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ニュージーランドにおける現地法人の知財問題 -雇用契約上の留意点

2016年06月02日

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■概要
ニュージーランドにおいて、従業者、とりわけ発明活動を想定して雇用する従業者と締結する雇用契約では、従業者が発明を創出し、その成果を使用者へ報告する動機づけを与えることが重要である。同時に、使用者の保有する営業秘密が従業者から漏洩するリスクや、従業者が以前所属していた雇用先から営業秘密不正流用のクレームを受けたり、訴追されるリスクを回避するための条項を、雇用契約中に設けることが望ましい。
■詳細及び留意点

【詳細】

知的財産の帰属と雇用契約

 ニュージーランドの労働法によれば、従業者が「職務上」(in the course of employment)創出した発明(「職務発明」)等の知的財産に対する権利は使用者に帰属する。実際は、発明が「職務上」なされたか否かが争われる可能性が高く、数少ないがこれが争点となった判例等も存在する。

 

 代表的な判例は、Pearl Empress Abalone Ltd. v. Landgon[2000]2 ERNZ 53(CA)事件で、アワビ真珠生産会社の従業者による発明の所有権が争われた事件である。被告は「球状」アワビ真珠の生産に関する研究開発プロジェクトのメンバーとして原告法人(使用者)に雇用された。原告での雇用期間中、被告は勤務時間外の自分の時間を使って、原告の設備その他の資源を利用することなく、「半球状」アワビ真珠の新製法を独自に開発し、自らの名で特許出願をした。これを知った原告は、被告の特許出願に対する会社の所有権を主張して被告を提訴した。

 

 裁判所では、半球状アワビ真珠の新製法が「職務上」開発されたのか否かが争点となった。原告と被告は書面の雇用契約を交わしていなかったのであるが、裁判所における審理を経て、被告の職務は「球状」真珠の生産に関する研究開発に限定されており、「半球状」真珠は含まれないことが認定された。よって、当該特許出願に対する被告の所有権が認められたのである。

 

 従業者による発明は誰が所有するのか、という問題はその後、Pickering v. DetectionServices Ltd.事件([2012]NZERA Auckland 260)でも争われた。これは裁判所への提訴事例ではなく、元従業者が雇用されていた使用者(センサーメーカー)による不当解雇を主張して、労働関係局(Employment Relations Authority)へ申立をした事例である。申立によれば、元従業者が雇用期間中に開発した水漏れセンサーに関する発明の所有権を使用者に譲渡することを拒否しており、これが解雇理由のひとつになっていた。労働関係局は、両者間の雇用契約と職務記述書(job description)を精査したうえで、「申立人の職務は管理業務であることが明記されており、研究開発に関する記載は一切ない。したがって、申立人による水漏れセンサーの発明は職務上なされたものとはいえない」と認定した。そのうえで労働関係局は、申立人が水漏れセンサーに関する発明の所有権を使用者に譲渡しなかったことは、解雇の正当な理由にはならないと結論づけた。

 

 これらの判例や決定事例からも明らかなように、雇用契約を締結する際には、従業者に求められる職務の内容と範囲について明確に記載したうえで、職務発明等は、それが職務遂行過程で創出され、かつ職務の範囲に属するものである場合、使用者に帰属することを明記した条項を設けることが望ましい。

 

特許発明

 ニュージーランド特許法(2013年法律第68号、以下「特許法」)では、特許は、発明者から特許を受ける権利の譲渡を受けた者(使用者を含む)、または発明者が死去した場合、その遺産管理人に与えられる、と定められている(特許法第22条)。特許法には、職務発明の権利帰属について特別な規定がない。したがって、使用者は、職務発明に対し特許付与の前までに、従業者から譲渡証を得ておくべきである。

 

発明の報告の奨励

 ニュージーランドでは、職務発明に対する報奨金について、法律で定めていない(特許法第28条~30条が、職務発明をめぐる従業者に使用者との紛争解決について規定しているのみ)。したがって、雇用契約において、従業者に与える報奨金について予め定めておくことを推奨する。

 

営業秘密

 ニュージーランドでは、営業秘密やその他の秘密情報は基本的に当事者間の契約によって保護しなければならない。使用者と従業者という雇用関係がある場合には、労働法による保護も可能であるが、営業秘密の不正開示や漏洩を防ぐためには、秘密情報に接する従業者と使用者との間で秘密保持契約を締結し、契約当事者が情報の使用と開示に関して規定しておくことが望ましい。

 

 雇用契約には守秘義務を明示的に規定すべきであるが、課される義務の範囲が過度に広い場合には、裁判所によって、従業者を過度に拘束する不当な制限とみなされることがあるので注意する必要がある。逆に高度な機密性をもつ開発プロジェクト関連の情報など、対象となる情報の性質によっては、雇用契約に加えて、別途秘密保持契約を結んだ方がよい場合もある。秘密保持契約では、秘密保持すべき情報を明確に定義し、情報の使用範囲を特定し、情報の無断複製を禁止する。さらに、契約時に定義された秘密情報の範囲が広がった場合には契約を修正し、秘密保持対象を追加するなどの厳格な対応が必要になる。

■ソース
・ニュージーランド労働法
・ニュージーランド特許法
■本文書の作成者
Baldwins Intellectual Property(ニュージーランド法律事務所)
■協力
日本技術貿易株式会社
■本文書の作成時期
2016.02.29
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