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カンボジアにおける知的財産関連機関・サイト
2021年12月21日
■概要
カンボジアの立法府、行政府そして司法府のいずれも知的財産に関する役割を担っている。立法府は知的財産法を含む法律の制定を担当する。行政府は法律の執行を担当し、多くの知的財産関連組織が行政府の管轄に属している。司法府は知的財産権訴訟を含むすべての訴訟を担当し、責任を負う。■詳細及び留意点
カンボジア憲法は、三権を立法府、行政府そして司法府の三つに分けている。立法府には国民議会(National Assembly)と元老院(Senate)がある。行政府は正式にはカンボジア王国政府と呼ばれ、いくつかの省庁および機関で構成されている。司法府には、すべての部門および階級のカンボジアの裁判所が含まれる。
立法府、行政府そして司法府は、知的財産に関する法令の制定、実施、執行において重要な役割を果たしている。立法府、行政府そして司法府の各々は、以下に示すように、異なる機能と責務を担っている。
1.立法府
カンボジアの立法府は、国民議会(http://en.nac.org.kh/)と元老院(https://senate.gov.kh/)とからなる二院制で構成されている。主な任務は法律を制定することである。国民議会の任期は5年、元老院の任期は6年である。国民議会および元老院は年に2回、通常の議会を開いている。国民議会および元老院で承認された法律は、国王に送られ、勅許により公布される。
2.行政府
行政権を有するのはカンボジア王国政府である閣僚評議会(Council of Ministers)である。閣僚評議会は1名の首相が主導し、副首相が補佐、国務大臣、大臣がメンバーである。(カンボジア憲法118条)。知的財産権関連法の実施義務は、複数の省庁、機関、委員会に割り当てられている。これらの組織は2つの機関(監督機関および執行機関)に分類される。監督機関は、知的財産の技術的側面に特化し、知的財産権の登録と保護に責務を負う機関である。執行機関は、保護された知的財産権の侵害を監視し、これに対して措置を講じる機関である。
2.1.監督機関
2.1.1.知的財産局(Department of Intellectual Property)(https://cambodiaip.gov.kh/)
商務省の知的財産局は、カンボジアの3つの知的財産権関連の機関の1つである。知的財産局は、カンボジアにおける商標、商号、不正競争行為、地理的表示、商標のライセンス、独占販売権の登録に責務を負う機関である。また、3つの知的財産権関連機関を監督する国家知的財産権委員会(National Committee for Intellectual Property Rights)の事務局としても機能する。
2.1.2.工業財産局(Department of Industrial Property)URLなし
カンボジアの知的財産権関連の他の機関には、工業科学技術革新省(Ministry of Industry, Science, Technology and Innovation)(https://www.misti.gov.kh/)の工業財産局がある。工業財産局は、特許、実用新案、意匠、集積回路の回路配置、およびカンボジアにおけるそれらの実施許諾について責務を負う。また、工業財産局は、植物新品種の保護の責務も負う。法律上、植物新品種の出願は可能であるが、施行規則が現状施行されておらず、出願フォームや政府費用等も定められていないため、植物新品種の保護のための出願の制度は未だ利用できない。
2.1.3.著作権局(Department of Copyright and Related Rights)URLなし
カンボジアの知的財産権関連の3つめの機関には、文化芸術省(Ministry of Culture and Fine Arts)(http://www.mcfa.gov.kh/)の著作権局がある。著作権局は、カンボジアにおける著作権、隣接権、およびそのライセンスに責務を負う。
2.1.4.農林水産省(Ministry of Agriculture Forestry and Fisheries)(https://web.maff.gov.kh/)
種苗管理および育成者権に関する法律(Law on Seed Management and Plant Breeder’s Rights)第11条(https://www.cambodiaip.gov.kh/DocResources/3efbfe35-610c-4162-a6de-8fa80a084410_e9e18593-8994-4a44-818e-1c9f313dbe17-en.pdf)によれば、農林水産省は植物新品種の技術的成果を評価する責務を負う。しかしながら、手続の詳細に関する規則が定められていないため、植物新品種に関する制度は未だ利用できない。
2.1.5.国家知的財産権委員会(National Committee for Intellectual Property Rights)(http://cambodiaip.gov.kh/TemplateTwo.aspx?parentId=0&menuid=2&childMasterMenuId=0&lang=en)
国家知的財産権委員会は、知的財産に関する国家政策を奨励することを目的として、2008年に設立された。その責務には、(a)知的財産に関する法令の立案、普及および実施、(b)知的財産権の侵害の防止および根絶のために権限のある官庁との協力、(c)二国間および多国間協力の促進における中心的な役割、並びに(d)カンボジアが加盟する知的財産に関する国際協定および条約の調査および研究が含まれる。国家知的財産権委員会は、商務省大臣を委員長とし、工業科学技術革新省大臣および文化芸術省大臣が副委員長を務める。また、国家知的財産権委員会は、閣僚評議会、内務省、経済財政省、情報省、郵便・電気通信省、保健省、農林水産省、環境省、法務省、教育・青少年・スポーツ省および観光省等のその他の省庁および機関からの代表者がメンバーとなっている。国家知的財産権委員会は、監督機関であると同時に執行機関でもある。しかしながら、知的財産政策の立案に重きを置いているため、主に監督機関として分類される。
2.2.執行機関
2.2.1.知的財産犯罪対策室(Anti-Intellectual Property Crime Bureau)URLなし
知的財産犯罪対策室は、内務省(https://www.interior.gov.kh/)の反経済犯罪警察局(Anti-Economic Crime Police Department)の下部組織である。知的財産犯罪対策室は、(a)知的財産権の侵害に関連するすべての犯罪を捜査し、(b)裁判所での訴訟に備えるために、侵害を裏付ける文書や証拠を収集するための捜索・摘発を行い、また、(c)犯罪を抑止するための専門的な措置を講じるために、他の専門部局と協力して模倣品および知的財産権侵害の影響を検討・評価する責務を負う。
2.2.2.関税・消費税総局(General Department of Customs and Excise)(https://www.customs.gov.kh/)
関税・消費税総局は、国全体の輸出入取引を管理する広範な任務を負い、また、知的財産に関連する任務も負っている。標章、商標、不正競争行為に関する法律には、模倣品の疑いがある商品の通関手続を差止める措置である国境措置に関する規定がある。国境措置には税関が関与する。しかしながら、法律上、上記国境措置は可能であるが、手続の詳細に関する規則が定められていないため、上記国境措置は未だ実施されていない。
2.2.3.カンボジア模倣品対策委員会(Cambodia Counter Counterfeit Committee)URLなし
カンボジア模倣品対策委員会は、カンボジアにおいて健康や社会安全に有害なあらゆる種類の模倣品を取り扱う省庁の横断的な委員会として、2014年に設立された。また、模倣品の出所、輸入、製造、在庫、流通などを調査し、健康や社会の安全に有害な模倣品を使用した場合の影響を公衆に啓発することも使命である。カンボジア模倣品対策委員会は、内務省、保健省、国家警察の警察総局(General Commissariat)、関税・消費税総局、消費者保護・競争・不正防止総局(General Department of Consumer Protection, Competition, and Fraud Repression)など、様々な省庁や機関からの11人の代表者で構成されている(2014年10月31日に首相によって署名された、カンボジア模倣品対策委員会の創設に関する決定No.150)。
3.司法府
司法府には、すべての部門および階級の裁判所が含まれる。カンボジアでは、最高裁判所(http://www.supremecourt.gov.kh/)、控訴裁判所(URLなし)、地方裁判所(第一審)(ULなし)の三審制が採用されている。最高裁判所は、カンボジアの首都プノンペンにある。控訴裁判所は、プノンペン、トボンクムン、バタンバン、シアヌークビルの4ヶ所にある(2020年2月19日付、控訴裁判所の発足に関する政令 第3条)。第一審裁判所は、各州/市に設置されている。カンボジアは2021年末から2022年初めまでに、最初の専門裁判所である商事裁判所を設立することを計画している(2021年6月30日付のPhnom Penh Postの記事(https://www.phnompenhpost.com/business/step-towards-commercial-court))。なお、カンボジアには知的財産を専門とする裁判所がない。
■ソース
・カンボジア憲法:https://cambodia.ohchr.org/~cambodiaohchr/sites/default/files/Constitution_ENG.pdf・カンボジア国民議会:http://en.nac.org.kh/
・カンボジア元老院:https://senate.gov.kh/
・商務省知的財産局:https://cambodiaip.gov.kh
・工業科学技術革新省:https://www.misti.gov.kh/
・文化芸術省:http://www.mcfa.gov.kh/
・農林水産省:https://web.maff.gov.kh/
・国家知的財産権委員会:http://cambodiaip.gov.kh/TemplateTwo.aspx?parentId=0&menuid=2&childMasterMenuId=0&lang=en
・内務省:https://www.interior.gov.kh/
・関税・消費税総局:https://www.customs.gov.kh/
・最高裁判所:http://www.supremecourt.gov.kh/
■本文書の作成者
Tilleke & Gibbins (Cambodia) Ltd.■協力
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2021.10.01