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タイにおけるライセンスに関する法制度と実務運用の概要

2012年11月30日

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■概要
タイにおける準拠法・裁判管轄地については、準拠法をタイ法、裁判管轄地をタイとすることが有利である。ライセンス契約については、特許・商標はタイ政府への登録が義務づけられており、営業秘密については登録義務がない。ライセンス契約の登録は、申請書とライセンス契約書を知的財産局(DIP)に提出するが、記載言語に制限はない。
■詳細及び留意点

(1)準拠法及び裁判管轄について

 一般的な契約における準拠法は、基本的には当事者間の合意で決定可能である。また、知的財産関連の事件についてタイ国内の事件である場合や当事者の少なくとも一方がタイ国籍である場合には中央知的財産国際取引裁判所(The Central Intellectual Property and International Trade Court )が管轄し、第一審のとしての役割を持つ。そして控訴審は最高裁に移されるため、知的財産事件は二審制で審理を行う。なお、日本とタイの間には、外国判決の執行に関する条約がないので、日本の判決を証拠として提出することは可能だが、当該判決をタイでそのまま執行することはできない。当該判決をタイで執行のためには、執行のための裁判を提起する必要がある。

 近年のライセンス契約における準拠法はタイ法が多く、理由として翻訳の手間がかからない点や、迅速な対応が可能である点などが挙げられる。タイの裁判所はレベルが向上してきていることから、タイを裁判地とすることがコスト面でもスピード面からも有利であると考えられる。

 

(2)仲裁条項について

 ライセンス契約について、紛争に関する仲裁条項を入れることは可能であり、仲裁機関を第三国機関に指定することも可能である。さらに、タイはニューヨーク条約加盟国であるため、第三国で出た仲裁結果についても認められる。

 

(3)ライセンス契約の登録について

 特許ライセンス契約は、書面によってタイ政府に登録することが義務付けられており(特許法第41条)、かつ、登録が契約の発効要件である。ライセンス登録義務に反して他人にライセンスをした場合、明示的な罰則規定はないが、知的財産局長は当該特許権の取消しを特許委員会に請求することができる(特許法第55条第2項)。

 また、同様に、商標ライセンス契約についても書面によってタイ政府に登録することが義務付けられており(商標法第68条)、かつ、登録が契約の発効要件である。ライセンス登録義務に違反した場合の罰則等については、商標法上は規定されていない。しかし、実態としては、登録されている特許ライセンス契約、商標ライセンス契約は極めて少ない現状にある。

 営業秘密のライセンス契約については、営業秘密権はライセンスできる旨の規定がある(営業秘密法第5条)ものの、契約の発効条件に関することには言及はなく、登録の必要性についても何ら規定されてはいないため、当事者間合意が契約の発効要件と考えられている。また、営業秘密に関するライセンス契約中に特許ライセンスまたは商標ライセンスが含まれる場合は、当該ライセンス契約自体を登録する必要がある。

 

(4)ライセンス契約の登録申請について

 ライセンス登録申請は、商務省知的財産局(DIP)に申請書とライセンス契約書を提出する。商標については公式の申請様式はあるが、特許については申請に関する公式の様式はない。通常、申請後15~30日程度で登録される。特許・商標ライセンス契約の登録についてそれぞれ審査基準があり、契約書の審査部分については申請により何人にも閲覧できる状態になる。ウェブサイトや公報等で情報開示されるわけではないが、審査部分以外を非開示にすることが出来るので、そうした対応が重要である。具体的には、契約書の提出は写し(必要以外の部分を塗りつぶしたもの)とすることなどである(その場合、原本は一旦提出が必要だが返却される)。

 

(5)ライセンス契約の登録の実情について

 ライセンス登録の実務ライセンス登録数について、特許及び商標の登録総数に比べ非常に少ない現状にある。これは、技術移転を含む契約の中で、特許ライセンスを明記しない包括的契約が行われているといった事情がある。また、実際問題、特許ライセンス契約が行われているとしても、親企業と子企業との契約であれば解釈に争いが生じなく、係争に発展しにくいことから、当該契約をタイ政府に登録しなくても、特段の問題は生じていないということも考えられる。

 

(6)ライセンス契約書の記載言語について

 契約書の記載言語について、明示的な制約はないが、商標ライセンス契約の登録申請時に提出書類として「商標のライセンス契約書が外国語で作成されている場合は、翻訳者により正確に訳されたことを示す証明書のあるタイ語翻訳書(2000 年知的財産告示第2 項)」とある。特許ライセンス契約、ノウハウライセンス契約についても同様に、契約書の記載言語は、タイ語以外でも問題ないが、そのタイ語訳に対する認証手続も必要である。

 

(7)技術移転契約及びフランチャイズ契約について

 技術移転契約(技術援助契約)、フランチャイズ契約にはタイ政府への登録制度はなく、特別な法制度もない。当事者間合意が契約の発効要件となる。また、それらの契約に特許ライセンスまたは商標ライセンスが含まれる場合は、当該ライセンス契約自体を登録する必要があり、特許または商標ライセンス登録が契約の発効要件となり得る場合もある。その際に、提出する契約書は、契約に関係ある部分のみを抜粋した書面を添付すればよいが、抜粋した書面を照合するため、一旦は契約書原本を提出する必要がある。資本提携(資本投資)に関する契約の場合は、前述以外にもいくつかの規制及び省令があり、注意が必要である。

■ソース
特許庁平成23年度産業財産権制度問題調査研究
「我が国企業の新興国への事業展開に伴う知的財産権のライセンス及び秘密管理等に関する調査研究」
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/zaisanken.htm#5003 http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/pdf/zaisanken/2011_17.pdf
■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 和田健秀
■本文書の作成時期

2012.10.16

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