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日本とフィリピンにおける意匠の新規性喪失の例外に関する比較

2015年09月04日

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■概要
フィリピン意匠出願における新規性喪失の例外規定では、日本と同様に発明者による開示が新規性喪失の例外として認められている。新規性喪失の例外適用期間についても同様に、公開日から6ヶ月と規定されている。また、日本のように公開の証明書類の提出は不要である。
■詳細及び留意点

日本における意匠出願の新規性喪失の例外

 日本においては、新規性を喪失した意匠の救済措置として、新規性喪失の例外規定が定められている。新規性喪失の例外規定の適用要件は以下の通りである。

1 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の意に反して公開されたこと(第4条第1項)または

2 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の行為に基づいて公開されたこと(第4条第2項)

 

上記いずれの場合についても、以下の要件を満たす必要がある。

(1)意匠登録を受ける権利を有する者が意匠登録出願をしていること

(2)意匠が最初に公開された日から6ヶ月以内に意匠登録出願をしていること

 

なお第4条第2項に記載される自己の行為に基づく新規性喪失については、さらに以下の手続が必要となる。

(3)出願時に、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする旨を記載した書面を提出、あるいは願書にその旨を記載すること(第4条第3項)。

(4)出願の日から30日以内に、公開された意匠が新規性喪失の例外規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する「証明書」を証明書提出書とともに提出すること(第4条第3項)。

 

「証明書」には、意匠が公開された事実(公開日、公開場所、公開された意匠の内容等)とともに、その事実を客観的に証明するための署名等を記載することが必要である。上記要件を満たした場合、その意匠登録出願に限り、その公開意匠は公知の意匠ではないとみなされる。

条文等根拠:意匠法第4条

 

日本意匠法 第4条 意匠の新規性の喪失の例外

1 意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して第三条第一項第一号または第二号に該当するに至った意匠は、その該当するに至った日から六月以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同条第一項および第二項の規定の適用については、同条第一項第一号または第二号に該当するに至らなかつたものとみなす。

2 意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第三条第一項第一号または第二号に該当するに至った意匠(発明、実用新案、意匠または商標に関する公報に掲載されたことにより同条第一項第一号または第二号に該当するに至ったものを除く。)も、その該当するに至った日から六月以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同条第一項および第二項の規定の適用については、前項と同様とする。

3 前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第三条第一項第一号または第二号に該当するに至った意匠が前項の規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面を意匠登録出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。

 

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フィリピンにおける意匠出願の新規性喪失の例外

フィリピン知的財産法における新規性喪失の例外規定としては、以下の記載がある。

実務的には日本と同様に発明者による開示行為は新規性喪失の例外として認められている。フィリピン知的財産法119条1項にて、新規性喪失の例外規定に関する知的財産法25条を意匠出願にも適用する旨規定されている。但し、意匠規則302条にて、意匠出願の場合、新規性喪失の例外期間は公開日から6か月以内と定められている。新規性喪失の例外適用期間についても同様に、公開日から6ヶ月と規定されている。また、日本のように公開の証明書類の提出は不要である。

条文等根拠:知的財産法第25条、知的財産法第119条第1項、意匠規則302条、意匠規則402条

 

フィリピン知的財産法 第25条 新規性喪失の例外

(1)フィリピン出願に含まれる情報の開示が、フィリピン出願の出願日前または優先日前12月以内になされた場合において、その開示が次の場合に該当するときは新規性を喪失しないものとみなされる。

 (a)その開示が発明者によってなされた場合

 (b)その開示が特許庁によってなされ、開示情報が

  (i)発明者が出願した別の出願に記載され、かつ、特許庁によって開示されるべきではなかった場合、または

  (ii)発明者から直接的もしくは間接的に情報を得た第三者によって、発明者の認識もしくは同意がなく行われた出願に記載されている場合

 (c)その開示が発明者から直接的または間接的に情報を得た第三者によってなされた場合

(2)フィリピン知的財産法第25条第1項に規定する「発明者」とは、フィリピン出願の出願日の時点で特許を受ける権利を有していた者も含める。

 

フィリピン知的財産法 第119条 他の条および章の通用

(1)特許に関する次の規定を意匠登録について準用する。

第21条 新規性

第24条 先行技術。ただし、その開示が印刷物または現実の形状に含まれていることを条件とする。

第25条 不利にならない開示

第28条 特許を受ける権利

第29条 先願主義

第30条 委託によりなされた発明

第31条 優先権。ただし、意匠出願は、対応する外国出願の最先の優先日から6月以内にしなければならない。

第33条 代理人または代表者の選任

第51条 出願の拒絶

第56条から第60条まで 特許の放棄、訂正および変更

第7章 特許を受ける権利を有する者の救済

第8章 特許権者の権利および特許の侵害

第11章 権利の譲渡および移転

 

フィリピン意匠規則 第302条 要求される新規性の程度

フィリピン知的財産法第23条(新規性)および第25条(新規性喪失の例外)に規定する特許の新規性の基準は、意匠に準用する。ただし、IP法第25条に定める12ヶ月の期間は、意匠の場合は、6ヶ月とする。出願の意匠と先行意匠との差異が当業者にとって些細な点のみである場合は新規性を有するとはみなされない。

 

フィリピン意匠規則 第402条 新規性喪失の例外

フィリピン出願に含まれる情報の開示が、フィリピン意匠出願の出願日前もしくは優先日前6ヶ月以内にされ、またはフィリピン実用新案登録出願の出願日前もしくは優先日前12ヶ月以内になされた場合において、その開示が次の場合に該当するときは新規性を喪失しないものとみなされる。

(a)その開示が考案者/意匠創作者によってなされた場合

(b)その開示が特許庁によってなされ、開示情報が

 (i)考案者/意匠創作者が出願した別の出願に記載され、かつ、特許庁によって開示されるべきではなかった場合、または

 (ii)考案者/意匠創作者から直接的もしくは間接的に情報を得た第三者によって、考案者/意匠創作者の認識もしくは同意がなく行われた出願に記載されている場合

(c)その開示が考案者/意匠創作者から直接的または間接的に情報を得た第三者によってなされた場合

本条に規定する「考案者/意匠創作者」とは、フィリピン出願の出願日の時点で特許を受ける権利を有していた者も含める。

 

日本とフィリピンにおける意匠の新規性喪失の例外に関する比較

 

日本

フィリピン

新規性喪失の例外の有無

公知行為の限定の有無

 

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新興国等知財情報データバンク 調査対象国、地域における意匠の新規性喪失の例外については、下記のとおりである。

 

意匠の新規性喪失の例外に関する各国比較

新規性例外の有無

例外期間

例外期間の起算日

公知行為の限定の有無

JP

6ヶ月

公開日

BR

180日間

公開日

CN

6ヶ月

公開日

HK

6ヶ月

公開日

ID

6ヶ月

公開日

IN

6ヶ月

公開日

KR

6ヶ月

公開日

MY

6ヶ月

公開日

PH

6ヶ月

公開日

RU

12ヶ月

公開日

SG

6ヶ月

公開日

TH

12ヶ月

公開日

TW

6ヶ月

公開日

VN

6ヶ月

公開日

■本文書の作成者
日本技術貿易株式会社 IP総研
■本文書の作成時期

2015.03.03

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