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タイにおける代理店による商標権侵害の防止
2015年03月20日
■概要
外国企業がタイに進出する際に、当初は代理店契約を結んだ現地代理店を通じて、商品及びサービスを提供するのが一般的である。しかしながら、必要な商標出願を行っておらず、代理店契約において知的財産に関する条項が含まれていないなどの理由により、代理店契約終了後に以前使っていた代理店による商標権侵害等が発生する場合も少なくない。代理店による商標権侵害を防止するために必要な方策等について紹介する。■詳細及び留意点
【詳細】
外国企業がタイに進出する際に、当初は代理店契約を結んだ現地代理店を通じて、商品及びサービスを提供するのが一般的である。
こうした商品およびサービスに付されるのは、商標、サービスマーク、商品名、信用である。しかしながら、知的財産権者は商標を登録し、知的財産権に関する明確な規定を含んだ適切な代理店契約を締結していない場合がある。代理店との取引が終結した後、商標保護を怠ることにより、貴重な知的財産権が旧代理店によって侵害されるというケースが少なくない。
商標侵害訴訟では、旧代理店による商標および商号の不正使用に対して、商標権者が旧代理店を提訴する事例が見受けられる。一般的なケースとして、旧代理店が商標を模倣し、当該商標に関して登録申請を行っていることを商標権者が発見することがある。また、代理店契約の満了前にも代理店による商標権侵害があり得る。また、代理店契約期間が終了した後、代理店が自社名およびドメイン名の一部として商標権者の商号の使用を開始するという事例も見受けられる。
しかしながら、上記の様な事態が、商標権者が自らの商標および商号に対する権利の喪失を意味するわけではない。タイ商標法に基づき、商標の真の所有者は、先使用を根拠として、模倣商標に対して無効訴訟を管轄裁判所に提起できる。また、タイ民商法典に基づき、商標権者は旧代理店による社名およびドメイン名の一部として、自社の商号の使用を禁止する裁判所命令を得ることもできる。しかしながら、訴訟には商標出願の少なくとも20倍以上の費用がかかり、約5年もの歳月を要することから、事業機会の大きな損失を招くことを考えれば、訴訟が好ましい対応であるとは言えない。
訴訟を回避するためには、代理店契約を締結する前に、以下の2つの方策を講じる必要がある。
第一に、商標権者は代理店を起用する地域における製品またはサービスに使用される商標またはサービスマークのすべてについて、商標登録申請を行わなければない。これは、以下2つの点で商標権者にメリットがある。
(1)代理店が商標権者の商標に混同を生じるほど類似する商標を登録することを妨げる。
(2)商標権者は、商標をその法的権利を根拠として代理店による侵害に対して商標権を行使することができる。
第二に、商標権者は製品またはサービスに使用される知的財産の所有権、当該知的財産を使用する代理店の権利、代理店契約の期間中および終了後の当該権利の制限に関する代理店契約を結ぶ必要がある。商標権者は代理店の社名およびドメイン名の一部として、自らの商号を使用することを代理店に認めることが一般的である。しかしながら、商標権者は商標の使用に関する制限、または契約終了時に社名およびドメイン名の使用を停止する条項を契約書中に含めることを忘れてはならない。この条項により、代理店が商標権者の承認を得ることなく商標および商号を継続して使用しようとした場合に、商標権者は権利を行使することができる。
旧代理店による商標権者の商標および商号の権利侵害を防ぐため、商標の登録と適切な知的財産条項を契約書に含めるという基本的な行為は極めて重要である。
■本文書の作成者
Tilleke & Gibbins International Ltd.弁護士 Kawin Kanchanapairoj
■協力
日本技術貿易株式会社 IP総研■本文書の作成時期
2014.12.29