アジア / ライセンス・活用
タイにおける商標ライセンス登録とフランチャイズビジネス
2015年01月28日
■概要
タイでは、東南アジア経済の成長や2015年の設立が予定されるアジア経済共同体(AEC)に対する期待、国内における中小企業の成長等を背景として、食品や飲料分野を中心に、国内外ブランドによるフランチャイズビジネスが成長している。最近では、中古車市場や映画館など、新たな分野にもフランチャイズビジネスが波及しており、タイにおけるフランチャイズビジネスの展開や商標ライセンス登録について紹介する。■詳細及び留意点
【詳細】 2013年から2014年にかけての政情不安に関わらず、タイにおいては食品や飲料分野を中心として、国内外ブランドによるフランチャイズビジネスが成長傾向にある。その背景としては、東南アジア経済の拡張、2015年設立が予定されるアジア経済共同体(AEC)に対する期待、国内における中小企業の成長等が挙げられる。そして最近では、中古車市場におけるV-Gulliver(日本のガリバーインターナショナル)、映画館Kantana Community Cinemas(タイのKantana Group Public Co Ltd)等、従来は展開のなかったビジネス領域にも、フランチャイズビジネスは波及している。 通常、フランチャイズビジネスの展開においては、フランチャイザーとフランチャイジーの間で、独占/非独占、商取引範囲、期間、対象製品、商標使用権、フランチャイズ料の支払い、フランチャイザーによる技術サポートや教育の提供義務等に関わる契約が交わされる。タイにおいては現在のところ、フランチャイズビジネスに特化した適用法規定は存在せず、該ビジネスは商標使用やライセンス供与に関わる事案であり、タイ商標法第68条(下記参考、出典:日本特許庁ウェブサイト)に基づき、商標ライセンス契約は知的財産局への登録が要件とされている(商標法第68条)。登録のない場合には、フランチャイズビジネスにおいて加盟者との係争に発展した場合等のリスクについて留意する必要がある。 商標ライセンス登録時の必要書類は(1)委任状及び(2)ライセンス契約書類の2点であるが、(2)については、商標法第68条の要件を満たすとの前提で、契約書類そのものを提出する必要はない(通常は、手続代理事務所の用意する簡易なライセンスフォームに署名する形での対応が可能)。これらの必要書類は管轄当局である知的財産局(Department of Intellectual Property:DIP)へ申請され、DIPによる審査を経て登録される。通常、DIPへの申請後15~30日程度で登録される。登録されたライセンス書面については包袋(経過書類)に入袋され、公衆(第三者)閲覧の対象となる。実務的には、契約書の提出は写し(必要以外の部分を塗りつぶしたもの)とすることなどにより、情報の開示内容を限定的にすることが出来る。(その場合、原本は一旦提出が必要だが返却される)。契約書の記載言語について、明示的な制約はないが、商標ライセンス契約の登録申請時に提出書類として「商標のライセンス契約書が外国語で作成されている場合は、翻訳者により正確に訳されたことを示す証明書のあるタイ語翻訳書(2000 年知的財産告示第2 項)」とある。契約書の記載言語は、タイ語以外でも問題ないが、そのタイ語訳に対する(翻訳)認証手続も必要である。 (参考)タイ商標法第68条 登録商標の所有者は、登録された商品の一部又は全部に関して他人に商標の使用をライセンスすることができる。下記事項(1)に基づく商標ライセンス契約は書面で、かつ登録官に登録されるための届出をしなければならない。下記事項(2)に基づくライセンス契約の登録申請は、省令に定める規則及び手続に従って行うものとし、かつ、少なくとも次の事項が示されていなければならない。 (1)登録商標の所有者が使用権者によって製造される商品の品質を実際に管理するために商標所有者と使用権者との間で交わされた契約条件 (2)商標の使用対象商品。
■ソース
特許庁平成23年度産業財産権制度問題調査研究「我が国企業の新興国への事業展開に伴う知的財産権のライセンス及び秘密管理等に関する調査研究」
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/zaisanken.htm#5003 http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/pdf/zaisanken/2011_17.pdf
■本文書の作成者
Rouse & Co. International (Thailand) Ltd.■協力
日本技術貿易株式会社 IP総研■本文書の作成時期
2014.12.11