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日本と中国における特許出願書類の比較
2015年06月26日
■概要
(本記事は、2022/7/19に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/24124/
主に日本で出願された特許出願を優先権の基礎として中国に特許出願する際に、必要となる出願書類についてまとめた。日本と中国における特許出願について、出願書類と手続言語についての規定および優先権主張に関する要件を比較した。
■詳細及び留意点
日本における特許出願の出願書類
(1)出願書類
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・必要な図面
・要約書
条文等根拠:特許法第36条
日本特許法 第36条 特許出願
特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
一 特許出願人の氏名または名称および住所または居所
二 発明者の氏名および住所または居所
2 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書を添付しなければならない。
3 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 発明の名称
二 図面の簡単な説明
三 発明の詳細な説明
4 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。
二 その発明に関連する文献公知発明(第二十九条第一項第三号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知っているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。
5 第二項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。
6 第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
二 特許を受けようとする発明が明確であること。
三 請求項ごとの記載が簡潔であること。
四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。
7 第二項の要約書には、明細書、特許請求の範囲または図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。
(2)手続言語
日本語
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
英語により作成した外国語書面を願書に添付して出願することができる。その特許出願の日から1年2ヶ月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。
条文等根拠:特許法第36条の2、特許法施行規則第25条の4
日本特許法 第36条の2
特許を受けようとする者は、前条第二項の明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書に代えて、同条第三項から第六項までの規定により明細書または特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を経済産業省令で定める外国語で記載した書面および必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)ならびに同条第七項の規定により要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。
2 前項の規定により外国語書面および外国語要約書面を願書に添付した特許出願(以下「外国語書面出願」という。)の出願人は、その特許出願の日から一年二月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、当該外国語書面出願が第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項もしくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願または第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願である場合にあっては、本文の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更または実用新案登録に基づく特許出願の日から二月以内に限り、外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出することができる。
3 前項に規定する期間内に外国語書面(図面を除く。)の同項に規定する翻訳文の提出がなかったときは、その特許出願は、取り下げられたものとみなす。
4 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第二項に規定する期間内に当該翻訳文を提出することができなかったことについて正当な理由があるときは、その理由がなくなった日から二月以内で同項に規定する期間の経過後一年以内に限り、同項に規定する外国語書面および外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。
5 前項の規定により提出された翻訳文は、第二項に規定する期間が満了する時に特許庁長官に提出されたものとみなす。
6 第二項に規定する外国語書面の翻訳文は前条第二項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲および図面と、第二項に規定する外国語要約書面の翻訳文は同条第二項の規定により願書に添付して提出した要約書とみなす。
日本特許法施行規則 第25条の4 外国語書面出願の言語
特許法第三十六条の二第一項 の経済産業省令で定める外国語は、英語とする。
(4)優先権主張手続
優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を記載した書類を出願と同時に提出し、最先の優先権主張日から1年4ヶ月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
ただし、日本国特許庁と一部の外国特許庁、機関との間では、優先権書類の電子的交換を実施しており、出願人が所定の手続を行うことで、パリ条約による優先権主張をした者が行う必要がある書面(紙)による優先権書類の提出を省略することが可能となっている。
条文等根拠:特許法第43条
日本特許法 第43条 パリ条約による優先権主張の手続
パリ条約第四条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨ならびに最初に出願をしもしくは同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をしまたは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の国名および出願の年月日を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出しなければならない。
2 前項の規定による優先権の主張をした者は、最初に出願をし、もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし、もしくは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面、その出願の際の書類で明細書、特許請求の範囲もしくは実用新案登録請求の範囲および図面に相当するものの謄本またはこれらと同様な内容を有する公報もしくは証明書であってその同盟国の政府が発行したものを次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
一 当該最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により当該最初の出願とみなされた出願または同条A(2)の規定により当該最初の出願と認められた出願の日
二 その特許出願が第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
三 その特許出願が前項または次条第一項もしくは第二項の規定による他の優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
3 第一項の規定による優先権の主張をした者は、最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願または同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の番号を記載した書面を前項に規定する書類とともに特許庁長官に提出しなければならない。ただし、同項に規定する書類の提出前にその番号を知ることができないときは、当該書面に代えてその理由を記載した書面を提出し、かつ、その番号を知ったときは、遅滞なく、その番号を記載した書面を提出しなければならない。
4 第一項の規定による優先権の主張をした者が第二項に規定する期間内に同項に規定する書類を提出しないときは、当該優先権の主張は、その効力を失う。
5 第二項に規定する書類に記載されている事項を電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)によりパリ条約の同盟国の政府または工業所有権に関する国際機関との間で交換することができる場合として経済産業省令で定める場合において、第一項の規定による優先権の主張をした者が、第二項に規定する期間内に、出願の番号その他の当該事項を交換するために必要な事項として経済産業省令で定める事項を記載した書面を特許庁長官に提出したときは、前二項の規定の適用については、第二項に規定する書類を提出したものとみなす。
<参考URL>
(特許庁:優先権書類の提出省略について(優先権書類データの特許庁間における電子的交換について))
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shutsugan/yuusennkenn_syouryaku.htm
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中国における特許出願の出願書類(パリルート)
(1)出願書類
専利法および実施細則にて規定された以下の文書を提出する。
・願書
・説明書およびその要約
・権利要求書
・図面(必要な場合)
・優先権書類
・委任状
条文等根拠:専利法第26条,専利法実施細則第15条
中国専利法 第26条
発明または実用新案の特許の出願には、願書、説明書およびその要約、権利要求書等の文書を提出する。
願書には発明または実用新案の名称、発明者の氏名、出願者の氏名または名称、住所およびその他の事項を明記する。
説明書では、発明または実用新案に対し、その所属技術分野の技術者が実現できることを基準とした明確かつ完全な説明を行い、必要時には図面を添付する。要約は発明または実用新案の技術要点を簡単に説明する。
権利要求書は説明書を根拠とし、特許保護請求の範囲について明確かつ簡潔に要求を説明する。
遺伝資源に依存して完成した発明創造について、出願者は特許出願書類において当該遺伝資源の直接的由来と原始的由来を説明する。原始的由来を説明できない場合、出願者はその理由を陳述する。
中国専利法実施細則 第15条
書面によって特許を出願する場合は、国務院特許行政部門に出願書類1式2部を提出しなければならない。
国務院特許行政部門が規定するその他の形式で特許を出願する場合は、規定の要求に合致しなければならない。
申請人が特許代理機関に委任して国務院特許行政部門に特許を出願しまたはその他の特許事務を行う場合は、同時に委任の権限を明記した委任状を提出しなければならない。出願人が2人以上で且つ特許代理機関に委任していない場合は、願書に別途言明されている場合を除き、願書に明記されている第一出願人を代表人とする。
(2)手続言語
中国語
中国専利法実施細則 第3条
専利法および本細則に基づいて提出する各種の書類は中国語を使用しなければならない。国に統一的に規定された科学技術用語がある場合には、規範用語を採用しなければならない。外国の人名、地名、科学技術用語であって、統一的な中国語訳が無いものについては、その原文を注記しなければならない。
専利法および本細則に基づいて提出される各種の証明書および証明書類が外国語によるものであって、国務院特許行政部門は必要と認める場合、指定の期限内に中国語訳文を追加添付するよう当事者に要求することが出来る。期限が過ぎても追加添付されなかった場合には、当該証明書と証明書類が提出されていなかったとみなす。
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
不可
(4)優先権主張手続
優先権主張を出願と同時に行う。優先権証明書を出願から3か月以内に提出。ただし、日本での特許出願を基礎とする中国特許出願の場合、デジタルアクセスサービス(DAS)を利用して日本国特許庁から優先権書類の電子データを取得するよう中国特許庁に対して請求することにより、優先権書類の紙による提出を省略することが可能となる。
条文等根拠:専利法第30条
中国専利法 第30条
出願者が優先権を主張する場合、出願時に書面で声明を出し、かつ3カ月以内に最初に提出した特許出願書類の副本を提出しなければならない。書面で声明を出さない、または期限を過ぎても特許出願書類の副本を提出しない場合は、優先権を主張していないものとみなされる。
<参考URL>
(特許庁:日本国を第一国としてDASを利用する場合の手続について)
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shutsugan/das_ver1_h25.htm
(5)その他の書類
(委任状)
出願人は専利代理機構に委任して、中国国家知識産権局に専利出願を行う場合、委任状の提出が求められる。
ただし、出願ごとに委任状を準備する手間を省くため、専利局に総委任状を交付し、その後、書面による専利出願を提出するときに、専利代理委任状の原本を提出せず、総委任状のコピーのみを提出し、電子ファイルによる専利出願を提出するときに、願書に総委任状の番号を明記し、電子ファイル形式の総委任状および総委任状のコピーを提出しないことも可能である。
条文等根拠:専利審査指南1.1.6.1.2,専利審査指南5.11.5.1
中国専利審査指南 1.1.6.1.2 委任状
出願人は専利代理機構に委任して、専利局に専利出願およびその他専利事務を行う場合、委任状を提出しなければならない。委任状は専利局で制定された標準フォームを使い、委任権限、発明創造の名称、専利代理機構の名称、専利代理人の氏名を明記するものとし、かつ願書に書いてある内容と一致させなければならない。専利出願の出願番号が確定された後に委任状を提出する場合、専利出願番号を明記しなければならない。
出願人が個人である場合、委任状には出願人が署名または捺印しなければならない。出願人が機構である場合、機構の公印を捺印するものとし、同時にその法定代表者の署名または捺印を付しても良いとする。出願人が2名いる場合、出願人全員が署名または捺印しなければならない。また、委任状に専利代理機構が公印を捺印しなければならない。
出願人は専利代理機構に委任した場合、専利局に総委任状を交付して良いとする。専利局は規定に合致する総委任状を受取った後に、総委任状に番号を付け、専利代理機構に通知しなければならない。総委任状を交付した場合、専利出願を提出する時に、専利代理委任状の原本を提出せず、総委任状のコピーを提出して良いとする。同時に発明創造の名称、専利代理機構の名称、専利代理人の氏名と専利局から付与された総委任状番号を明記し、専利代理機構の公印を捺印する。
委任状は規定事項に合致しない場合、審査官は補正通知書を出し、専利代理機構に指定された期限以内に補正するよう通知しなければならない。先頭署名した出願人が中国大陸の機構または個人であり、期限内に答弁しない、または補正をしても規定事項に合致しない場合、審査官は双方当事者に対して、専利代理機構に委任していないものと見なす旨の通知書を発行しなければならない。先頭署名した出願人が外国人、外国企業または外国のその他の組織であり、期限内に答弁しない場合、審査官は取下げとみなすとの通知書を発行しなければならない。補正しても規定事項に合致しない場合、当該専利出願は却下されなければならない。先頭署名した出願人が香港、マカオまたは台湾地区の個人、企業またはその他の組織であり、期限内に答弁しない場合、審査官は取下げとみなす通知書を発行しなければならない。補正しても規定事項に合致しない場合、当該専利出願は却下されなければならない。
中国専利審査指南 5.11.5.1
出願人が専利代理機構に、電子ファイル形式での専利出願やその他専利関連事務の代行を委任する場合、電子ファイル形式の専利代理委任状および専利代理委任状の紙書類の原本を提出しなければならない。出願人が専利代理機構に、費用の軽減・延長手続の代行を委任する場合、電子ファイル形式の専利代理委任状の中で宣言を行わなければならない。
すでに専利局で総委任状を提出しており、そして専利出願時は願書に総委任状の番号を明記している場合、もしくは記載事項の変更時に申告書に総委任状の番号を明記している場合には、電子ファイル形式の総委任状および総委任状のコピーを提出する必要がない。
日本と中国における特許出願書類の比較
日本 | 中国 | |
手続言語 | 日本語 | 中国語(簡体字) |
手続言語以外の明細書での出願日確保の可否 | 可(英語)
その特許出願の日から1年2ヶ月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出しなければならない。 |
不可 |
優先権主張
手続 |
優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を出願と同時に提出し、最先の優先権主張日から1年4ヶ月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
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優先権主張を出願と同時に行う。優先権証明書を出願から3ヶ月以内に提出。
(日本特許出願を基礎とする場合には、特許庁間DAS利用可)
(留意点) 日本特許出願を優先権主張の基礎として中国出願する場合、優先期間内に中国語で出願書類作成し出願を行わなければならない。 |
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新興国等知財情報データバンク 調査対象国・地域における特許出願書類については、下記のとおりである。
各国での手続き言語および日本語、英語明細書による出願可否に関する各国比較
(※パリルートの場合)
○* :出願後に各国手続言語への翻訳文の補完が別途必要。
△*1:所定要件を満たせば規則上は認められる
△*2:規則上は認められる
日:日本語
葡:ポルトガル語
中:中国語
英:英語
尼:インドネシア語
印:ヒンディー語
韓:韓国語
馬:マレーシア語
比:フィリピン語
露:ロシア語
泰:タイ語
越:ベトナム語
PCTルートの有無
(注): 香港標準特許出願は、指定特許庁(中国特許庁もしくは英国特許庁(英国指定の欧州特許出願に関する欧州特許庁を含む))における特許出願(指定特許出願)の情報に基づき権利化を求めるものであり、指定特許出願である中国特許出願もしくは英国特許出願(英国指定の欧州特許出願を含む)はPCTルート有り。
■本文書の作成者
日本技術貿易株式会社 IP総研■本文書の作成時期
2015.03.03