物品の差押えの結果としての責任または費用を政府に払い戻すのに充分な保証を登録官に預託し、または補償を支払うよう裁判所から命令される場合がある。さらに、申請者は、実際の差押えおよび差押え通知が発行された後、規定の期間内に知的財産裁判所で訴訟を起こす必要があり、そうしなければ、商品は輸入業者に解放され、被害者(輸入業者)は裁判所に補償命令を申請することができる。
(e) 国際貿易産業省(MITI: Ministry of International Trade and Industry)
https://www.miti.gov.my/
国際貿易産業省は、1990年10月27日に設立されたマレーシア政府の省であり、国際貿易、産業、投資、生産性、中小企業、金融機関の開発、戦略的貿易などに関連する問題の処理を担当している。省の下には17の部門、3つのユニット、15の連邦機関がある。
(f) マレーシア投資開発庁(MIDA: Malaysian Investment Development Authority)
http://www.mida.gov.my/home/
マレーシア投資開発庁は、通商産業省傘下の政府機関であり、マレーシアの製造業およびサービス業への投資を監督および推進している。マレーシア投資開発庁は、投資の促進、投資プロジェクトの実施の促進、および政策の策定を含む業界の問題について通商産業省に助言する責任がある。
(g) マレーシア対外貿易開発公社(MATRADE: Malaysian External Trade Development Corporation)https://www.matrade.gov.my/en/
マレーシア貿易開発公社は、1993年3月に設立された通商産業省傘下の政府機関であり、主にマレーシアの輸出業者が輸出市場を開拓し拡大するのを支援しており、マレーシアの貿易の取り組みを促進し、実行する責任がある。マレーシア貿易開発公社は、外国企業がマレーシアにおける製品やサービスの調達する際の支援にも関わっている。
(h) マレーシア中小企業局(SME Corp)
https://www.smecorp.gov.my/index.php/en/
マレーシア中小企業局は、起業家開発協力省(MEDAC)の下にある中央調整機関であり、関連するすべての省庁にわたる中小企業(SME)の開発プログラムの実施を調整する。中小企業や起業家に関する調査やデータ普及の中心的な拠点として機能するとともに、全国の中小企業や起業家にビジネスアドバイザリーサービスを提供している。マレーシア中小企業局は、マレーシアの中小企業向けの情報およびアドバイザリーサービスの提供において中心的な役割を有している。
3.司法機関
・マレーシア連邦裁判所登録局
https://www.kehakiman.gov.my/ms
マレーシアの司法制度は、全国で一律に運営されている連邦裁判所制度があり、すべての裁判所が連邦法と州法の両方を管轄している。
英国のコモンローがマレーシアの司法制度に大きな影響を及ぼしており、これは民事裁判所内のコモンロー事件への依存に反映されている。裁判所は、民事裁判所と刑事裁判所に分かれており、民事または刑事事件に関する裁判所の管轄は、従属裁判所法1948年(the Subordinate Courts Act 1948)および司法裁判所法1964年(Courts of Judicature Act 1964)において規定されている。
憲法第121条は、同等の管轄権を有する2つの高等裁判所、マレーシア高等裁判所とサラワク州及びサバ州の高等裁判所を規定している。これは、マレーシア半島と東マレーシアの2つの異なる地方裁判所をそれぞれの高等裁判所が管轄することを意味している。
マレーシアの司法システムの階層を以下に示す。
(a) 上級裁判所(The Superior Courts)
マレーシアの司法制度における上級裁判所は、マレーシア高等裁判所、控訴裁判所、連邦裁判所、サラワク州およびサバ州の裁判所で構成されている。
・高等裁判所(High Court)
高等裁判所は、すべての下位裁判所に対して一般的な修正および監督管轄権を有し、下位裁判所から刑事および民事訴訟に関連する上訴を審理する。高等裁判所は、すべての刑事事件に関する事件を審理する権利を有している。
・控訴裁判所(Court of Appeal)
控訴裁判所は、高等裁判所のすべての民事および刑事訴訟の判決に対する控訴について審理する。
・連邦裁判所(Federal Court)
控訴裁判所におけるすべての民事訴訟の判決に対する上訴は、連邦裁判所が許可を与えた場合にのみ連邦裁判所に行うことができる。控訴裁判所における刑事訴訟の判決、または当該管轄内の高等裁判所レベルで審理された問題に関する上訴については、連邦裁判所によって審理される。
・サバ州およびサラワク州の裁判所(Court of Sabah and Sarawak)
サバ州およびサラワク州の裁判所は、先住民の慣習および法律の問題に関するサバ州およびサラワク州の地方裁判所の判決に関する上訴のみを審理する。
(b) 下位裁判所(The Subordinate Courts)
マレーシアの法制度における下位裁判所は、セッションズ裁判所、マレーシア西部のペングル裁判所、および治安判事裁判所で構成されている。
・ペングルの裁判所(Penghulu’s Court)
ペングルの裁判所は、請求がRM50-00未満であり、アジア人種であり、マレー語を話し、理解している被告に関する民事問題、および、罰金がRM25-00以下の刑事事件が審理されている。
・治安判事裁判所(Magistrates’ Court)
治安判事裁判所は、請求がRM25、000-00以下であるすべての民事訴訟、および、懲役期間が10年以下のすべての犯罪に関する刑事訴訟を審理する。
・セッションズ裁判所(Session’s Court)
セッションズ裁判所は、請求がRM25、000-00を超え、RM250、000-00を超えないすべての訴訟、および、死刑以外のすべての刑事訴訟を審理する。
・少年裁判所(Juvenile Court )
この裁判所は、18歳未満の未成年者に関連する訴訟を対象としている。
(c) Syariah裁判所(Syariah Courts)
Syariah裁判所は、イスラム教徒に関する訴訟を管轄し、3年以下の懲役がある。
マレーシアには陪審制度はなく、高等裁判所では1人の裁判官、控訴裁判所では3人の裁判官、連邦裁判所では通常5人(最大9人)の裁判官によって審理および決定される。
すべての知的財産訴訟は、被告が居住する高等裁判所の地理的位置または訴訟原因が発生する場所で開始する必要があるが、現在、知的財産訴訟の多くは、知的財産訴訟に関するすべての審理を担当している専門の知的財産裁判所を有するクアラルンプール高等裁判所に提起されている。
上記の知的財産裁判所は2007年7月17日に設立され、刑事管轄権を有する15のセッションズ裁判所と、民事および上訴管轄権の両方を持つ6つの高等裁判所で構成されている。知的財産訴訟の件数が最も多いマレーシアの6つの州には、それぞれに1つの高等裁判所が割り当てられており、貿易記述法(the Trade Descriptions Act)、著作権法、光学ディスク法、および特許法に基づく刑事犯罪の訴追からなる知的財産訴訟を独占的に審理している。
4.その他の知的財産関連組織
・マレーシア知的財産協会(MIPA: Malaysian Intellectual Property Association)
https://www.mipa.org.my/
マレーシア知的財産協会は、マレーシアの知的財産実務家間の相互友好関係を育み、地域の知的財産法の適切な保護と発展を促進し、会員の職業上の行動を規制し、関連するあらゆる種類の質問を検討することを目的とした登録協会である。知的財産法に準拠し、そのメンバーに代わって他の団体や組織と関わりを持つ。
■ソース
・マレーシア議会(Parliament)https://www.parlimen.gov.my/
・国内取引・消費者省(Ministry of Domestic Trade and Consumer Affairs)
https://www.kpdnhep.gov.my/en/
・マレーシア知的財産公社(MyIPO: Intellectual Property Corporation of Malaysia)
https://www.myipo.gov.my/en/home/
・農業食品産業省(MAFI: Ministry of Agriculture and Food Industries)
https://www.mafi.gov.my/
・マレーシア王立税関局(Royal Malaysian Customs Department)
http://www.customs.gov.my/en/pages/main.aspx
・国際貿易産業省(MITI: Ministry of International Trade and Industry)
https://www.miti.gov.my/
・マレーシア投資開発庁(MIDA: Malaysian Investment Development Authority)
http://www.mida.gov.my/home/
・マレーシア対外貿易開発公社(MATRADE: Malaysian External Trade Development Corporation)
https://www.matrade.gov.my/en/
・マレーシア中小企業局(SME Corp)
https://www.smecorp.gov.my/index.php/en/
・マレーシア連邦裁判所登録局
https://www.kehakiman.gov.my/ms
・マレーシア知的財産協会(MIPA: Malaysian Intellectual Property Association)
https://www.mipa.org.my/
・マレーシア知的財産公社法2002年(INTELLECTUAL PROPERTY CORPORATION OF MALAYSIA ACT 2002)
https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2016/08/Intellectual-Property-Corporation-of-Malaysia-Act-2002-Act-617.pdf
■本文書の作成者
Henry Goh & Co Sdn Bhd■協力
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2021.10.27