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インドにおけるロイヤルティ送金に関する法制度と実務運用の概要
2012年08月27日
■概要
(本記事は、2022/7/14に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/license/24067/
従前のロイヤルティ支払いにおける料率の政府機関による事前承認制度は廃止されている。ロイヤルティ送金の際の現地法人の源泉税が変わるため、外国企業側にPAN(Permanent Account Number)の取得が推奨されている。移転価格税につき、日本・インド間では、事前協議制度(APA)が設けられておらず、不確定なリスクがある。
■詳細及び留意点
従前、技術使用等にかかるロイヤルティの支払いについては、輸出額の8%、国内販売額の5%まで、また契約に伴う初期の一括支払額は200万ドルまで自動認可されてきた。また商標の使用に関するロイヤルティの支払いは、輸出額の2%、国内販売額の1%までが自動認可対象であったが、2009年12月に発効されたPress Note第8号によって、上記制限が撤廃され、政府機関による事前承認制度は廃止された。現在は、ロイヤルティ料率等は特別な規定は設けられておらず、各企業の裁量判断に委ねられている。
ロイヤルティ送金は、インド準備銀行から認可を受けたAuthorized Bank(みずほ銀行・CITYBANK等)に、送金に必要なフォーム及び契約書のコピー、会計士の証明書(金額の妥当性について会計士が証明するもの)を提出することで行う。Authorized Bankを通じて、インド準備銀行には、提出書類が回るため、自動的に「事後的な報告」がなされることとなる。
また、送金するにあたり、2010年の税法改正によって、外国企業側にPAN(Permanent Account Number)の取得が推奨されている。外国企業側がPANを取得している場合にはロイヤルティ送金の際の現地法人の源泉税が10%となるが、PANの取得がなければ20%の源泉税を徴収される。なお、PANの取得手続30は、所定の書式をインド所得税局 http://www.incometaxindia.gov.in/home.asp が指定する登録代行業者に添付書類を添えて提出する。申請は書類等に不備がなければ認められるが、1、2か月を要する。
さらにロイヤルティ送金の際には、サービス税5.3%、研究開発税5%の納税義務が発生する。よって、送金の際に、日本企業側が実際に受け取る金額=ロイヤルティ総額*(1-(源泉税+サービス税+研究開発税))/100となる。PAN取得している場合には、20.3%の税金が、PAN取得していなければ30.3%の税金が課され、差し引かれた金額が送金されることとなる。
移転価格税につき、日本・インド間では、事前協議制度(APA)が設けられておらず、不確定なリスクがある。インドの税務当局によって、否認されるか否かの分水嶺は、「インドの現地会社が利益をあげているか否か」と考えられる。料率が上げられているにも関わらず現地企業側が赤字になっている、という状況の場合、インド税務当局より、インド企業側の税金控除を目論むものではないか、と判断されるようである。ロイヤルティ料率についての事前承認制度がないため、インド税務当局より、ロイヤルティ送金に係る否定がなされるのは実際の送金が行われた数年後となる。否定された場合、税務当局との間での相違について司法判断にゆだねられることになるが、判決には数年を要することとなる
【留意事項】
今後の契約の見直しまたは新たな締結を検討していくにあたっては、従前のロイヤルティ支払いにおける料率の政府機関による事前承認制度は廃止されていることに留意するべきである。また、実務上、やり方によって税率が変わってくることもあり、送金の手続についても良く調べておくことが望ましい。
■ソース
特許庁平成23年度産業財産権制度問題調査研究「我が国企業の新興国への事業展開に伴う知的財産権のライセンス及び秘密管理等に関する調査研究」
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/zaisanken.htm#5003 http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/pdf/zaisanken/2011_17.pdf
■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 和田健秀特許庁総務部企画調査課 古田敦浩
■本文書の作成時期
2012.08.14