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日本とロシアにおける特許出願書類の比較
2015年09月18日
■概要
(本記事は、2019/9/17に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17715/
主に日本で出願された特許出願を優先権の基礎としてロシアに特許出願する際に、必要となる出願書類についてまとめた。日本とロシアにおける特許出願について、出願書類と手続言語についての規定および優先権主張に関する要件を比較した。
■詳細及び留意点
日本における特許出願の出願書類
(1)出願書類
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・必要な図面
・要約書
条文等根拠:特許法第36条
日本特許法 第36条 特許出願
特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
一 特許出願人の氏名または名称および住所または居所
二 発明者の氏名および住所または居所
2 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書を添付しなければならない。
3 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 発明の名称
二 図面の簡単な説明
三 発明の詳細な説明
4 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。
二 その発明に関連する文献公知発明(第二十九条第一項第三号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知っているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。
5 第二項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。
6 第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
二 特許を受けようとする発明が明確であること。
三 請求項ごとの記載が簡潔であること。
四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。
7 第二項の要約書には、明細書、特許請求の範囲または図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。
(2)手続言語
日本語
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
英語により作成した外国語書面を願書に添付して出願することができる。その特許出願の日から1年2ヶ月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。
条文等根拠:特許法第36条の2、特許法施行規則第25条の4
日本特許法 第36条の2
特許を受けようとする者は、前条第二項の明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書に代えて、同条第三項から第六項までの規定により明細書または特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を経済産業省令で定める外国語で記載した書面および必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)ならびに同条第七項の規定により要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。
2 前項の規定により外国語書面および外国語要約書面を願書に添付した特許出願(以下「外国語書面出願」という。)の出願人は、その特許出願の日から一年二月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、当該外国語書面出願が第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項もしくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願または第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願である場合にあっては、本文の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更または実用新案登録に基づく特許出願の日から二月以内に限り、外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出することができる。
3 前項に規定する期間内に外国語書面(図面を除く。)の同項に規定する翻訳文の提出がなかったときは、その特許出願は、取り下げられたものとみなす。
4 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第二項に規定する期間内に当該翻訳文を提出することができなかったことについて正当な理由があるときは、その理由がなくなった日から二月以内で同項に規定する期間の経過後一年以内に限り、同項に規定する外国語書面および外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。
5 前項の規定により提出された翻訳文は、第二項に規定する期間が満了する時に特許庁長官に提出されたものとみなす。
6 第二項に規定する外国語書面の翻訳文は前条第二項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲および図面と、第二項に規定する外国語要約書面の翻訳文は同条第二項の規定により願書に添付して提出した要約書とみなす。
日本特許法施行規則 第25条の4 外国語書面出願の言語
特許法第三十六条の二第一項 の経済産業省令で定める外国語は、英語とする。
(4)優先権主張手続
優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を記載した書類を出願と同時に提出し、最先の優先権主張日から1年4ヶ月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
ただし、日本国特許庁と一部の外国特許庁、機関との間では、優先権書類の電子的交換を実施しており、出願人が所定の手続を行うことで、パリ条約による優先権主張をした者が行う必要がある書面(紙)による優先権書類の提出を省略することが可能となっている。
条文等根拠:特許法第43条
日本特許法 第43条 パリ条約による優先権主張の手続
パリ条約第四条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨ならびに最初に出願をしもしくは同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をしまたは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の国名および出願の年月日を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出しなければならない。
2 前項の規定による優先権の主張をした者は、最初に出願をし、もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし、もしくは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面、その出願の際の書類で明細書、特許請求の範囲もしくは実用新案登録請求の範囲および図面に相当するものの謄本またはこれらと同様な内容を有する公報もしくは証明書であってその同盟国の政府が発行したものを次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
一 当該最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により当該最初の出願とみなされた出願または同条A(2)の規定により当該最初の出願と認められた出願の日
二 その特許出願が第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
三 その特許出願が前項または次条第一項もしくは第二項の規定による他の優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
3 第一項の規定による優先権の主張をした者は、最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願または同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の番号を記載した書面を前項に規定する書類とともに特許庁長官に提出しなければならない。ただし、同項に規定する書類の提出前にその番号を知ることができないときは、当該書面に代えてその理由を記載した書面を提出し、かつ、その番号を知ったときは、遅滞なく、その番号を記載した書面を提出しなければならない。
4 第一項の規定による優先権の主張をした者が第二項に規定する期間内に同項に規定する書類を提出しないときは、当該優先権の主張は、その効力を失う。
5 第二項に規定する書類に記載されている事項を電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)によりパリ条約の同盟国の政府または工業所有権に関する国際機関との間で交換することができる場合として経済産業省令で定める場合において、第一項の規定による優先権の主張をした者が、第二項に規定する期間内に、出願の番号その他の当該事項を交換するために必要な事項として経済産業省令で定める事項を記載した書面を特許庁長官に提出したときは、前二項の規定の適用については、第二項に規定する書類を提出したものとみなす。
<参考URL>
(特許庁:優先権書類の提出省略について(優先権書類データの特許庁間における電子的交換について))
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shutsugan/yuusennkenn_syouryaku.htm
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ロシアにおける特許出願の出願書類(パリルート)
(1)出願書類
民法(第4法典第7編第72章第5節)および特許関連行政規則にて規定された以下の書面を提出する。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・必要な図面
・要約書
・委任状(行政規則6.2)
条文等根拠:民法第1374条、第1375条、特許関連行政規則6.2
ロシア民法 第1374条 発明、実用新案または意匠の特許付与を求める出願の提出
発明、実用新案または意匠の特許付与を求める出願の提出
1 発明、実用新案または意匠の特許付与を求める出願は、本法に基づき特許を取得する資格がある者(「出願人」)により、連邦の知的財産当局に提出されるものとする。
2 発明、実用新案または意匠に対する特許付与を求める請求はロシア語で記載されるものとする。その他の出願書類はロシア語または他言語で記載されるものとする。出願書類が他言語で記載される場合は、ロシア語による翻訳文が出願に添付されるものとする。
3 発明、実用新案または意匠に係る特許付与を求める請求は、出願人により、および、弁理士またはその他の代理人を介して請求を提出する場合には、出願人または出願を提出する出願人の代理人により署名されものとする。
4 発明、実用新案または意匠の特許付与を求める出願書類の要件は、本法に基づいて、知的財産分野における規範的かつ法的規整を所轄する連邦執行当局により決定されるものとする。
5 所定の特許手数料の納付を確認する文書、または、特許手数料の未納もしくは減額または延納の根拠を確認する文書は、発明、実用新案または意匠の特許付与を求める出願に添付されるものとする。
ロシア民法 第1375条 発明の特許付与を求める出願
1 発明の特許付与を求める出願(「発明出願」)は、単一の発明または単一の発明概念を形成するよう結び付けられた一群の発明と関連するものとする(「発明の単一性の要件」)。
2 発明出願は次に掲げるものを含むものとする。
1)発明者の氏名および特許を請求する者の名称、並びに、各人の法律上または実際の住所を記載した、特許付与を求める請求
2)発明を実施するために十分詳細に、発明を開示する発明の明細
3)発明の本質的特徴を記載し、かつ、発明の明細により十分に裏付けられた特許請求の範囲
4)発明の本質を理解するために必要であれば、図面および他の資料
5)要約
3 発明出願の提出日は、連邦の知的財産当局による、特許付与の請求、発明の明細、並びに明細中に言及されている場合は図面を含む出願の受理日、および、前記書類のすべてが同時に提出されなかった場合は最終の文書の受理日であるものとする。
(2)手続言語
ロシア語
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
可(民法第1374条2)。出願時にロシア語翻訳の添付がない場合は、翻訳文の提出を求める通知の発送日から3ヶ月以内に提出しなければならない。(行政規則12.5)
条文等根拠:民法第1374条(上記)、特許関連行政規則12.5
(4)優先権主張手続
優先権主張を出願と同時に行う必要がある。優先権証明書を優先権主張日から16か月以内に提出しなければならない。
条文等根拠:民法第1381条、特許関連行政規則10.3(2)
ロシア民法 第1381条 発明、実用新案または意匠の優先権の証明
発明、実用新案または意匠の優先権の証明
1 発明、実用新案または意匠についての優先権は、連邦の知的財産当局に対する、発明、実用新案または意匠の出願の提出日に証明されなければならない。
ロシア民法 第1382 条 条約による発明、実用新案または意匠の優先権 1
1 発明、実用新案または意匠についての優先権は、工業所有権の保護に関するパリ条約の同盟国における発明、実用新案または意匠に係る最初の出願日により決定されるものとする(「条約による優先権」)。ただし、連邦の知的財産当局に対して、発明または実用新案の出願は上記の優先日から12 月以内に、および、意匠の出願の出願は上記の優先日から6 月以内に提出されたことを条件とする。出願人の支配が及ばない事情により、所定の期間内に条約優先権の主張を伴う出願が提出できなかった場合、当該期間は、2 月を超えない範囲内で連邦の知的財産当局がこれを延長することができる。
日本とロシアにおける特許出願書類の比較
日本 | ロシア | |
手続言語 | 日本語 | ロシア語 |
手続言語以外の明細書での出願日確保の可否 | 可(英語)
その特許出願の日から1年2ヶ月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出しなければならない。 |
可
出願時にロシア語翻訳の添付がない場合は、翻訳文の提出を求める通知の発送日から3ヶ月以内に提出しなければならない |
優先権主張
手続 |
優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を出願と同時に提出し、最先の優先権主張日から1年4ヶ月以内に特許庁長官に提出しなければならない。 | 優先権主張を出願と同時に行う。優先権証明書を優先権主張日から16か月以内に提出。
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新興国等知財情報データバンク 調査対象国・地域における特許出願書類については、下記のとおりである。
各国での手続き言語および日本語、英語明細書による出願可否に関する各国比較(※パリルートの場合)
国 | 手続言語 | 日本語明細書による出願可否 | 英語明細書による出願可否 |
JP | 日 | ○ | ○* |
BR | 葡 | △*1 | △*1 |
CN | 中 | × | × |
HK | 英or中 | × | ○ |
ID | 尼 | × | ○* |
IN | 英or印 | × | ○ |
KR | 韓 | × | ○* |
MY | 英or馬 | × | ○ |
PH | 英or比 | × | ○ |
RU | 露 | ○* | ○* |
SG | 英 | △*2 | ○ |
TH | 泰 | ○* | ○* |
TW | 中 | ○* | ○* |
VN | 越 | × |
× |
○* :出願後に各国手続言語への翻訳文の補完が別途必要。
△*1:所定要件を満たせば規則上は認められる
△*2:規則上は認められる
日:日本語
葡:ポルトガル語
中:中国語
英:英語
尼:インドネシア語
印:ヒンディー語
韓:韓国語
馬:マレーシア語
比:フィリピン語
露:ロシア語
泰:タイ語
越:ベトナム語
PCTルートの有無
国 | PCTルートの有無 |
JP | 有 |
BR | 有 |
CN | 有 |
HK | (注) |
ID | 有 |
IN | 有 |
KR | 有 |
MY | 有 |
PH | 有 |
RU | 有 |
SG | 有 |
TH | 有 |
TW | 無 |
VN | 有 |
(注): 香港標準特許出願は、指定特許庁(中国特許庁もしくは英国特許庁(英国指定の欧州特許出願に関する欧州特許庁を含む))における特許出願(指定特許出願)の情報に基づき権利化を求めるものであり、指定特許出願である中国特許出願もしくは英国特許出願(英国指定の欧州特許出願を含む)はPCTルート有り。
■本文書の作成者
日本技術貿易株式会社 IP総研■本文書の作成時期
2015.03.03