国別・地域別情報

ホーム 国別・地域別情報 アジア ライセンス・活用 | その他参考情報 商標 | その他 中国における作品登記(著作権登録)の活用方法

アジア / ライセンス・活用 | その他参考情報


中国における作品登記(著作権登録)の活用方法

2014年06月13日

  • アジア
  • ライセンス・活用
  • その他参考情報
  • 商標
  • その他

このコンテンツを印刷する

■概要
中国において、作品登記(著作権登録)は著作権発生の要件ではないが、著作権者が権利行使を行う際に、作品登記証書は権利享有の初歩的な証拠として利用される。また、商標について作品登記しておくことで、冒認出願があった場合に、作品登記証書を証拠として提出し、著作権に基づき異議申立を行うことが可能となる。
■詳細及び留意点

【詳細】

(1) 中国における作品登記(著作権登録)制度

 中国において、独創性を有する作品は、登録しているかどうかを問わず、作品完成時点から著作権が発生する。ただし作品登記(著作権登録)制度が設けられており、作品を登記すれば、登記に際して発行される「作品登記証書」は、その著作物について著作権を有しているという、権利保有の初歩的な証明(相手側から権利帰属に関する反対証拠が提出されていなければ証書に記載されている者が関連作品の権利者であるという証明)になるため、権利行使の際に有利になる。そして、一定の独創性を有する商標についても、作品登記することが可能である。

作品登記が認められた商標の例

作品登記が認められた商標の例

 

(2) 作品登記の権利保護の手段としての活用方法

 権利保護の手段として作品登記を活用し得る場面としては、以下のようなケースがある。

 

(i) 商標の異議、争議(審判)申立

 中国では、商標法第31条において、「商標登録の出願は、他人が現有する先行権利を侵害してはならない。他人が先に使用している一定の影響力のある商標を不正な手段で登録してはならない。」と規定されており、他人が行った冒認出願に対しては、異議申立や無効審判を行うことができる。その際、商標について作品登記を行っていれば、先行著作権を享有することを証する初歩的な証拠として「作品登記証書」を提出し、著作権に基づき冒認出願に対抗することができる。

 

参考事例:佛山市順徳区明邦化工実業有限公司は、2001年に、第2類において第3042469号「Boumpy」商標(下記参照)を出願し、2003年に登録された。これに対し、第三者である株式会社ブリジストンが当該商標に対して無効審判を提出し、先行著作権を有することの証拠として、下記の作品登記の証書等を提出した。商標審判部は、株式会社ブリジストンの先行著作権を認可し、ブリジストン社の著作権を侵害したとの理由で、第3042469号商標を取消すとの裁定を下した。

出願商標(第3042469号)

出願商標(第3042469号)


先行著作権

先行著作権

 

(ii) 行政訴訟、民事侵害訴訟等

 作品登記証書は、通常、商標登録無効審判の審決取消を目的とする商標権行政訴訟及び著作権民事侵害訴訟において、著作権を保有していることの初歩的な証拠として利用されている(著作権民事紛争事件審理の法律適用の若干問題に関する最高裁判所の解釈第7条)。

 

(iii) 行政摘発

 著作権侵害についての行政摘発の申立てを版権局に対して行う場合、通常、適法な著作権者である証拠として、「作品登記証書」を提出することが求められる(ただし地方ごとに扱いが異なる場合もある)。

 

(iv) 権利侵害者に対する警告状

 侵害者に対して警告状等を発行して、侵害行為を停止するよう要求する場合、適法な著作権者である証拠として、「作品登記証書」を併せて送付することが望ましい。ここでいう「侵害者」には著作権侵害者のみならず商標権侵害者も含まれるので、当該商標について商標権を有していなくとも、著作権を有していれば、商標権侵害者に対して著作権に基づき警告することは可能である。

 

(3) 作品登記のメリット

(i) 作品登記は著作権が発生するための要件ではないため、作品が登記されていなくても著作権を行使することは可能である。しかし、著作権を行使するには著作権者であることを立証しなければならない。作品が登記されていなければ、訴訟等において著作権の立証に失敗して、裁判所等に著作権者であることを認めてもらえない可能性がある。特に、係争作品のドラフトや作品委託契約書等の作品の作成、権利帰属に関する証拠を提示できなかった場合に著作権者であると認められない可能性が高い。

 作品登記していれば、権利成立の初歩的な証明書類を入手することになる。権利行使の際に、「作品登記証書」は著作権を有することの初歩的な証明になり、反証がなければ、「作品登記証書」に記載されている著作権者と著作権成立日付等は真実のものであると認められるので(著作権法第11条第4項)、著作権の権利行使の際の立証負担を軽減することができる。

 

(ii) また、侵害事実を発見して、税関又はインターネットサービス提供者等に侵害行為の差止めを請求する時にも、通常、実務上、「作品登記証書」が必要書類として要求される。

 なお、商標権が侵害されている場合については、商標権に基づき、商標登録証を提出して権利行使すべきであるが、商標登録を有さない場合において、作品登記証書を提出して著作権に基づき権利行使をすることは可能である。

 

【留意事項】

  • 「作品登記証書」は上述したとおり、著作権の権利保有の初歩的な証明になる。しかし、登録した作品について独創性が欠如しており著作物に該当しない場合、作品登記できても、著作権の主張は認められなくなるので注意を要する。作品登記の審査は形式審査のみであるため独創性が低いものが登録されるケースが少なくなく、作品登記されたものの表現形式上等において既存の作品と比べて差異がない場合や、芸術的な表現等を有しない場合には、登録された作品について独創性が欠如していると判断されやすい。
  • 商標登録に係る期間は通常15~21ヵ月かかるが、ロゴ等の普通の作品登記については、通常、登記申請の受理日から35~40営業日内に作品登記証書が発行される(官庁手数料:300CNY)。上述の通り中国では近年商標の異議申立において著作権が活用されるなど、権利保護の有効手段として著作権登録が注目されており、冒認出願対策として、商標登録出願と同時に著作権登録を行っておくことも一案である。
  • 作品登記の手続、商標の異議申立の手続の詳細については、本データバンク掲載「中国における著作権の取得」、「中国における商標権の取得」を参照いただきたい。
■ソース
・中国商標法
・中国著作権法
・著作権民事紛争事件審理の法律適用の若干問題に関する最高裁判所の解釈
■本文書の作成者
北京林達劉知識産権代理事務所
■協力
一般財団法人比較法研究センター 不藤真麻
■本文書の作成時期

2014.01.27

■関連キーワード