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日本と中国における意匠の新規性喪失の例外に関する比較

2015年06月26日

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■概要
(本記事は、2019/1/24に更新しています。)
 URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16447/

日本および中国いずれにおいても意匠の新規性喪失の例外規定は存在し、ともに例外が認められる期間は6ヶ月間である。ただし日本においては、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の行為に基づく公知行為自体は限定されていないのに対し、中国においては公知行為自体に限定が設けられている。
■詳細及び留意点

日本における意匠出願の新規性喪失の例外

日本においては、新規性を喪失した意匠の救済措置として、新規性喪失の例外規定が定められている。新規性喪失の例外規定の適用要件は以下の通りである。

1 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の意に反して公開されたこと(第4条第1項)または

2 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の行為に基づいて公開されたこと(第4条第2項)

 

上記いずれの場合についても、以下の要件を満たす必要がある。

(1)意匠登録を受ける権利を有する者が意匠登録出願をしていること

(2)意匠が最初に公開された日から6ヶ月以内に意匠登録出願をしていること

 

なお第4条第2項に記載される自己の行為に基づく新規性喪失については、さらに以下の手続が必要となる。

(3)出願時に、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする旨を記載した書面を提出、あるいは願書にその旨を記載すること(第4条第3項)。

(4)出願の日から30日以内に、公開された意匠が新規性喪失の例外規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する「証明書」を証明書提出書とともに提出すること(第4条第3項)。

 

「証明書」には、意匠が公開された事実(公開日、公開場所、公開された意匠の内容等)とともに、その事実を客観的に証明するための署名等を記載することが必要である。上記要件を満たした場合、その意匠登録出願に限り、その公開意匠は公知の意匠ではないとみなされる。

条文等根拠:意匠法第4条

 

日本意匠法 第4条 意匠の新規性の喪失の例外

1 意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して第三条第一項第一号または第二号に該当するに至った意匠は、その該当するに至った日から六月以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同条第一項および第二項の規定の適用については、同条第一項第一号または第二号に該当するに至らなかつたものとみなす。

2 意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第三条第一項第一号または第二号に該当するに至った意匠(発明、実用新案、意匠または商標に関する公報に掲載されたことにより同条第一項第一号または第二号に該当するに至ったものを除く。)も、その該当するに至った日から六月以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同条第一項および第二項の規定の適用については、前項と同様とする。

3 前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第三条第一項第一号または第二号に該当するに至った意匠が前項の規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面を意匠登録出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。

 

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中国における意匠出願の新規性喪失の例外

出願日前に意匠出願の内容が公開された出願人に対する救済措置として、(1)中国政府が主催するまたは認める国際展示会での初めての展示、(2)規定の学術会議、あるいは技術会議上での初めての発表、(3)出願者の同意を得ない他者によるその内容の漏洩、の三つの場合、6ヶ月間の新規性喪失の例外期間が設けられている。

この規性喪失の例外期間を利用するには、(1)と(2)の場合には、出願の時に宣誓し、かつ出願日から2ヶ月以内に証明書類を提出しなければならない。また(3)の場合には、他人が出願人の許可を得ずに当該内容を漏らしたことを出願人が出願日以前に知っているならば、出願時に宣誓し、かつ出願日から2ヶ月以内に証明資料を提出しなければならず、出願人が出願日以降に知った場合には、当該事情を知った後の2ヶ月以内に新規性喪失の例外期間を要求する声明書を提出し、証明資料を添付しなければならない。なお、国務院専利行政部門(中国特許庁に相当)は必要に応じて、指定期限内での証明書類の提出を出願人に要求することができる。

条文等根拠:専利法第24条、専利法実施細則30条、専利審査指南1.1.6.3.1、専利審査指南1.1.6.3.2、専利審査指南1.1.6.3.3

 

※専利法:日本における特許法、意匠法、実用新案法に相当。以下「専利法」。

※実施細則:日本における施行規則に相当。以下「実施細則」。

※審査指南:日本における審査基準に相当。以下「専利指南」。

 

中国専利法 第24条

専利を出願する発明創造について、出願日前6ヶ月以内に以下の状況のいずれかがあった場合、その新規性を喪失しないものとする。

(一)中国政府が主催するまたは認める国際展示会で初めて展示された場合。

(二)規定の学術会議、あるいは技術会議上で初めて発表された場合。

(三)他者が出願者の同意を得ずに、その内容を漏洩した場合。

 

中国専利法実施細則 第30条

専利法第二十四条第(一)号に言う中国政府が承認した国際博覧会とは、国際博覧会条約に定められた、博覧会国際事務局に登録したあるいはそれに認められた国際博覧会を指す。

専利法第二十四条第(二)号に言う学術会議または技術会議とは、国務院の関係主管部門または全国的な学術団体が組織開催する学術会議または技術会議を指す。

専利を出願する発明創造に専利法第二十四条第(一)号または第(二)号に挙げた事情がある場合、出願人は専利出願の提出時に声明し、かつ出願日より起算して2ヶ月以内に、国際博覧会または学術会議、技術会議の主催者が発行した、関係発明創造が既に展示されまたは発表された事実、並びに展示または発表の期日を証明する書類を提出しなければならない。

専利を出願する発明創造に専利法第二十四条第(三)号に挙げた事情がある場合、国務院専利行政部門は必要に応じて、指定期限内での証明書類の提出を出願人に要求することが出来る。

出願人が本条第3項の規定に基づいて声明と証明書類を提出せず、あるいは本条第4項の規定に基づいて指定期限内に証明書類を提出しなかった場合、その出願は専利法第二十四条の規定を適用しない。

 

中国専利法審査指南 1.1.6.3.1

中国政府が主催する国際展覧会は、国務院・各部委員会が主催するもの、または国務院が許可し、その他の機構あるいは地方政府が開催する国際展覧会を含む。中国政府が承認する国際展覧会とは、国際展覧会条約に規定されたもので、国際展覧局で登録または認可された国際展覧会を指す。国際展覧会というのは、出展される展示品は主催国の製品のほか、外国からの製品も展示されなければならない。

意匠出願に係わる創作は、出願日以前の6ヶ月以内に、中国政府が主催しまたは承認した国際展覧会で初めて展示されており、出願人は新規性を喪失しない猶予期間を要求する場合、出願時に願書で声明し、かつ出願日より2ヶ月以内に証明資料を提出しなければならない。

国際展覧会の証明資料は展覧会の主催機構が発行するものでなければならない。証明資料に、展覧会の出展日、場所、展覧会の名称および当該発明創造が展示された出展日時、形式と内容を記載して、公印を捺印しなければならない。

 

中国専利法審査指南 1.1.6.3.2

認可された学術会議または技術会議とは、国務院の関連主管部門または全国的な学術団体組織が開催する学術会議または技術会議を指し、省以下、または国務院の各部委員会若しくは全国的な学術団体から委任を受けて、あるいはその名義により召集して開催する学術会議または技術会議を含まない。後者で言う会議での公開は、新規性の喪失につながるが、これらの会議そのものに守秘の約束がある場合は除く。

意匠出願する創作が出願日以前の6ヶ月以内に認可された学術会議または技術会議で初めて発表されており、出願人は新規性を喪失しない猶予期間を要求する場合、出願時に願書で声明し、かつ出願日より2ヶ月以内に証明資料を提出しなければならない。

学術会議および技術会議の証明資料は国務院の関連主管部門または会議を組織する全国的な学術団体が発行するものでなければならない。証明資料には会議の開催日、場所、会議の名称および当該発明創造の発表日、形式と内容を明記し、公印を捺印しなければならない。

 

専利法審査指南 1.1.6.3.3

他人は出願人の許可を得ずに、当該内容を漏らしたことにより公開されたことは、他人が明示または黙認された守秘の約束を守らずに発明創造の内容を公開すること、他人が威嚇、詐欺またはスパイ活動などの手段により発明者、あるいは出願人から創作の内容を得ることによって創作を公開することを含む。

意匠を出願する創作について、出願日以前の6ヶ月以内に、他人が出願人の許可を得ずに当該内容を漏らしたことを、出願人が出願日以前に知っているならば、意匠出願時に願書で声明し、出願日より2ヶ月以内に証明資料を提出しなければならない。出願人が出願日以降に知っている場合は、当該事情を知った後の2ヶ月以内に新規性を喪失しない猶予期間を要求する声明を提出し、証明資料を添付しなければならない。審査官は必要であると判断した際に、指定された期限以内に証明資料を提出するよう、出願人に要求して良いとする。

出願人が提出する他人による出願内容の漏洩に関する証明資料には、漏洩日、漏洩方法、漏洩内容を記載し、証明人が署名または捺印しなければならない。

出願人は新規性を喪失しない猶予期間を要求しているが、規定事項に合致しない場合、審査官は、新規性を喪失しない猶予期間を求めていないとみなす通知書を発行しなければならない。

日本と中国における意匠の新規性喪失の例外に関する比較

  日本 中国
新規性喪失の例外の有無
公知行為の限定の有無

(1)中国政府が主催するまたは認める国際展示会での初めての展示(2)規定の学術会議、あるいは技術会議上での初めての発表

 

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新興国等知財情報データバンク 調査対象国、地域における意匠の新規性喪失の例外については、下記のとおりである。

 

意匠の新規性喪失の例外に関する各国比較

6.新規性喪失

■本文書の作成者
日本技術貿易株式会社 IP総研
■本文書の作成時期

2015.03.03

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