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インドにおける営業秘密に関する法制度と実務運用

2012年08月27日

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■概要
インドには、営業秘密保護に関する制定法は存在しないが、営業秘密については、契約あるいはコモンローにおける衡平法に基づく保護が認められている。
■詳細及び留意点

 インドには、営業秘密保護に関する制定法は存在しないが、TRIPS協定第39条の規定に拘束されており、営業秘密については、契約(秘密保持契約、雇用契約、技術的ノウハウ契約など)あるいはコモンローにおける衡平法に基づく保護が認められている。

 

 当事者間に契約関係がない場合であっても、コモンローにおいて営業秘密に秘密保持義務の存在が認められ得る。

 

 訴訟を提起するためには以下のような「秘密」性の要件が満たされる必要がある。

 

「秘密」性の要件

  • 当該情報が秘密であること。
  • 秘密保持義務が適用される状況で当該情報が開示されたこと。
  • 当該情報が無断使用されて、原告に損害を与えたこと。

 

また、訴訟において、秘密保持義務違反として認められるためには、原告は、

  • 問題となる「秘密」情報について特定すること
  • 当該情報が、守秘義務が課された状況で伝達されたものであること
  • 当該情報が秘密として扱われるべき種類ものであること
  • かかる秘密情報が、原告の許可なく使用されたこと

を証明しなければならない。

 

 なお、秘密情報がデータベースやソフトウェアの場合、2000年に制定され、2008年に改正されたIT法(Information Technology Act)に基づいて保護を受け得る。

 

 退職者に退職後の秘密保持義務を課すことはでき、退職後の秘密保持義務等について期間の制限は法律上特に設けられていない。また、インド契約法第27条によれば競業避止義務の条項を設けることはできず、競業他社に転職すること自体を防ぐ条項を設けることはできないが、プロジェクトの範囲といった狭い範囲の限定をかけることは可能である。

 

 企業ヒアリングによると、実務上以下のような営業秘密の管理手法が取られているようである。

  • 他企業との契約の際には、まず、秘密保持契約、NDA(Non Disclosure Agreement)、CDA(Confidential Disclosure Agreement)を交わしてから正式な話を進める。
  • 労使契約書に「営業秘密」の定義を設けるとともに守秘義務を課す。
  • 勤務者に対する秘密保持教育を行う。
  • ノウハウ全体を研究者に見せるのではなく、細分化した内容を研究者は担当として受け持つのみとする。
  • 退職後の秘密保持義務を課し、転職先において同じ分野のプロジェクトに従事することを禁止する旨の条項を入れる。

 

【留意事項】

インドの司法は外国企業に対しても公平であり、年数こそ要するものの営業秘密が漏洩した場合の対策として司法の判断に委ねることに危機感はないとの話も聞かれるが、営業秘密は一旦漏洩してしまうと現状回復は不可能であり、事前にできる限りの対策をしておくことが望ましい。特に、他社との共同研究・共同事業開始を検討する際には事前に秘密保持契約を交わすこと、労使契約上秘密保持条項をきちんと記載することが推奨される。

■ソース
特許庁平成23年度産業財産権制度問題調査研究
「我が国企業の新興国への事業展開に伴う知的財産権のライセンス及び秘密管理等に関する調査研究」
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/zaisanken.htm#5003 http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/pdf/zaisanken/2011_17.pdf
■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 和田健秀
特許庁総務部企画調査課 古田敦浩
■本文書の作成時期

2012.08.14

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