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日本とベトナムにおける特許出願書類の比較
2015年11月13日
■概要
(本記事は、2020/4/2に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/18403/
主に日本で出願された特許出願を優先権の基礎としてベトナムに特許出願する際に、必要となる出願書類についてまとめた。日本とベトナムにおける特許出願について、出願書類と手続言語についての規定および優先権主張に関する要件を比較した。
■詳細及び留意点
日本における特許出願の出願書類
(1)出願書類
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・必要な図面
・要約書
条文等根拠:特許法第36条
日本特許法 第36条 特許出願
特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
一 特許出願人の氏名または名称および住所または居所
二 発明者の氏名および住所または居所
2 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書を添付しなければならない。
3 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 発明の名称
二 図面の簡単な説明
三 発明の詳細な説明
4 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。
二 その発明に関連する文献公知発明(第二十九条第一項第三号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知っているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。
5 第二項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。
6 第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
二 特許を受けようとする発明が明確であること。
三 請求項ごとの記載が簡潔であること。
四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。
7 第二項の要約書には、明細書、特許請求の範囲または図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。
(2)手続言語
日本語
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
英語により作成した外国語書面を願書に添付して出願することができる。その特許出願の日から1年2ヶ月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。
条文等根拠:特許法第36条の2、特許法施行規則第25条の4
日本特許法 第36条の2
特許を受けようとする者は、前条第二項の明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書に代えて、同条第三項から第六項までの規定により明細書または特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を経済産業省令で定める外国語で記載した書面および必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)並びに同条第七項の規定により要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。
2 前項の規定により外国語書面および外国語要約書面を願書に添付した特許出願(以下「外国語書面出願」という。)の出願人は、その特許出願の日から一年二月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、当該外国語書面出願が第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項もしくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願または第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願である場合にあっては、本文の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更または実用新案登録に基づく特許出願の日から二月以内に限り、外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出することができる。
3 前項に規定する期間内に外国語書面(図面を除く。)の同項に規定する翻訳文の提出がなかったときは、その特許出願は、取り下げられたものとみなす。
4 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第二項に規定する期間内に当該翻訳文を提出することができなかったことについて正当な理由があるときは、その理由がなくなった日から二月以内で同項に規定する期間の経過後一年以内に限り、同項に規定する外国語書面および外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。
5 前項の規定により提出された翻訳文は、第二項に規定する期間が満了する時に特許庁長官に提出されたものとみなす。
6 第二項に規定する外国語書面の翻訳文は前条第二項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲および図面と、第二項に規定する外国語要約書面の翻訳文は同条第二項の規定により願書に添付して提出した要約書とみなす。
日本特許法施行規則 第25条の4 外国語書面出願の言語
特許法第三十六条の二第一項 の経済産業省令で定める外国語は、英語とする。
(4)優先権主張手続
優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を記載した書類を出願と同時に提出し、最先の優先権主張日から1年4ヶ月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
ただし、日本国特許庁と一部の外国特許庁、機関との間では、優先権書類の電子的交換を実施しており、出願人が所定の手続を行うことで、パリ条約による優先権主張をした者が行う必要がある書面(紙)による優先権書類の提出を省略することが可能となっている。
条文等根拠:特許法第43条
日本特許法 第43条 パリ条約による優先権主張の手続
パリ条約第四条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨並びに最初に出願をしもしくは同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をしまたは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の国名および出願の年月日を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出しなければならない。
2 前項の規定による優先権の主張をした者は、最初に出願をし、もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし、もしくは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面、その出願の際の書類で明細書、特許請求の範囲もしくは実用新案登録請求の範囲および図面に相当するものの謄本またはこれらと同様な内容を有する公報もしくは証明書であってその同盟国の政府が発行したものを次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
一 当該最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により当該最初の出願とみなされた出願または同条A(2)の規定により当該最初の出願と認められた出願の日
二 その特許出願が第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
三 その特許出願が前項または次条第一項もしくは第二項の規定による他の優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
3 第一項の規定による優先権の主張をした者は、最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願または同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の番号を記載した書面を前項に規定する書類とともに特許庁長官に提出しなければならない。ただし、同項に規定する書類の提出前にその番号を知ることができないときは、当該書面に代えてその理由を記載した書面を提出し、かつ、その番号を知ったときは、遅滞なく、その番号を記載した書面を提出しなければならない。
4 第一項の規定による優先権の主張をした者が第二項に規定する期間内に同項に規定する書類を提出しないときは、当該優先権の主張は、その効力を失う。
5 第二項に規定する書類に記載されている事項を電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)によりパリ条約の同盟国の政府または工業所有権に関する国際機関との間で交換することができる場合として経済産業省令で定める場合において、第一項の規定による優先権の主張をした者が、第二項に規定する期間内に、出願の番号その他の当該事項を交換するために必要な事項として経済産業省令で定める事項を記載した書面を特許庁長官に提出したときは、前二項の規定の適用については、第二項に規定する書類を提出したものとみなす。
<参考URL>
(特許庁:優先権書類の提出省略について(優先権書類データの特許庁間における電子的交換について))
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shutsugan/yuusennkenn_syouryaku.htm
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ベトナムにおける特許出願の出願書類(パリルート)
(1)出願書類
知的財産法にて規定された以下の書面を提出する。
・願書
・保護を求める発明を特定する書類
(発明の説明書(日本における明細書)および要約書を含み、発明の説明書には必要な図面および特許請求の範囲が含まれる)
・委任状
条文等根拠:知的財産法第100条
ベトナム知的財産法 第100条 工業所有権登録出願に係る一般的要件
(1)工業所有権登録出願は、次の書類から構成される。
(a)所定の様式による願書
(b)第102条から第106条までの規定に従い保護を求めてクレームされた工業所有権を特定する書類、見本、情報
(c)出願が代理人を通じて行われるときは、委任状
(d)出願人が登録を受ける権利を他人から取得したときは、その権利を証明する書類
(dd)優先権を主張するときは、それを証明する書類
(e)所定の手数料および料金の領収書
(2)工業所有権登録出願書類および出願人と国家工業所有権庁との間の通信書類は、ベトナム語により作成しなければならない。ただし、次のものは例外として、他の言語により作成することができるが、国家工業所有権庁の請求があればベトナム語に翻訳しなければならない。
(a)委任状
(b)登録を受ける権利を証明する書類
(c)優先権を証明する書類
(d)当該出願を支持する他の書類
(3)工業所有権登録出願の優先権を証明する書類には、次のものを含める。
(a)受理官庁により認証された最初の出願書類の写し
(b)他人から取得したときは、優先権の譲渡証書
ベトナム知的財産法第102条 発明登録出願に係る要件
(1)発明登録出願において保護を求める発明を特定する書類は、発明の説明および保護の範囲から構成される発明の説明書並びに要約を含まなければならない。
(2)発明の説明は、次の条件を満たさなければならない。
(a)発明の内容について当該発明が当該技術の通常の知識を有する者により実施できる程度に開示すること
(b)発明の内容を更に明らかにするために図面が必要であるときは、当該図面を簡単に説明すること
(c)発明の新規性、進歩性および産業上の利用可能性を明らかにすること
(3)発明の保護の範囲は、その発明に対する権利の範囲を特定するのに必要かつ十分な技術的特徴の組合せの形態で表現するものとし、発明の説明書および図面に合致していなければならない。
(4)発明の要約は、発明の内容の本質的特徴を開示しなければならない。
(2)手続言語
ベトナム語
条文等根拠:知的財産法第100条(2)(上記)
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
不可
(4)優先権主張手続
優先権主張を出願と同時に行う必要がある。出願と同時もしくは出願から3ヶ月以内に優先権証明書を提出しなければならない。また、優先権証明書の表紙(certification)部分のベトナム語訳の提出が必要である。
条文等根拠:知的財産法第100条(1)(dd)(上記)、知的財産法第91条
ベトナム知的財産法 第91条 優先権の原則
(1)発明、工業意匠、または標章の登録出願人は、次の条件が完全に満たされるときは、同一主題の保護に係る最初の出願に基づいて優先権を主張することができる。
(a)最初の出願がベトナムにおいて、または優先権に関する規定を有し、ベトナム社会主義共和国が締約国である国際条約の締約国において、または当該規定の適用をベトナムと同意した国において行われたこと
(b)出願人が、ベトナムもしくは(a)にいう国の国民であるか、またはベトナムもしくは(a)にいう国における居住者であるかまたはそこに取引もしくは生産の事業所を有すること
(c)優先権の主張が出願書類に明確に記載されており、かつ、最初の出願書類の写しがその受理官庁により証明されていること
(d)ベトナムが締約国である国際条約に規定する期限内に出願が行われたこと
(2)単一の発明、工業意匠、または標章の出願において、出願人は、異なる先の出願に基づく複合優先権を主張することができる。ただし、当該先の出願および当該出願の対応する内容が表示されていることを条件とする。
(3)優先権を享受する工業所有権登録出願は、最初の出願日と同一の優先日を有するものとする。
日本とベトナムにおける特許出願書類の比較
日本 | ベトナム | |
手続言語 | 日本語 | ベトナム語 |
手続言語以外の明細書での出願日確保の可否 | 可(英語)
その特許出願の日から1年2ヶ月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出しなければならない。 |
不可
(留意点) 優先期間内にベトナム語で出願書類を作成し、出願を行わなければならない。 |
優先権主張
手続 |
優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を出願と同時に提出し、最先の優先権主張日から1年4ヶ月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
|
優先権主張を出願と同時に行う。出願と同時もしくは出願から3ヶ月以内に優先権証明書提出を提出しなければならない。優先権証明書の表紙(certification)部分のベトナム語訳の提出が必要である。 |
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新興国等知財情報データバンク 調査対象国・地域における特許出願書類については、下記のとおりである。
各国での手続き言語および日本語、英語明細書による出願可否に関する各国比較(※パリルートの場合)
国 | 手続言語 | 日本語明細書による出願可否 | 英語明細書による出願可否 |
JP | 日 | ○ | ○* |
BR | 葡 | △*1 | △*1 |
CN | 中 | × | × |
HK | 英or中 | × | ○ |
ID | 尼 | × | ○* |
IN | 英or印 | × | ○ |
KR | 韓 | × | ○* |
MY | 英or馬 | × | ○ |
PH | 英or比 | × | ○ |
RU | 露 | ○* | ○* |
SG | 英 | △*2 | ○ |
TH | 泰 | ○* | ○* |
TW | 中 | ○* | ○* |
VN | 越 | × | × |
○* :出願後に各国手続言語への翻訳文の補完が別途必要。
△*1:所定要件を満たせば規則上は認められる
△*2:規則上は認められる
日:日本語
葡:ポルトガル語
中:中国語
英:英語
尼:インドネシア語
印:ヒンディー語
韓:韓国語
馬:マレーシア語
比:フィリピン語
露:ロシア語
泰:タイ語
越:ベトナム語
PCTルートの有無
国 | PCTルートの有無 |
JP | 有 |
BR | 有 |
CN | 有 |
HK | (注) |
ID | 有 |
IN | 有 |
KR | 有 |
MY | 有 |
PH | 有 |
RU | 有 |
SG | 有 |
TH | 有 |
TW | 無 |
VN | 有 |
(注): 香港標準特許出願は、指定特許庁(中国特許庁もしくは英国特許庁(英国指定の欧州特許出願に関する欧州特許庁を含む))における特許出願(指定特許出願)の情報に基づき権利化を求めるものであり、指定特許出願である中国特許出願もしくは英国特許出願(英国指定の欧州特許出願を含む)はPCTルート有り。
■本文書の作成者
日本技術貿易株式会社 IP総研■本文書の作成時期
2015.03.03