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ロシアにおけるロイヤルティ送金に関する法制度と実務運用の概要

2012年10月09日

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■概要
(2022年10月4日訂正:
本記事のソース「我が国企業の新興国への事業展開に伴う知的財産権のライセンス及び秘密管理等に関する調査研究」のURLが、リンク切れとなっていたため、修正いたしました。)

ライセンス料をロシアから外国に送金するには、銀行に対し、その送金の根拠となる証拠を提出しなければならない。特許権、商標権などに基づくライセンス契約の場合には、外国送金の根拠を証明するため、契約書の原本またはライセンス登録証明印の押された契約書のコピーを提出する必要がある。また、ロイヤルティ送金に対して二重課税条約に基づく源泉徴収税の軽減税率の適用等を求める場合、外国の会社は、外国税務当局からの証明書を得て、ロシアの取引相手先に付与する必要がある。
■詳細及び留意点

ライセンス料をロシアから外国に送金するには、銀行に対し、その送金の根拠となる証拠を提出しなければならない。通常は、契約の種類、ライセンサー、ライセンシー及びライセンス料等が明記された契約書のコピーを提出する。特許権、商標権などに基づくライセンス契約の場合には、外国送金の根拠を証明するため、契約書の原本またはライセンス登録証明印の押された契約書のコピーを提出する。また、営業秘密(ノウハウ)ライセンスに基づくライセンス料の送金の場合には、登録証明のない契約書のコピーを提出することにより送金が認められる。ただし、外国送金額が5万米ドルを超える場合には、居住者は銀行に取引パスポート口座を開設する必要がある。

 

ロシアの法律は、ロイヤルティに関連して以下の2種類の税を規定する。

(1)法人の利益に対する税金(源泉徴収税―非居住者への送金の場合)

(2)付加価値税(VAT)

 

なお、ロシアに居住していない所有者に支払われることになるロイヤルティから税法第309.1.4条に従って源泉徴収しなければならない。税法第284.2.1条により、そうした(源泉徴収)税の標準税率は20%である。

 

税の支払い及び税申告書の提出は、ロシア税法に従って行わなければならない。利益に対する税金は、年4回(または毎月)報告し、月々納付しなければならない。ロシアの会社については、その世界的な収入からの利益の20%の割合が課税対象となる。ロシア外で設立された会社については、ロシア内の収入源及びロシアの恒久的組織を通じた活動に由来するその収入からの利益のみが課税対象となる。利益に対する課税のための税期間は暦年であるが、利益に対する税金の支払いは毎月前払いによって行わなければならない。二重課税条約が、外国の会社に支払われることになっているロイヤルティについて源泉徴収税の免除や軽減を規定している場合(例えば、ロシア-日本二重課税条約の場合、特許、商標等、工業的、商業的もしくは科学的経験に関する情報等についてのロイヤルティは10%)、その適用がある。税法第312.1条によると、外国の会社は、支払いを二重課税条約の関係相手国に税法上の住所を認めている外国税務当局からの証明書を得て、ロシアの相手先に付与しなければならない。証明書は、収入の支払いの前に、ロシアの会社(支払人)に提供されなければならない。未提出の場合には、ロシアの会社は規定された上記の税を、支払うべきロイヤルティ額から源泉徴収する必要があると考えられる。同時に、税法第312.2条は、免除の法令条件が満たされた場合、源泉徴収税を還付する手順を規定している。

 

付加価値税に関しては、税法第146.1.1条によれば、事業活動がロシア領域内に発生したとみなされるとき、権利の譲渡は、付加価値税の課税対象となる。税法第148.1.4条によれば、譲受人またはライセンシーがロシアでその事業を行うならば、ロシア領域がその事業活動の場であるとみなされる。事業活動がロシアの領域で実行されると考えられない場合(例えば、外国のライセンシーが海外にいて、ロシア内のその恒久的組織に関するものではない場合など)、その取引は付加価値税の課税対象とならない。現在、特定の知的財産権を含む取引については付加価値税の免除規定がある。税法第149.2.26条は、発明、実用新案、工業デザイン、コンピュータープログラム、データベース、集積回路レイアウト及び企業秘密(ノウハウ)に関する譲渡及びライセンス契約には課税免除が適用になると規定している。他の全ての知的財産権(例えば、商標権)を含む取引は、付加価値税の対象となる。別言すれば、ロシアのライセンシーは、商標ライセンス契約における外国ライセンサーになされるいかなる一括支払いまたはロイヤルティ支払いについても、付加価値税としてその額の18%にあたる額を請求しなければならない。

 

監査条項の扱いについて、ライセンス契約に別段の定めがある場合を除き、ライセンシーはライセンサーに知的な活動の結果または個別化手段の運用過程についてのレポートを提供しなければならない(民法典第1237条)。知的な活動の結果または個別化手段の運用についてのレポートの提示を必要とするライセンス契約が、その提示の時期及び手続きについて定めていない場合、ライセンシーはライセンサーの要求に応じてそのようなレポートをライセンサーに提出する義務がある。この規則は命令的なものであり、それがライセンス契約に含まれるか否かとは関係なく適用される点に注意が必要である。しかも、当事者は、ライセンシーの活動をライセンサーが監査する手順の詳細を契約中に定めてもよい。

 

【留意事項】

ロシアにおけるロイヤルティの海外送金については、銀行に対し、その送金の根拠となる証拠を提出しなければならないこと、特に特許権、商標権などに基づくライセンス契約の場合には、外国送金の根拠を証明するため契約書の原本またはライセンス登録証明印の押された契約書のコピーを提出する必要があること、また、ロイヤルティ送金に対して二重課税条約に基づく軽減税率の適用等を求める場合、外国の会社は、外国税務当局からの証明書を得て、ロシアの取引相手先に付与する必要があることに留意が必要である。また、ロシア税法には他の知的財産権に対して存在している付加価値税の課税免除規定が商標ライセンスに対してはないことや、ライセンス監査に関するレポートの提出が法律上の義務としてライセンシーに求められていることにも注意が必要である。

■ソース
特許庁平成23年度産業財産権制度問題調査研究
「我が国企業の新興国への事業展開に伴う知的財産権のライセンス及び秘密管理等に関する調査研究」
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11629339/www.globalipdb.inpit.go.jp/jpowp/wp-content/uploads/2013/09/b1d52c81aa335e59a2fcf870c5d4756c.pdf https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11629339/www.globalipdb.inpit.go.jp/jpowp/wp-content/uploads/2013/09/b1d52c81aa335e59a2fcf870c5d4756c.pdf#page=84
■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 和田健秀
■本文書の作成時期

2012.09.14

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