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日本とフィリピンの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
2015年08月28日
■概要
(本記事は、2023/12/7に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/37833/
日本とフィリピンの実体審査においては、拒絶理由通知への応答期間が異なる。具体的には、実体審査において60日(在外者でない場合)または3ヶ月(在外者の場合)の応答期間が設定されている日本とは異なり、フィリピンにおける応答期間は通常2ヶ月である。
また、日本とフィリピンのいずれにおいても応答期間の延長は可能であるが、延長可能な応答期間の長さが異なる。
■詳細及び留意点
日本の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長
(1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、意見書および補正書の提出期間は60日
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、意見書および補正書の提出期間は3ヶ月
条文等根拠:特許法第50条、第17条の2第1項、方式審査便覧04.10
日本特許法 第50条 拒絶理由の通知
審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号または第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあっては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
日本特許法 第17条の2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面の補正
特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
一 第五十条(第百五十九条第二項(第百七十四条第一項において準用する場合を含む。)および第百六十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
二 拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。
三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。
日本方式審査便覧 04.10
1 手続をする者が在外者でない場合
(3)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、特許および実用新案に関しては60日、意匠および商標に関しては40日とする。ただし、手続をする者またはその代理人が、別表に掲げる地に居住する場合においては、特許および実用新案に関しては60日を75日と、意匠および商標に関しては40日を55日とする。
ア 意見書
・特50条{特67条の4、159条2項〔特174条1項〕、特163条2項、意19条、50条3項〔意57条1項〕}
・商15条の2{商55条の2第1項〔商60条の2第2項(商68条5項)、商68条4項〕、商65条の5、68条2項、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)附則12条}
2 手続をする者が在外者である場合
(3)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、3月とする。ただし、代理人だけでこれらの書類等を作成することができると認める場合には、1 (3)の期間とする。
ア 意見書
イ 答弁書
ウ 特許法第39条第6項※5、意匠法第9条第4項または商標法第8条第4項の規定に基づく指令書に応答する書面
エ 特許法第134条第4項もしくは実用新案法第39条第4項の規定により審尋を受けた者または特許法第194条第1項の規定により書類その他の物件の提出を求められた者が提出する実験成績証明書、指定商品の説明書等、ひな形・見本、特許の分割出願に関する説明書等
オ 命令による手続補正書(実用新案法第6条の2および第14条の3の規定によるものに限る。)
(2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、最大1ヶ月まで延長可能
ただし、拒絶理由通知書で示された引用文献に記載された発明との対比実験を行うとの理由(理由(1))を付して応答期間の延長を請求する必要がある
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、最大3ヶ月まで延長可能
ただし、拒絶理由通知書や意見書・手続補正書等の手続書類の翻訳を行うとの理由または上記理由(1)を付して応答期間の延長を請求する必要がある
条文等根拠:特許法第5条第1項、方式審査便覧04.10
日本特許法 第5条 期間の延長等
特許庁長官、審判長または審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求によりまたは職権で、その期間を延長することができる。
2 審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求によりまたは職権で、その期日を変更することができる。
日本方式審査便覧 01.10
1 手続をする者が在外者でない場合
(16)特許法第50条の規定による意見書または同法第134条第4項の規定による審尋に関しての回答書等の提出についての指定期間は、「拒絶理由通知書で示された引用文献に記載された発明との対比実験のため」という合理的理由がある場合、1月に限り、請求により延長することができる。
2 手続をする者が在外者である場合
(11)特許法第50条の規定による意見書または同法第134条第4項の規定による審尋に関しての回答書等の提出についての指定期間は、合理的理由がある場合に限り、請求により延長することができる。合理的理由と延長できる期間は以下のとおりとする。ただし、同法第67条の4に係る拒絶理由通知については、下記ア 対比実験のため)の理由による延長請求は認められない。
ア 「拒絶理由通知書で示された引用文献に記載された発明との対比実験のため」という理由により1月単位で1回のみ期間延長請求をすることができる。
イ 「手続書類の翻訳のため」という理由により1月単位で3回まで期間延長請求することができる。
ウ アおよびイの組み合わせによる期間延長請求は、合計3回までとする。
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フィリピンの実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間延長
(1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・応答期間は通常2ヶ月
条文等根拠:実体審査手続 マニュアル第VI章10.1
(2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・最大2回まで延長が可能。ただし、当初の応答期間と延長期間の合計期間が6ヶ月を超えてはならない。すなわち、応答期間は通常2ヶ月であるので、通常は4ヶ月の延長が認められる。
条文等根拠:発明に関する規則929(a)および(b)
フィリピン発明に関する規則 929 期限までに応答しなかった場合の出願の取下
(a)出願人が本規則に規定する期間内に出願を遂行しなかった場合は、当該出願は、取り下げられたものとみなされる。
(b)応答期間は、適切かつ十分な理由がある場合に限り、かつ、指定された合理的な期間にわたり、延長することができる。当該延長の請求は、出願人による応答の期限が到来する日以前にしなければならない。審査官は、最大2回まで延長を認めることができるが、ただし、応答書を提出するために認められた当初期間を含む合計期間は、当該応答を求める庁の処分書の郵送日から6ヶ月を超えないものとする。
日本とフィリピンの特許における実体審査の拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
日本 | フィリピン | |
応答期間 | 60日(ただし在外者は3ヶ月) | 通常2ヶ月 |
応答期間の
延長の可否 |
条件付きで可 | 可 |
延長可能期間 | 最大1ヶ月(在外者は最大3ヶ月) | 通常4ヶ月 |
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新興国等知財情報データバンク 調査対象国・地域における拒絶理由通知への応答期間の延長の可否等については、下記のとおりである。
特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する各国比較
国 | 応答期間 | 応答期間の延長の可否 | 延長可能期間 | 延長のための庁費用の要否 |
JP | 60日 | 可*1 | 最大1ヶ月 | 要 |
BR | 90日 | 不可 | - | - |
CN | 4ヶ月*2 | 可 | 最大2ヶ月 | 要 |
HK*3 | - | - | - | - |
ID | 通常3ヶ月 | 可 | 審査官の裁量による | 不要 |
IN | *4 | 不可*5 | - | - |
KR | 通常2ヶ月 | 可 | 最大4ヶ月 | 要 |
MY | 2ヶ月 | 可 | 最大6ヶ月 | 要 |
PH | 通常2ヶ月 | 可 | 通常4ヶ月 | 要 |
RU | 2ヶ月*6/3ヶ月 | 可 | 最大10ヶ月 | 要 |
SG | 5ヶ月/3ヶ月*7 | 不可 | - | - |
TH | 90日 | 可 | 最大120日 | 不要 |
TW | 3ヶ月 | 可 | 最大3ヶ月 | 無 |
VN | 2ヶ月 | 可 | 最大2ヶ月 | 要 |
*1(JP):延長の条件は上述の詳細を参照
*2(CN):再度の拒絶理由通知書の場合は2ヶ月
*3(HK):実体審査制度なし
*4(IN):アクセプタンス期限(最初の拒絶理由通知から12ヶ月)が設定される
*5(IN):ヒアリングの申請を行うことで係属状態は維持可能
*6(RU):旧法適用出願(2014年10月1日より前に出願されたもの)が2ヶ月、改正法適用出願(2014年10月1日以降に出願されたもの)が3ヶ月。
*7(SG):シンガポール特許庁に審査を請求した場合、応答期間は5月。シンガポール特許庁に補充審査を請求した場合、応答期間は3ヶ月。
■本文書の作成者
日本技術貿易株式会社 IP総研■本文書の作成時期
2015.03.06