アジア / 法令等 | 出願実務 | アーカイブ
日本と台湾における特許出願書類の比較
2015年10月30日
■概要
(本記事は、2021/6/3に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/20069/
主に日本で出願された特許出願を優先権の基礎として台湾に特許出願する際に、必要となる出願書類についてまとめた。日本と台湾における特許出願について、出願書類と手続言語についての規定および優先権主張に関する要件を比較した。
■詳細及び留意点
日本における特許出願の出願書類
(1)出願書類
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・必要な図面
・要約書
条文等根拠:特許法第36条
日本特許法 第36条 特許出願
特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
一 特許出願人の氏名または名称および住所または居所
二 発明者の氏名および住所または居所
2 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書を添付しなければならない。
3 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 発明の名称
二 図面の簡単な説明
三 発明の詳細な説明
4 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。
二 その発明に関連する文献公知発明(第二十九条第一項第三号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知っているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。
5 第二項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。
6 第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
二 特許を受けようとする発明が明確であること。
三 請求項ごとの記載が簡潔であること。
四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。
7 第二項の要約書には、明細書、特許請求の範囲または図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。
(2)手続言語
日本語
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
英語により作成した外国語書面を願書に添付して出願することができる。その特許出願の日から1年2ヶ月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。
条文等根拠:特許法第36条の2、特許法施行規則第25条の4
日本特許法 第36条の2
特許を受けようとする者は、前条第二項の明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書に代えて、同条第三項から第六項までの規定により明細書または特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を経済産業省令で定める外国語で記載した書面および必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)並びに同条第七項の規定により要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。
2 前項の規定により外国語書面および外国語要約書面を願書に添付した特許出願(以下「外国語書面出願」という。)の出願人は、その特許出願の日から一年二月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、当該外国語書面出願が第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項もしくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願または第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願である場合にあっては、本文の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更または実用新案登録に基づく特許出願の日から二月以内に限り、外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出することができる。
3 前項に規定する期間内に外国語書面(図面を除く。)の同項に規定する翻訳文の提出がなかったときは、その特許出願は、取り下げられたものとみなす。
4 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第二項に規定する期間内に当該翻訳文を提出することができなかったことについて正当な理由があるときは、その理由がなくなった日から二月以内で同項に規定する期間の経過後一年以内に限り、同項に規定する外国語書面および外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。
5 前項の規定により提出された翻訳文は、第二項に規定する期間が満了する時に特許庁長官に提出されたものとみなす。
6 第二項に規定する外国語書面の翻訳文は前条第二項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲および図面と、第二項に規定する外国語要約書面の翻訳文は同条第二項の規定により願書に添付して提出した要約書とみなす。
日本特許法施行規則 第25条の4 外国語書面出願の言語
特許法第三十六条の二第一項 の経済産業省令で定める外国語は、英語とする。
(4)優先権主張手続
優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を記載した書類を出願と同時に提出し、最先の優先権主張日から1年4ヶ月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
ただし、日本国特許庁と一部の外国特許庁、機関との間では、優先権書類の電子的交換を実施しており、出願人が所定の手続を行うことで、パリ条約による優先権主張をした者が行う必要がある書面(紙)による優先権書類の提出を省略することが可能となっている。
条文等根拠:特許法第43条
日本特許法 第43条 パリ条約による優先権主張の手続
パリ条約第四条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨並びに最初に出願をしもしくは同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をしまたは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の国名および出願の年月日を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出しなければならない。
2 前項の規定による優先権の主張をした者は、最初に出願をし、もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし、もしくは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面、その出願の際の書類で明細書、特許請求の範囲もしくは実用新案登録請求の範囲および図面に相当するものの謄本またはこれらと同様な内容を有する公報もしくは証明書であってその同盟国の政府が発行したものを次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
一 当該最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により当該最初の出願とみなされた出願または同条A(2)の規定により当該最初の出願と認められた出願の日
二 その特許出願が第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
三 その特許出願が前項または次条第一項もしくは第二項の規定による他の優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
3 第一項の規定による優先権の主張をした者は、最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願または同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の番号を記載した書面を前項に規定する書類とともに特許庁長官に提出しなければならない。ただし、同項に規定する書類の提出前にその番号を知ることができないときは、当該書面に代えてその理由を記載した書面を提出し、かつ、その番号を知ったときは、遅滞なく、その番号を記載した書面を提出しなければならない。
4 第一項の規定による優先権の主張をした者が第二項に規定する期間内に同項に規定する書類を提出しないときは、当該優先権の主張は、その効力を失う。
5 第二項に規定する書類に記載されている事項を電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)によりパリ条約の同盟国の政府または工業所有権に関する国際機関との間で交換することができる場合として経済産業省令で定める場合において、第一項の規定による優先権の主張をした者が、第二項に規定する期間内に、出願の番号その他の当該事項を交換するために必要な事項として経済産業省令で定める事項を記載した書面を特許庁長官に提出したときは、前二項の規定の適用については、第二項に規定する書類を提出したものとみなす。
<参考URL>
(特許庁:優先権書類の提出省略について(優先権書類データの特許庁間における電子的交換について))
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shutsugan/yuusennkenn_syouryaku.htm
——————————————————————————–
台湾における特許出願の出願書類
(1)出願書類
専利法および専利法施行細則にて規定された以下の書面を提出する。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・要約
・必要な図面
・委任状(出願日から4ヶ月以内(2ヶ月延長可能))
条文等根拠:専利法第25条
台湾専利法 第25条
特許出願は、特許出願権者が願書、明細書、特許請求の範囲、要約および必要な図面を備えて、特許主務官庁にこれを提出する。
特許出願は、願書、明細書、特許請求の範囲および必要な図面が全て揃った日を出願日とする。
出願時に、明細書、特許請求の範囲および必要な図面の中国語による翻訳文を提出せず、外国語で提出し、かつ特許主務官庁が指定する期間内に中国語による翻訳文が補正された場合、当該外国語書面が提出された日を出願日とする。
前項に言う指定期間を過ぎて中国語による翻訳文を補正しなかった場合、出願を受理しない。ただし、処分前に補正した場合、補正した日を出願日とし、当該外国語書面は提出されなかったと見なす。
(2)手続言語
中国語(繁体字)
条文等根拠:専利法25条(上記)、専利法施行細則規則3
台湾専利法施行細則 規則3
科学用語の中国語翻訳が国立翻訳館(NationalInstituteforCompilationandTranslation)によって行われ、かつ、発表されている場合は、その公定訳を使用しなければならない。ただし、当該公定訳がないときまたは特許庁が必要とみなすときは、特許庁は申請人に対し、中国語で表示した用語に原語を付記するよう要求することができる。
申請書およびそれに関連する全ての書類は、中国語によるものでなければならない。証拠書類が外国語で作成されている場合において、特許庁が必要と考えるときは、特許庁は申請人に対し、その全文または抜粋の中国語翻訳文を提出するよう要求することができる。
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
可
ただし、出願から4ヶ月以内(2ヶ月延長可能)に中国語による翻訳文を補完。
条文等根拠:専利法第25条(上記)
(4)優先権主張手続
優先権主張を出願と同時に行う必要がある。優先権証明書を最先優先日から16ヶ月以内に提出しなければならない。優先権証明書の提出は、原本を提出するか、または、日本国特許庁と台湾智慧財産局との間での優先権書類データの電子的交換が利用可能である。
<参考URL>
(日本国特許庁と台湾智慧財産局との間での優先権書類データの電子的交換)
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/tetuzuki/t_tokkyo/shutsugan/yuusennkenn_syouryaku.htm
条文等根拠:専利法第28条、第29条、専利法施行細則規則22
台湾専利法 第28条
出願人が、同一の発明について、中華民国と相互に優先権を承認する外国またはWTO加盟国において最初に法律に則って特許出願し、かつ最初の特許出願日後の12ヶ月以内に、台湾に特許出願をする場合、優先権を主張することができる。
出願人が1出願において2以上の優先権を主張する場合、前項期間の計算は最先の優先日を基準とする。
外国の出願人がWTO加盟国の国民ではなく、かつその所属する国と台湾とが相互に優先権を承認していない場合、WTO加盟国または互恵関係にある国の領域内に住所または営業所を有していれば、第1項の規定により優先権を主張することができる。
優先権を主張した場合、その特許要件の審査は優先日を基準とする。
台湾専利法 第29条
前条の規定により優先権を主張しようとする者は、特許出願と同時に、下記の内容を申し出なければならない。
1.最初の出願の出願日
2.該出願を受理した国またはWTO加盟国。
3.最初の出願の出願番号
出願人は、最先優先日から起算して16ヶ月以内に、前項の国またはWTO加盟国が受理を証明した特許出願書類を提出しなければならない。
第1項第1号、第2号または前項の規定に違反する場合は、優先権を主張しなかったと見なす。
出願人が故意によらず特許出願と同時に優先権を主張しなかった場合、または前項規定により主張しなかったと見なされた場合は、最先優先日から起算して16ヶ月以内に優先権主張の回復を請求することができ、かつ出願料金の納付および第1項および第2項に規定する行為を補足して行う。
台湾専利法施行細則 規則22
法律第28条第2段落の規定による、対応する出願が受理されたことを証明する外国政府による書類は、その原本でなければならず、写真複写で代替することは認めない。
(5)その他の書類
(委任状)
台湾内に住所または営業所がない者は、特許出願および特許に関する事項の処理について、代理人に委任してこれを行わなければならない。
条文等根拠:専利法第11条、専利法施行細則規則8
台湾専利法 第11条
出願人は、特許出願および特許に関する事項の処理について、代理人に委任してこれを行うことができる。
台湾内に住所または営業所がない者は、特許出願および特許に関する事項の処理について、代理人に委任してこれを行わなければならない。
代理人は、法令に別段の規定がある場合を除き、弁理士でなければならない。
弁理士の資格および管理は別途法律で定める。
台湾専利法施行細則 規則8
申請人が特許弁護士を選任したときは、特許庁に対し、特許弁護士に付与した権限の範囲および送達受領宛先を記載した委任状を提出しなければならない。
特許弁護士の数は3以下とする。
2以上の特許弁護士が選任されているときは、各々が申請人を代理することができる。
選任が前段落の規定に反して行われた場合であっても、特許弁護士は、各人が申請人の代理で手続をすることができる。
特許弁護士は、本人の承諾を得て、他の者を復代理人に選任することができる。
権限または代理人を変更する場合、特許庁に書面による届出がなされていない限り、特許庁はその変更を承認しない。
特許代理人の宛先または印鑑の変更については、特許庁に訂正の届出をしなければならない。
申請人は、第三者を受領者に指名する委託書を提出することができる。
日本と台湾における特許出願書類の比較
日本 | 台湾 | |
手続言語 | 日本語 | 中国語(繁体字) |
手続言語以外の明細書での出願日確保の可否 | 可(英語)
その特許出願の日から1年2ヶ月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出しなければならない。 |
可
出願から4ヶ月以内(2ヶ月延長可)に中国語による翻訳文を補完する。 |
優先権主張
手続 |
優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を出願と同時に提出し、最先の優先権主張日から1年4ヶ月以内に特許庁長官に提出しなければならない。 | 優先権主張を出願と同時に行う。優先権証明書を最先優先日から16ヶ月以内に提出。優先権証明書の提出は、原本の提出か、日本国特許庁と台湾智慧財産局との間での優先権書類データの電子的交換を利用可能。 |
—————————————————————————–
新興国等知財情報データバンク 調査対象国・地域における特許出願書類については、下記のとおりである。
各国での手続き言語および日本語、英語明細書による出願可否に関する各国比較(※パリルートの場合)
国 | 手続言語 | 日本語明細書による出願可否 | 英語明細書による出願可否 |
JP | 日 | ○ | ○* |
BR | 葡 | △*1 | △*1 |
CN | 中 | × | × |
HK | 英or中 | × | ○ |
ID | 尼 | × | ○* |
IN | 英or印 | × | ○ |
KR | 韓 | × | ○* |
MY | 英or馬 | × | ○ |
PH | 英or比 | × | ○ |
RU | 露 | ○* | ○* |
SG | 英 | △*2 | ○ |
TH | 泰 | ○* | ○* |
TW | 中 | ○* | ○* |
VN | 越 | × | × |
○* :出願後に各国手続言語への翻訳文の補完が別途必要。
△*1:所定要件を満たせば規則上は認められる
△*2:規則上は認められる
日:日本語
葡:ポルトガル語
中:中国語
英:英語
尼:インドネシア語
印:ヒンディー語
韓:韓国語
馬:マレーシア語
比:フィリピン語
露:ロシア語
泰:タイ語
越:ベトナム語
PCTルートの有無
国 | PCTルートの有無 |
JP | 有 |
BR | 有 |
CN | 有 |
HK | (注) |
ID | 有 |
IN | 有 |
KR | 有 |
MY | 有 |
PH | 有 |
RU | 有 |
SG | 有 |
TH | 有 |
TW | 無 |
VN | 有 |
(注): 香港標準特許出願は、指定特許庁(中国特許庁もしくは英国特許庁(英国指定の欧州特許出願に関する欧州特許庁を含む))における特許出願(指定特許出願)の情報に基づき権利化を求めるものであり、指定特許出願である中国特許出願もしくは英国特許出願(英国指定の欧州特許出願を含む)はPCTルート有り。
■本文書の作成者
日本技術貿易株式会社 IP総研■本文書の作成時期
2015.03.03