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日本とインドの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
2015年07月17日
■概要
(本記事は、2019/10/31に更新しています。)URL:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17841/
日本とインドの実体審査では、拒絶理由通知への応答に関する規定が異なっている。具体的には、応答期間が定まっている日本とは異なり、インドでは最初の拒絶理由通知書への応答期間は定められないが、代わりに特許付与可能な状態にするまでの期間(アクセプタンス期間)が定められる。そして、アクセプタンス期間を過ぎると、その特許出願は放棄されたものとみなされる。
■詳細及び留意点
日本の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長
(1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、意見書および補正書の提出期間は60日
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、意見書および補正書の提出期間は3ヶ月
条文等根拠:特許法第50条、第17条の2第1項、方式審査便覧04.10
日本特許法 第50条 拒絶理由の通知
審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号または第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあっては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
日本特許法 第17条の2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面の補正
特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
一 第五十条(第百五十九条第二項(第百七十四条第一項において準用する場合を含む。)および第百六十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
二 拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。
三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。
日本方式審査便覧 04.10
1 手続をする者が在外者でない場合
(3)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、特許および実用新案に関しては60日、意匠および商標に関しては40日とする。ただし、手続をする者またはその代理人が、別表に掲げる地に居住する場合においては、特許および実用新案に関しては60日を75日と、意匠および商標に関しては40日を55日とする。
ア 意見書
・特50条{特67条の4、159条2項〔特174条1項〕、特163条2項、意19条、50条3項〔意57条1項〕}
・商15条の2{商55条の2第1項〔商60条の2第2項(商68条5項)、商68条4項〕、商65条の5、68条2項、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)附則12条}
2 手続をする者が在外者である場合
(3)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、3月とする。ただし、代理人だけでこれらの書類等を作成することができると認める場合には、1 (3)の期間とする。
ア 意見書
イ 答弁書
ウ 特許法第39条第6項※5、意匠法第9条第4項または商標法第8条第4項の規定に基づく指令書に応答する書面
エ 特許法第134条第4項もしくは実用新案法第39条第4項の規定により審尋を受けた者または特許法第194条第1項の規定により書類その他の物件の提出を求められた者が提出する実験成績証明書、指定商品の説明書等、ひな形・見本、特許の分割出願に関する説明書等
オ 命令による手続補正書(実用新案法第6条の2および第14条の3の規定によるものに限る。)
(2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、最大1ヶ月まで延長可能
ただし、拒絶理由通知書で示された引用文献に記載された発明との対比実験を行うとの理由(理由(1))を付して応答期間の延長を請求する必要がある
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、最大3ヶ月まで延長可能
ただし、拒絶理由通知書や意見書・手続補正書等の手続書類の翻訳を行うとの理由または上記理由(1)を付して応答期間の延長を請求する必要がある
条文等根拠:特許法第5条第1項、方式審査便覧04.10
日本特許法 第5条 期間の延長等
特許庁長官、審判長または審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求によりまたは職権で、その期間を延長することができる。
2 審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求によりまたは職権で、その期日を変更することができる。
日本方式審査便覧 01.10
1 手続をする者が在外者でない場合
(16)特許法第50条の規定による意見書または同法第134条第4項の規定による審尋に関しての回答書等の提出についての指定期間は、「拒絶理由通知書で示された引用文献に記載された発明との対比実験のため」という合理的理由がある場合、1月に限り、請求により延長することができる。
2 手続をする者が在外者である場合
(11)特許法第50条の規定による意見書または同法第134条第4項の規定による審尋に関しての回答書等の提出についての指定期間は、合理的理由がある場合に限り、請求により延長することができる。合理的理由と延長できる期間は以下のとおりとする。ただし、同法第67条の4に係る拒絶理由通知については、下記ア 対比実験のため)の理由による延長請求は認められない。
ア 「拒絶理由通知書で示された引用文献に記載された発明との対比実験のため」という理由により1月単位で1回のみ期間延長請求をすることができる。
イ 「手続書類の翻訳のため」という理由により1月単位で3回まで期間延長請求することができる。
ウ アおよびイの組み合わせによる期間延長請求は、合計3回までとする。
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インドの実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間延長
(1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・応答期間についての規定はない
・ただしアクセプタンス期間(最初の拒絶理由通知から12ヶ月)内に特許付与可能な状態とする必要がある
・そのため、拒絶理由通知への応答はアクセプタンス期間内に行う必要がある
・アクセプタンス期間内に答弁や補正が行われた場合、審査官は再度審査しなければならない
・2回目以降の拒絶理由通知に対しても応答はアクセプタンス期間内に行う必要がある
・なお、出願人の居所(在外、在内)に関わらず、アクセプタンス期間は12ヶ月である
条文等根拠:特許法第21条、規則24B(4)条、特許庁の特許実務および手続の手引08.04 第7パラグラフ
インド特許法 第21条 出願を特許付与の状態にする期間
(1)特許出願については、長官が願書もしくは完全明細書またはそれに係る他の書類についての最初の異論陳述書を出願人に送付した日から所定の期間内に、出願人が当該出願に関して完全明細書関連かもしくはその他の事項かを問わず、本法によりまたは基づいて出願人に課された全ての要件を遵守しない限り、これを放棄したものとみなす。
(説明)手続の係属中に、願書もしくは明細書、または条約出願もしくはインドを指定して特許協力条約に基づいてされる出願の場合においては出願の一部として提出された何らかの書類を長官が出願人に返還したときは、出願人がそれを再提出しない限り、かつ、再提出するまで、または出願人が自己の制御を超える理由により当該書類を再提出できなかったことを長官の納得するまで証明しない限り、かつ、証明するまで、当該要件を遵守したものとはみなさない。
インド特許規則 24B(4) 出願の審査
(4)第21条に基づいて出願を特許付与のために整備する期間は、要件を遵守すべき旨の異論の最初の陳述書が出願人に発せられた日から12月とする。
インド特許庁の特許実務および手続の手引 08.04 第7パラグラフ
出願人が12月以内に当該書類を再提出した場合には、審査官は当該出願を新たに審査しなければならない。当該審査において、法の定める要件が満たされていると認められた場合、特許権は付与される。
(2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・アクセプタンス期間は延長することができない
ただし、所定期間内にヒアリング(聴聞)の申請を行うことによって、アクセプタンス期間経過後も出願の係属を維持できる。なお、ヒアリングの申請はアクセプタンス期間満了の10日前までに行う必要がある。
条文等根拠:特許規則第138条、特許法第80条、特許法第14条
インド特許規則138条 所定の期間を延長する権限
(1)規則24B、規則55(4)および規則80(1A)に別段の規定がある場合を除き、本規則に基づく何らかの行為をするためまたは何らかの手続をとるために本規則に規定される期間は、長官がそうすることを適切と認めるとき、かつ、長官が指示することがある条件により、長官はこれを1月延長することができる。
(2)本規則に基づいてされる期間延長の請求は、所定の期間の満了前にしなければならない。
インド特許法第80条 長官による裁量権の行使
本法に基づいて手続当事者を長官が聴聞すべき旨または当該当事者に対して聴聞を受ける機会を与えるべき旨を定めた本法の規定を害することなく、長官は、如何なる特許出願人または明細書補正の申請人(所定の期間内に請求の場合に限る。)に対しても、本法によってまたはそれに基づいて付与された長官の何らかの裁量権をその者に不利に行使する前に、聴聞を受ける機会を与えなければならない。ただし、聴聞を希望する当事者は、当該手続について指定された期限の満了の少なくとも10日前に、長官に対して当該聴聞の請求をしなければならない。
インド特許法第14条 審査官の報告の長官による取扱い
特許出願について長官の受領した審査官の報告が、出願人にとって不利であるかまたは本法もしくは本法に基づいて制定された規則の規定を遵守する上で願書、明細書もしくは他の書類の何らかの補正を必要とするときは、長官は、以下に掲げる規定にしたがって当該出願の処分に着手する前に、異論の要旨を可能な限り早期に当該出願人に通知し、かつ、所定の期間内に当該出願人の請求があるときは、その者に聴聞を受ける機会を与えなければならない。
日本とインドの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
日本 | インド | |
応答期間 | 60日(ただし在外者は3ヶ月) | 規定なし
(アクセプタンス期間(12ヶ月)内に特許付与可能状態にする必要有) |
応答期間の
延長の可否 |
条件付きで可 | 不可
(ヒアリングの申請により、 出願の係属状態は維持可能) |
延長可能期間 | 最大1ヶ月(在外者は最大3ヶ月) | - |
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新興国等知財情報データバンク 調査対象国・地域における拒絶理由通知への応答期間の延長の可否等については、下記のとおりである。
特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する各国比較
国 | 応答期間 | 応答期間の延長の可否 | 延長可能期間 | 延長のための庁費用の要否 |
JP | 60日 | 可*1 | 最大1ヶ月 | 要 |
BR | 90日 | 不可 | - | - |
CN | 4ヶ月*2 | 可 | 最大2ヶ月 | 要 |
HK*3 | - | - | - | - |
ID | 通常3ヶ月 | 可 | 審査官の裁量による | 不要 |
IN | *4 | 不可*5 | - | - |
KR | 通常2ヶ月 | 可 | 最大4ヶ月 | 要 |
MY | 2ヶ月 | 可 | 最大6ヶ月 | 要 |
PH | 通常2ヶ月 | 可 | 通常4ヶ月 | 要 |
RU | 2ヶ月*6/3ヶ月 | 可 | 最大10ヶ月 | 要 |
SG | 5ヶ月/3ヶ月*7 | 不可 | - | - |
TH | 90日 | 可 | 最大120日 | 不要 |
TW | 3ヶ月 | 可 | 最大3ヶ月 | 無 |
VN | 2ヶ月 | 可 | 最大2ヶ月 | 要 |
*1(JP):延長の条件は上述の詳細を参照
*2(CN):再度の拒絶理由通知書の場合は2ヶ月
*3(HK):実体審査制度なし
*4(IN):アクセプタンス期限(最初の拒絶理由通知から12ヶ月)が設定される
*5(IN):ヒアリングの申請を行うことで係属状態は維持可能
*6(RU):旧法適用出願(2014年10月1日より前に出願されたもの)が2ヶ月、改正法適用出願(2014年10月1日以降に出願されたもの)が3ヶ月。
*7(SG):シンガポール特許庁に審査を請求した場合、応答期間は5月。シンガポール特許庁に補充審査を請求した場合、応答期間は3ヶ月。
■本文書の作成者
日本技術貿易株式会社 IP総研■本文書の作成時期
2015.03.06