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日本とマレーシアにおける特許出願書類の比較
2015年08月21日
■概要
(本記事は、2023/1/10に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/27492/
主に日本で出願された特許出願を優先権の基礎としてマレーシアに特許出願する際に、必要となる出願書類についてまとめた。日本とマレーシアにおける特許出願について、出願書類と手続言語についての規定および優先権主張に関する要件を比較した。
■詳細及び留意点
日本における特許出願の出願書類
(1)出願書類
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・必要な図面
・要約書
条文等根拠:特許法第36条
日本特許法 第36条 特許出願
特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
一 特許出願人の氏名または名称および住所または居所
二 発明者の氏名および住所または居所
2 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書を添付しなければならない。
3 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 発明の名称
二 図面の簡単な説明
三 発明の詳細な説明
4 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。
二 その発明に関連する文献公知発明(第二十九条第一項第三号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知っているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。
5 第二項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。
6 第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
二 特許を受けようとする発明が明確であること。
三 請求項ごとの記載が簡潔であること。
四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。
7 第二項の要約書には、明細書、特許請求の範囲または図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。
(2)手続言語
日本語
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
英語により作成した外国語書面を願書に添付して出願することができる。その特許出願の日から1年2ヶ月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。
条文等根拠:特許法第36条の2、特許法施行規則第25条の4
日本特許法 第36条の2
特許を受けようとする者は、前条第二項の明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書に代えて、同条第三項から第六項までの規定により明細書または特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を経済産業省令で定める外国語で記載した書面および必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)ならびに同条第七項の規定により要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。
2 前項の規定により外国語書面および外国語要約書面を願書に添付した特許出願(以下「外国語書面出願」という。)の出願人は、その特許出願の日から一年二月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、当該外国語書面出願が第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項もしくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願または第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願である場合にあっては、本文の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更または実用新案登録に基づく特許出願の日から二月以内に限り、外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出することができる。
3 前項に規定する期間内に外国語書面(図面を除く。)の同項に規定する翻訳文の提出がなかったときは、その特許出願は、取り下げられたものとみなす。
4 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第二項に規定する期間内に当該翻訳文を提出することができなかったことについて正当な理由があるときは、その理由がなくなった日から二月以内で同項に規定する期間の経過後一年以内に限り、同項に規定する外国語書面および外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。
5 前項の規定により提出された翻訳文は、第二項に規定する期間が満了する時に特許庁長官に提出されたものとみなす。
6 第二項に規定する外国語書面の翻訳文は前条第二項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲および図面と、第二項に規定する外国語要約書面の翻訳文は同条第二項の規定により願書に添付して提出した要約書とみなす。
日本特許法施行規則 第25条の4 外国語書面出願の言語
特許法第三十六条の二第一項 の経済産業省令で定める外国語は、英語とする。
(4)優先権主張手続
優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を記載した書類を出願と同時に提出し、最先の優先権主張日から1年4ヶ月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
ただし、日本国特許庁と一部の外国特許庁、機関との間では、優先権書類の電子的交換を実施しており、出願人が所定の手続を行うことで、パリ条約による優先権主張をした者が行う必要がある書面(紙)による優先権書類の提出を省略することが可能となっている。
条文等根拠:特許法第43条
日本特許法 第43条 パリ条約による優先権主張の手続
パリ条約第四条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨ならびに最初に出願をしもしくは同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をしまたは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の国名および出願の年月日を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出しなければならない。
2 前項の規定による優先権の主張をした者は、最初に出願をし、もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし、もしくは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面、その出願の際の書類で明細書、特許請求の範囲もしくは実用新案登録請求の範囲および図面に相当するものの謄本またはこれらと同様な内容を有する公報もしくは証明書であってその同盟国の政府が発行したものを次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
一 当該最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により当該最初の出願とみなされた出願または同条A(2)の規定により当該最初の出願と認められた出願の日
二 その特許出願が第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
三 その特許出願が前項または次条第一項もしくは第二項の規定による他の優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
3 第一項の規定による優先権の主張をした者は、最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願または同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の番号を記載した書面を前項に規定する書類とともに特許庁長官に提出しなければならない。ただし、同項に規定する書類の提出前にその番号を知ることができないときは、当該書面に代えてその理由を記載した書面を提出し、かつ、その番号を知ったときは、遅滞なく、その番号を記載した書面を提出しなければならない。
4 第一項の規定による優先権の主張をした者が第二項に規定する期間内に同項に規定する書類を提出しないときは、当該優先権の主張は、その効力を失う。
5 第二項に規定する書類に記載されている事項を電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)によりパリ条約の同盟国の政府または工業所有権に関する国際機関との間で交換することができる場合として経済産業省令で定める場合において、第一項の規定による優先権の主張をした者が、第二項に規定する期間内に、出願の番号その他の当該事項を交換するために必要な事項として経済産業省令で定める事項を記載した書面を特許庁長官に提出したときは、前二項の規定の適用については、第二項に規定する書類を提出したものとみなす。
<参考URL>
(特許庁:優先権書類の提出省略について(優先権書類データの特許庁間における電子的交換について))
https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/yusen/das/index.html
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マレーシアにおける特許出願の出願書類(パリルート)
(1)出願書類
特許法および特許規則にて規定された以下の書面を提出する。
・願書(様式1)
・明細書
・特許請求の範囲
・必要な図面
・要約
・委任状(様式17)
・陳述書(様式22)(出願人が発明者でない場合)
条文等根拠:特許法第28条(1)、特許規則第5条(1) 、第7条、10条
マレーシア特許法 第28条 出願日
(1)登録官は、出願書類受領の日を出願日として記録するものとする。
ただし、出願書類が次に掲げる事項を含んでいることを条件とする。
(a)出願人の名称および宛先
(b)発明者の名称および宛先
(c)明細書
(d)1または複数のクレーム、および
(e)出願書類の受領時に所定の手数料が納付されていることを示すもの
マレーシア特許規則 第5条 特許付与出願
(1)特許付与の出願を行うには、次のものを提出しなければならない。
(a)願書
(b) 明細書
(c)1または複数のクレーム
(d)必要な場合は、1 または複数の図面、および
(e)要約
マレーシア特許規則 第7条 特許付与請求
(1)特許付与請求は、所定の手数料を納付し、様式1 により登録官に対して行うものとする。
(2)発明の名称には、発明の対象が明確かつ具体的に表示されなければならない。
(2)手続言語
マレー語または英語
条文等根拠:特許規則第18条(11)
マレーシア特許規則 第18条 物的要件
(11)願書および付属の陳述書その他の書類は、マレーシア国語または英語で作成し提出しなければならない。
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
不可
(4)優先権主張手続
優先権証明書およびその翻訳文は、登録官から要求があった場合に提出が必要。提出期限は、登録官による要求の日から3ヶ月以内。
条文等根拠:特許法第27条、特許規則第21条、22条
マレーシア特許法 第27条 優先権
(1)出願は、何れかの国際条約による優先権主張の申立であって、その申立を含む出願の出願日直前12月の期間内に、出願人またはその前権利者によって、当該国際条約の締約国においてまたはその締約国に関して行われた1または2以上の先の国内出願、地域出願若しくは国際出願に関するものを含むことができる。[法律A863:s.14による改正]
(1A)(1)に記載した12月の期間は、第82条の規定に基づく延長を受けることができない。[法律A863:s.14による挿入]
(2)出願が(1)に基づく申立を含んでいるときは、登録官は出願人に対し、先の出願の謄本であって、出願先の当局によって、または、先の出願が国際条約に基づいてなされた国際出願である場合は、世界知的所有権機関の国際事務局によって、正しいものとして認証されたものを、所定の期間内に提出するよう要求することができる。
(3)(1)にいう申立の効果は、同項にいう条約が定めているところによる。[法律A863:s.14による改正]
(4)本条またはそれに付属する規則の要件の何れかが遵守されていないときは、(1)にいう申立は、無効とみなす。
マレーシア特許規則 第21条 優先権を主張する申立
(1)特許法第27 条(1)に基づく優先権主張の申立においては、次の事項を記載しなければならない。
(a)各先願の日付
(b)(2)の規定に従うことを条件として、各先願の出願番号
(c)(3)の規定に従うことを条件として、各先願に付された国際特許分類記号(ある場合)
(d)各先願が提出された国の名称または、先願が地域出願または国際出願であるときは、当該出願に関して指定された1 もしくは複数の国の名称、および
(e)先願が地域出願または国際出願である場合は、それが提出された官庁の名称
(2)(1)にいう申立の時に、先願の番号が不明な場合は、その番号は、当該優先権申立を含む出願がなされた日から3 月以内に通知されるものとする。
(3)国際特許分類記号が先願に付されない場合または(1)に述べる申立の時に未だ割り当てられていない場合は、出願人は申立中でこの事実を陳述するものとする。
(4)(1)の規定に従い複数の先願の優先権が主張される場合、それら複数の先願に関する情報を1 個の申立において提供することができる。
マレーシア特許規則 第22条 先願の謄本
(1)特許法第27 条(2)の規定が適用になる場合、出願人は、登録官による要求の日から3 月以内に、各先願の認証謄本を提出しなければならない。
(2)(1)にいう認証謄本が他の出願において既に提出されている場合は、出願人はかかる他の出願に言及することができる。
(3) (1)にいう先願がマレーシア国語または英語以外の言語で作成されている場合は、登録官は、出願人に対して、登録官による要求の日から3 月以内に、当該先願のマレーシア国語または英語による翻訳文を提出するよう出願人に求めることができる。
(5)その他の書類
出願人が発明者でない場合は、出願人が当該特許を受ける権利を有することを正当化する旨の陳述書を添付しなければならない。また、出願人が代理人を通じて手続きを行う場合は、委任状を提出する。
条文等根拠:特許規則第10条、45B条
マレーシア特許規則 第10条 出願人の特許を受ける権利
(1)出願人が発明者である場合は、願書においてその事実を述べなければならない。
(2)出願人が発明者でない場合は、出願人が当該特許を受ける権利を有することを正当化す
る旨の陳述書を添付しなければならない。
(3)(1)および(2)の適用を受けるには、当該請求は様式22 によりなされなければならず、また様式1 および様式17 とともに提出されなければならない。
マレーシア特許規則 第45B条 手続における代理
(1)特許法または特許法に基づき制定される規則において別段の定めがなされない限り、または登録官が別段の指示をしない限り、何人も、特許登録局における手続を特許代理人に委任することができ、委任を受けた特許代理人は、本人に代わって手続に出席し、書類を提出し、また書類に署名することができる。
(2)特許代理人の任命および変更は、委任者が署名した様式17 を登録官に提出して行わなければならない。
日本とマレーシアにおける特許出願書類の比較
日本 | マレーシア | |
手続言語 | 日本語 | マレー語または英語 |
手続言語以外の明細書での出願日確保の可否 | 可(英語)
その特許出願の日から1年2ヶ月以内に外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出しなければならない。 |
不可
優先期間内に英語(又はマレー語)で出願書類作成しなければならない。また、陳述書や委任状の手配も必要。 |
優先権主張
手続 |
優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を出願と同時に提出し、最先の優先権主張日から1年4ヶ月以内に特許庁長官に提出しなければならない。 | 優先権証明書及びその翻訳文は、登録官から要求があった場合に提出が必要。提出期限は、登録官による要求の日から3ヶ月以内。 |
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新興国等知財情報データバンク 調査対象国・地域における特許出願書類については、下記のとおりである。
各国での手続き言語および日本語、英語明細書による出願可否に関する各国比較(※パリルートの場合)
国 | 手続言語 | 日本語明細書による出願可否 | 英語明細書による出願可否 |
JP | 日 | ○ | ○* |
BR | 葡 | △*1 | △*1 |
CN | 中 | × | × |
HK | 英or中 | × | ○ |
ID | 尼 | × | ○* |
IN | 英or印 | × | ○ |
KR | 韓 | × | ○* |
MY | 英or馬 | × | ○ |
PH | 英or比 | × | ○ |
RU | 露 | ○* | ○* |
SG | 英 | △*2 | ○ |
TH | 泰 | ○* | ○* |
TW | 中 | ○* | ○* |
VN | 越 | × | × |
○* :出願後に各国手続言語への翻訳文の補完が別途必要。
△*1:所定要件を満たせば規則上は認められる
△*2:規則上は認められる
日:日本語
葡:ポルトガル語
中:中国語
英:英語
尼:インドネシア語
印:ヒンディー語
韓:韓国語
馬:マレー語
比:フィリピン語
露:ロシア語
泰:タイ語
越:ベトナム語
PCTルートの有無
国 | PCTルートの有無 |
JP | 有 |
BR | 有 |
CN | 有 |
HK | (注) |
ID | 有 |
IN | 有 |
KR | 有 |
MY | 有 |
PH | 有 |
RU | 有 |
SG | 有 |
TH | 有 |
TW | 無 |
VN | 有 |
(注): 香港標準特許出願は、指定特許庁(中国特許庁もしくは英国特許庁(英国指定の欧州特許出願に関する欧州特許庁を含む))における特許出願(指定特許出願)の情報に基づき権利化を求めるものであり、指定特許出願である中国特許出願もしくは英国特許出願(英国指定の欧州特許出願を含む)はPCTルート有り。
■本文書の作成者
日本技術貿易株式会社 IP総研■本文書の作成時期
2015.03.03