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中国における商標法改正に伴う「馳名商標の認定と保護規定」への影響

2015年03月11日

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■概要
2013年8月30日、第12期全国人民代表大会常務委員会第四回会議において、商標法の改正の決議が採択され2014年5月1日より施行された。改正商標法では、馳名商標保護の制度が確立され、「馳名商標」の定義及び馳名商標認定の基準が明確にされた。これに伴い、国家工商行政管理総局は現規定を改正し、馳名商標の認定に際して提出が必要な書類についても定めた。
■詳細及び留意点

【詳細】

法改正の経緯

中国における「馳名商標(日本における著名商標)」については、2003年より「馳名商標の認定と保護に関する規定」にもとづき、「馳名商標」の認定および保護がなされてきたが、その認定手続および基準、ならびに認定業務の責任が明確にされていないといった問題があった。

2013年8月30日、第12期全国人民代表大会常務委員会第四回会議で商標法の改正の決議が採択された。新「商標法」では、馳名商標保護の制度を確立し、「馳名商標」の定義が明確にされ、馳名商標の認定原則がこれまでよりも明確に示された。新「商標法」の公布を受けて、国家工商行政管理総局は原規定を改正(国家工商行政管理総局令第66号:2014年7月3日公布、公布日より30日後に施行)した。

なお、馳名商標とは、中国で関連公衆(商標が使用されている商品または役務と関連性がある販売者や消費者等)に周知され、かつ高い名声と信用を有する商標をいいます(新「規定」第二条)。また、中国では「著名商標」は「馳名商標」と別に存在し、地元の産業発展を図るために、各省内で著名性が認定されたものをいう。認定に際しては、それぞれの省が各々の基準で判断する。

 

改正のポイント1:商標係争案件処理の必要性に応じて、馳名商標を認定することを明確にした。(新「規定」第四条と第十六条)

改正後の「馳名商標の認定と保護規定」では初めて、「馳名商標の認定にあたっては、案件ごとの個別認定、受動的保護の原則」に則るとされた。受動的保護の原則とは、商標権利者が自ら商標局(商標評審委員会)に対し、馳名商標の認定を申し立てる必要があり、当該申し立てがない限り、商標局(商標評審委員会)が積極的に馳名商標の認定を行わないことを意味する。つまり、当事者から申請があった場合にのみ、認定を行うことが明記されている。また、商標係争案件を処理する上で、馳名商標認定が必要な場合にのみ行うことを明確にした。

 

改正のポイント2:当事者による立証の用件が明確にされた(新「規定」第九条)

改正後の「馳名商標の認定と保護規定」では、認定基準と証拠要求を詳細に列挙すると同時に、当事者の責任と各市、省の工商行政管理部門の職責を細分化し、明確なものとしている。新「規定」第9条によれば、馳名商標の認定に際して以下の資料の提出が必要となる。

 

(1) 当該商標に対する関連する公衆の認知度を証明する資料。

(2) 当該商標が使用されている期間を証明する資料。例えば、当該商標の使用・登録の経緯と範囲を示す資料。当該商標が未登録商標である場合、その使用期間が5年以上であることを証明する資料。当該商標が登録商標である場合、その登録日から3年以上経過していること、もしくはその使用期間が5年以上であることを証明する資料。

(3) 当該商標の広告及び宣伝の継続期間や程度(広告及び宣伝の実施回数等)及び地域範囲等の証拠。直近3年の広告宣伝と販促活動の方法、地域の範囲、宣伝媒体の種類及び広告実施回数等を証明する資料。

(4) 当該商標がこれまでに中国又はその他の国や地域で「馳名商標」として保護されていたことを証明する資料。

(5) 当該商標が「馳名」レベルであることを証明するその他証拠資料。例えば、当該商標を使用する主要商品の直近3年における販売収入、市場占有率、純利益、納税額及び販売エリア等の資料。

■本文書の作成者
天達共和法律事務所
■協力
日本技術貿易株式会社 IP総研
■本文書の作成時期

2014.12.2

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