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ベトナムにおけるロイヤルティ送金及び営業秘密に関する法制度と実務運用の概要

2013年01月15日

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■概要
ロイヤルティ送金は、契約書とインボイスがあれば送金することができる。移転価格税制については、親子会社間の取引においては移転価格が極端でないか等留意する必要がある。アサインバック等については、当事者の合意があっても認められず、契約自体が無効になる。退職後の秘密保持契約については認められるが、競業避止義務を課すことは認められていない。
■詳細及び留意点

(1)ロイヤルティ送金に関する法制度・手続

 現地の邦銀によれば、ロイヤルティの海外送金は手続上多大な手間を要するが、契約書とインボイスがあれば海外へ送金できるとのことである。

 

(2)税制及び監査条項について

 現地におけるロイヤルティ関連の税率は以下のとおりである。

 

(i)法人所得税率-25%

(ii)個人所得税率-5~35%

(iii)付加価値税率-0~10%(品目による)

(iv)日本への利益送金課税-10%

(v)日本への配当送金課税-0%

(vi)日本へのロイヤルティ送金課税-10%

(vii)技術移転源泉税-10%(技術移転料)

 

 また、ノウハウのライセンス登録については、移転が奨励されている技術であれば、減免税の対象として扱われる(「ベトナムにおけるライセンスに関する法制度と実務運用の概要」を参照)。

 移転価格税制については、親子会社間での取引において移転価格が極端である場合、査察が入る可能性がある。しかし移転価格に対する適正な相場が存在するわけではないため、競合他社との比較で決められている可能性がある。

 仲裁条項については、契約書中に設けることができ、それに対する制限は存在しない。

 

(3)改良特許権の帰属及び共有特許の扱いについて

 共有特許については、第三者へのライセンスの際には相手方の許可を得なければライセンス契約を結ぶことはできない。これが定められているのは知的財産法ではなく民法である。

 ライセンス契約においては、実施権者の権利を制限する条項を設けてはならず、当事者の合意があってもアサインバックやグラントバックは禁止される。そのような条項を設けている場合、条項だけでなく、その契約自体が無効とされる。

 

(4)「営業秘密」の要件について

 営業秘密とは、財政的投資、知的投資から得られた情報であって、開示されておらず、かつ、事業において利用可能な情報であり(知的財産法第4条)、営業秘密に対する工業所有権は、当該営業秘密の適法な取得及び秘密保持に基づいて確定する(知的財産法第6条)とされている。

 そして、営業秘密の保護要件については、以下の3つとされている。

 

(i)共通の知識でなく、容易に取得できないもの。

(ii)業として使用されるときは、使用しない者より有利性が得られること。

(iii)開示されず、また、容易に入手することができないよう必要な措置を講じていること。

 

 労働法等において、ベトナムでは被雇用者を保護する立場が強く、雇用者側が不利な状況に置かれやすい状況にあるとされている。そのため、営業秘密の漏洩等で裁判所に提訴したとしても雇用者側に有利な判決が下る可能性は低いと考えられる。実際にあった事例としては、以下のようなものがある。

 

※従業員の中に営業秘密にかかわる事項について公表した者がおり、会社全体に不利益がもたらされた事例がある。かかるトラブル以前まで会社が採択してきた秘密管理保持の方法では従業員に対して有効に対処する方法がなく、対応に苦慮した。

 

(5)競業避止義務及び退職後の秘密保持義務について

 退職後の秘密保持義務を労使契約上において、退職者に課すことは可能であり、期間の定めについても特段制限はない。一方で、競業避止義務については、これを課すことは認められていない。

■ソース
特許庁平成23年度産業財産権制度問題調査研究
「我が国企業の新興国への事業展開に伴う知的財産権のライセンス及び秘密管理等に関する調査研究」
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/pdf/zaisanken/2011_17.pdf http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/zaisanken.htm#5003
■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 和田健秀
■本文書の作成時期

2012.11.06

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