欧州 / ライセンス・活用
ロシアにおけるライセンスに関する法制度と実務運用の概要
2012年10月09日
■概要
特許権、実用新案権、意匠権、商標権にかかわるライセンス契約はロシア特許庁に登録されない場合無効になる。登録にかかる期間は2~4か月である。ライセンス契約において領域若しくは期間が指定されていなくとも、当該契約は5年以内においてロシア連邦域内で有効とされる。■詳細及び留意点
ロシアにおけるライセンス契約全般について、ロシア民法典第1235条~1238条に規定がなされており、当該民法典では営業秘密自体は民事上の取引の対象とはならず、営業秘密に基づく排他的権利を譲渡またはライセンスすることが出来る法制度となっている(民法典第1468条1項)。
営業秘密に基づく排他的権利のライセンサー及びライセンシーは、当該排他的権利が終了するまで、当該情報の秘密を保持しなければならず(民法典第1468条3項)、また、契約終了後においても当該排他的権利期間が終了するまで当該情報の秘密を保持する義務を課すことが出来る(民法典第1468条3項)。
当事者はライセンス契約の有効期間を定めることが出来るが、契約期間の定めがない場合には、契約終了の少なくとも6か月前に通知することにより契約を終了させることが出来る(民法典第1468条2項)。
特許権、実用新案権、意匠権、商標権にかかわるライセンス契約は、契約をロシア特許庁に登録することにより効力を生ずる(民法典第1232条3項)。また登録がなされない場合には契約は無効になる(民法典第1232条6項)。またロシア特許庁は登録申請について、その手続及び契約内容について審査を行う。
一般に登録の手順は以下のとおりである。
登録を開始するためには、ライセンス契約の当事者は、以下のものを添付して申請書をロシア特許庁に提出する。
(1)当事者が署名捺印したライセンス契約の契約書(原本)2部。または公証を受け認証されたライセンス契約の謄本2部。または公証を受け認証されたライセンス契約の抄本2部。
(2)ライセンス契約の謄本(認証不要)。
(3)商標または特許弁護士(弁理士)の委任状(認証不要)。
(4)契約の登録のために国に支払うべき料金納付を証明する文書。
契約の登録に関するロシアの規則は、文書の様式、当事者の名前の正しい表示(外国の当事者の場合、名前はキリル文字に字訳されるように規定される)、ロシア語ではない文書の公証された翻訳文の提出(登録のためには契約書を外国語とロシア語の2ヵ国語バージョンで作成することが推奨される)に関して厳格な規則を含む点に留意する必要がある。
登録の手続については、以下の手順で行われる。必要書類一式と申請書の提出時から10営業日以内に形式的な審査を行う(例えば、外国語で提出された契約書の翻訳が公証を受けているかなど)。実質審査は申請書提出から2か月以内に行われるが、一方でロシア特許庁はさらなる文書や説明を求める権限があり、そのような場合、登録までの期間はさらに2か月間延長される。そのため、ライセンス契約の登録に要する期間は2~4か月となり得る。
ライセンス契約の重要な条件またはライセンス契約の終了に関連したいかなる補正もロシア特許庁に記録され、ここで重要な条件とは以下を含む。
(1)主題(特許または商標登録書の詳細と発行日)
(2)ライセンスのタイプ(排他的か非排他的か)
(3)ライセンス期間
(4)領域
(5)ライセンスされた権利の範囲
(6)金額(正確な額またはそれの決定手順が規定されていなければならない。さもなければ契約は未締結と考えられ、登録されない。)
領域が規定されていない、あるいは期間が指定されていない場合にはライセンス契約は5年以内においてロシア連邦の全領域について有効である(民法典1235条4項)。なお、ライセンスの期間と領域の表示が契約に明記されていない場合にはロシア特許庁より説明を求められることになると思われる。
また、ロシア特許庁は、契約条件が重要性に欠けることを理由にライセンス契約の補正の登録を拒絶する権利はないため、実務的観点からはライセンス契約のいかなる補正も登録することが望ましい。
契約の一方的終了の登録については、契約により規定される終了手順が遵守されたという証拠(例えば、終了通知が相手方に送られている等)を提出しなければならない。
【留意事項】
特許権、実用新案権、意匠権、商標権にかかわるライセンス契約はロシア特許庁に登録されない場合無効になる。登録にかかる期間は早ければ2か月程度であり、提出文書について説明を求められる等の場合において4か月程度となり得る。ライセンス契約において領域若しくは期間が指定されていなくとも、当該契約は5年以内においてロシア連邦域内で有効とされるが、その点について登録の際にロシア特許庁から説明を求められる可能性があること等について留意する必要がある。
■ソース
特許庁平成23年度産業財産権制度問題調査研究「我が国企業の新興国への事業展開に伴う知的財産権のライセンス及び秘密管理等に関する調査研究」
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/zaisanken.htm#5003 http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/pdf/zaisanken/2011_17.pdf