アジア / ライセンス・活用
インドにおけるライセンスに関する法制度と実務運用の概要
2012年08月27日
■概要
(2022年10月4日訂正:本記事のソース「我が国企業の新興国への事業展開に伴う知的財産権のライセンス及び秘密管理等に関する調査研究」のURLが、リンク切れとなっていたため、修正いたしました。)
契約において裁判管轄の選択が可能であり、また、準拠法の指定を制限する法規定はない。特許ライセンスが法的に有効と認められるためには特許権のライセンス契約の登録が必須である。商標権のライセンスは第三者対抗要件であり登録は必須ではない。営業秘密ライセンスについては登録制度はない。
■詳細及び留意点
インド法においても、契約において裁判管轄を選択することが可能であり、また、準拠法の指定を制限する法規定はない。準拠法が日本法であれば日本における裁判判決を現地で執行することも法文上可能であるが、判決の執行は、日本の判決をそのまま執行することは出来ず、改めてインド国内の裁判所に執行のための訴えを起こす必要がある。こうした点から、準拠法の選択については、契約の執行地であるライセンシーの属する国の法律を準拠法とすることを現地コンサルタントは勧めている。ただし、ヒアリング(ソースの報告書参照)において、現地企業との「日本企業との間における契約書の準拠法は、日本、シンガポール、あるいはインドのいずれかとしている。シンガポールを準拠法とする根拠は、日本でもインドでもないバランスを(どちらかにとって有利ではない)考慮したものである」との回答もあった。また、インドはニューヨーク条約加盟国であるため、仲裁地をインド以外に設けることが可能であり、ヒアリング(ソースの報告書参照)によると実務上良く用いられる仲裁地はシンガポールのようである。
特許権のライセンス登録は必須である(第69条第1項)。ライセンス登録の日をもって、ライセンシーは実施権があるものと認められ、契約書があるのみでライセンスを登録しない場合、法的にはライセンシーには特許権を使用する権利がないものと判断される。
他方、商標権のライセンスは第三者対抗要件であり、登録は必須ではないが、登録使用権者の使用は商標権者の使用とみなされる(商標法第48条)。また、商標権の登録使用権者は、専用使用権、通常使用権に関わらず、自己の名義にて、第三者の使用に対して侵害訴訟を提起できる(商標法第52 条)。
営業秘密ライセンスについては登録制度はない。
ライセンス登録においては、ライセンシーが所定の書式及び契約書をインド特許庁に提出する。実務上、提出書類の形式が整っていれば拒絶されることはない。ここで、提出する契約書は原本である必要がある。提出された書類が登録されるまでおよそ3か月程度を要する。なお、ライセンス契約の言語を指定する法規制はないが、契約書のライセンス登録等の手続の際には、契約書原本及び英語あるいはヒンディー語の翻訳の提出が必要となるが、契約書原本が英語あるいはヒンディー語であれば、翻訳の提出は必要ない。
ライセンシーの名前、対象権について公開されるものの、積極的な公開制度はない。また秘密請求を行うことによって、なお、特許権者または実施権者の請求に基づいて、長官は、裁判所の命令に基づく場合以外には何人に対してもライセンス条件等を開示しない保障措置を取ることとされている。
【留意事項】
インドにおいては特許ライセンスが法的に有効と認められるためには特許庁へのライセンス登録が必要とされていることに留意する必要がある。また、商標権のライセンス登録は第三者対抗要件であること、営業秘密ライセンスの登録制度がないことも合わせ注意が必要である。
■ソース
特許庁平成23年度産業財産権制度問題調査研究「我が国企業の新興国への事業展開に伴う知的財産権のライセンス及び秘密管理等に関する調査研究」
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11629339/www.globalipdb.inpit.go.jp/jpowp/wp-content/uploads/2013/09/b1d52c81aa335e59a2fcf870c5d4756c.pdf https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11629339/www.globalipdb.inpit.go.jp/jpowp/wp-content/uploads/2013/09/b1d52c81aa335e59a2fcf870c5d4756c.pdf#page=51
■本文書の作成者
特許庁総務部企画調査課 和田健秀特許庁総務部企画調査課 古田敦浩
■本文書の作成時期
2012.08.13