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韓国における商標権に基づく権利行使の留意点

2015年03月31日

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■概要
商標権は、他人の使用を排除することができる独占権であり、商標権に基づいて侵害差止め、または予防請求、損害賠償請求、および信用回復請求などの権利行使が可能である。しかし、第三者による商標の使用が商標権の効力の及ばない範囲に該当する場合、商標権が商標法以外に依拠した第三者の権利と接触する場合、第三者の使用によって先使用権が認められる場合には、商標権に基づいた権利行使が制限される。また、韓国の商標判例によると、無効となることが自明であると判断される商標権に基づく権利行使は許容されないと判示されている。
■詳細及び留意点

【詳細】

 商標権者は、指定商品に関してその登録商標を使用する権利を独占し、自身の権利を侵害した者、または侵害する恐れのある者に対してその侵害の差止めまたは予防を請求することができ(商標法第65条)、自身の商標権を故意または過失により侵害した者に対して、その侵害により自身が受けた損害の賠償を請求することができる(商標法第66条の2)。

 

 また、故意または過失により商標権を侵害することで商標権者の業務上の信用を失墜させた者に対しては、損害賠償に代わる、あるいは損害賠償と共に商標権者の業務上の信用回復のために必要な措置を請求することができる(商標法第69条)。しかし、このような商標権に基づく権利行使は、以下のような場合に制限されるため、留意する必要がある。

 

(1)商標権の効力が及ばない範囲に該当する場合

(韓国商標法第51条1項)

 商標権は、次の各号のいずれかに該当する場合には、その効力が及ばない。

1. 自己の氏名・名称または商号・肖像・署名・印章または著名な雅名・芸名・筆名とこれらの著名な略称を普通に使用する方法で表示する商標

2. 登録商標の指定商品と同一または類似の商品の普通名称・産地・品質・原材料・効能・用途・数量・形状(包装の形状を含む。)・価格または生産方法・加工方法・使用方法及び時期を普通に使用する方法で表示する商標

2の2. 第9条第2項の規定による立体的形状からなる登録商標において、その立体的形状が誰の業務に関連した商品を表示するのか識別することができない場合に、登録商標の指定商品と同一であり、または類似した商品に使用する登録商標の立体的形状と同一であり、または類似した形状からなる商標

3. 登録商標の指定商品と同一または類似の商品に対して慣用する商標と顕著な地理的名称若しくはその略語または地図からなる商標

4. 登録商標の指定商品またはその指定商品の包装の機能を確保するのに不可欠な形状、色彩、色彩の組合、音または匂いからなる商標

 

(韓国商標法第51条第3項)

 ただし、上記第1号に該当する場合、商標権の設定登録があった後に不正競争の目的で自身の氏名・名称または商号・肖像・署名・印章または著名な雅号・芸名・筆名とこれらの著名な略称を使用する場合には、商標権の権利行使が制限されない。

 

(2) 商標権が他の法律に起因する他人の権利と抵触する場合

(韓国商標法第53条第1項)

 商標権者・専用使用権者または通常使用権者は、その登録商標を使用する場合に、その使用状態に従いその商標登録出願日前に出願された他人の特許権・実用新案権・意匠権またはその商標登録出願日前に発生した他人の著作権と抵触される場合には、指定商品のうち抵触される指定商品に対する商標の使用は特許権者・実用新案権者・意匠権者または著作権者の同意を得なければその登録商標を使用することができない。

 

(韓国商標法第53条第2項)

 商標権者・専用使用権者または通常使用権者はその登録商標の使用が「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」第2条第1号ヌ目の規定による不正競争行為に該当する場合には同項の規定による他人の同意を受けなければ、その登録商標を使用できない。

 

(3)先使用権が認められる場合

(韓国商標法第57条の3第1項)

 他人の登録商標と同一であり、または類似した商標をその指定商品と同一であり、または類似した商品に使用する者であって 、次の各号の要件を全て備えた者(その地位を承継した者を含む)は、該当商標をその使用する商品に対して継続して使用する権利を有する。

 1.不正競争の目的なしに他人の商標登録出願前から国内で継続して使用していること

 2.第1号の規定により商標を使用した結果他人の商標登録出願時に国内需要者間にその商標が特定人の商品を表示するものであると認識されていること

 

(韓国商標法第57条の3第2項)

 自己の氏名・商号等人格の同一性を表示する手段を商取引の慣行に従って商標として使用する者であって、第1項第1号の要件を備えた者は、該当商標をその使用する商品に対して継続使用する権利を有する。

 

(4) 商標権の行使が権利濫用に該当する場合

 韓国の商標判例によると、商標権の権利行使に関する訴訟において、裁判所は特許審判院を通じて商標登録が無効とならなくても、独自の審理を通じて登録商標が無効か否かについて判断することができ、このように無効となることが自明な商標権に基づく権利行使は受け入れていない。

 

 商標権に基づいた損害賠償および侵害差止め請求に関する事件の大法院2012年10月18日付宣告第2010DA103000号の全合議体の判決によると、商標登録された後に商標法が規定している登録無効事由が発生したが、商標登録のみ形式的に維持されているだけにもかかわらず、それに関する商標権を特に制限なく独占・排他的に行使できるようにすることは、商標の使用に関する公共の利益を不当に損なうのみならず、商標を保護することで商標使用者の業務上の信用維持を図り、産業の発展に貢献すると共に、需要者の利益を保護しようとする商標法の目的にも反するものであるとし、登録商標に対する登録無効審決が確定される前であっても商標登録が無効審判により無効となることが自明な場合は、商標権に基づいた侵害差止め、または損害賠償などの請求は、特段の事情がない限り権利濫用に該当し、許容されないと見なければならないと判示した。

 

 また、商標権侵害訴訟を担当する法院としても、商標権者の請求が権利濫用に該当するという抗弁がある場合、該商標登録が無効かどうかについて審理・判断することができるとし、このような法理は、サービス商標の場合でも同様に適用されると判示した。

 

 これは全合議体の判決であって、特許審判院の審決なく法院が登録商標の権利範囲を否定することはできないという既存の判例を変更し、法院も登録商標について審理することができるとした。この事件は、「ハイウッドHIWOOD」という登録商標に基づいて商標権の侵害差止めおよび損害賠償を請求した事件であるが、大法院は「ハイウッドHIWOOD」は識別力がない商標であって無効となることが自明な商標であり、これに基づく商標権の行使は権利濫用であるとして請求を棄却した。

■ソース
・韓国商標法
・韓国大法院2012年10月18日付宣告第2010DA103000号判決
http://glaw.scourt.go.kr/wsjo/panre/sjo100.do?contId=2063267&q=2010%EB%8B%A4103000&nq=&w=panre§ion=panre_tot&subw=&subsection=&subId=&csq=&groups=&category=&outmax=1&msort=s:6:0,d:1:1,p:2:0&onlycount=&sp=&d1=&d2=&d3=&d4=&d5=&pg=0&p1=&p2=&p3=&p4=&p5=&p6=&p7=&p8=&p9=&p10=&p11=&p12=&sysCd=&tabGbnCd=&saNo=&joNo=&lawNm=&hanjaYn=N&userSrchHistNo=&poption=&srch=&range=&tabId=
■本文書の作成者
河合同特許法律事務所
■協力
日本技術貿易株式会社 IP総研
■本文書の作成時期
2015.01.19
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