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タイ、ベトナム、インドネシア、シンガポール、マレーシアの商標制度比較

2025年05月08日

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■概要
タイ、ベトナム、インドネシア、シンガポール、マレーシアの商標に関する制度情報を比較一覧する。
■詳細及び留意点
国名パリ
条約
WTO
協定
TLTマドリッド
協定議定書
ニース
協定
商標法
(存続期間)
審査
制度
タイ××*2
(出願日から10年)
ベトナム××*2*3
(出願日から10年)
インドネシア*2
(出願日から10年)
シンガポール×*1*2
(出願日から10年)
マレーシア×*2
(出願日から10年)
*1:商標法に関するシンガポール条約(STLT)に加盟
*2:ニース国際分類を採用。
*3:知的財産法に商標に関する規定がある。

1. パリ条約
 タイ、ベトナム、インドネシア、シンガポール、マレーシアは、すべてパリ条約に加盟している。

関連情報
「パリ条約」(2023.05.12)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/paris/patent/index.html
「パリ条約加盟国」(英語、随時更新)
https://www.wipo.int/wipolex/en/treaties/ShowResults?search_what=C&treaty_id=2

2. WTO協定
 タイ、ベトナム、インドネシア、シンガポール、マレーシアは、すべてWTO協定に加盟している。

関連情報:
「世界貿易機関を設立するマラケシュ協定」(2018.09.04)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/it/page25_000396.html
「世界貿易機関加盟国」(英語、随時更新)
https://www.wto.org/english/thewto_e/whatis_e/tif_e/org6_e.htm
「世界貿易機関(WTO)」
https://www.soumu.go.jp/g-ict/international_organization/wto/pdf/wto.pdf

3. 商標法条約(TLT)および商標法に関するシンガポール条約(STLT)
 商標法条約は、商標出願手続きの国際的な制度調和と簡素化を図るための条約である。
 インドネシアは加盟しているが、タイ、ベトナム、シンガポール、マレーシアは未加盟である。なお、シンガポールは、商標法条約を包含する「商標法に関するシンガポール条約(STLT)」に加盟している。タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシアは、未加盟である。

関連情報:
「商標法条約」(1994.10)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/tlt-shouhyou94.pdf
「商標法条約締約国」(英語、随時更新)
https://wipolex.wipo.int/en/treaties/ShowResults?search_what=C&treaty_id=5
「商標法条約に基づく規則」
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/tlt/rutlt/chap1.html
「商標法に関するシンガポール条約」(2016.03.14)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ila/et/page22_001869.html
「商標法に関するシンガポール条約(STLT)の概要」(2017.04.06)
https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/wipo/stlt_20160210.html
「商標法に関するシンガポール条約(STLT)締約国」(英語、随時更新)
https://www.wipo.int/wipolex/en/treaties/ShowResults?search_what=C&treaty_id=30

4. マドリッド協定議定書
 マドリッド協定議定書は、商標についてWIPO国際事務局が管理する国際登録簿に国際登録を受けることにより、指定締約国においてその保護を確保できる条約である。
 タイ、ベトナム、インドネシア、シンガポール、マレーシアのすべてが加盟している。

関連情報:
「標章の国際登録に関するマドリッド協定の1989年6月27日にマドリッドで採択された議定書(マドリッド協定議定書)」(2009.01.14)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/madrid/mp/index.html
「マドリッド協定議定書の概要」(2010.07.05)
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/madrid/seido/mado.html
「【商標の国際出願】締約国一覧」(2024.06.04)
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/madrid/madopro_kamei.html

5. ニース協定
 ニース協定は、商標登録のための商品およびサービスの分類として各国共通の国際分類を採用することを目的としている。
 シンガポール、マレーシアおよびインドネシアは加盟し、タイおよびベトナムは未加盟であるが、タイは商標審査基準第3部の商標法第13条解説の末尾で、ベトナムは知的財産法第105条第3項で、いずれも商標出願にニース国際分類を記載することが規定されている。

関連情報:
「標章の登録のための商品及びサービスの国際分類に関するニース協定」(1990.02.20)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/B-H2-0005.pdf
「ニース協定と国際分類の概要」(2019年11月現在の加盟国一覧のため、2023年10月に加盟したインドネシアについて記載なし)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/kokusai_bunrui/document/kokusai_bunrui_11-2020/10.pdf
「ニース協定ジュネーブ改正協定加盟国一覧」(英語、随時更新)
https://www.wipo.int/wipolex/en/treaties/ShowResults?search_what=A&act_id=22
「タイ商標審査基準」(2016年版、日本語)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/thailand-shouhyou_kijun.pdf

6. 商標法
 タイでは、商標は商標法により規定されている。存続期間は、出願日から10年である(商標法第42条および第53条)。また、一つの出願で多区分について同一商標を出願できる(商標法第9条)。
 ベトナムでは、商標は知的財産法により規定されている。存続期間は、出願日から10年である(知的財産法第93条第6項)。また、一つの出願で多区分について同一商標を出願できる(知的財産法第105条1(a))。
 インドネシアでは、商標は商標法により規定されている。存続期間は、出願日から10年である。また、一つの出願で多区分について同一商標を出願できる(商標法第35条第1項、第6条第1項)。
 シンガポールでは、商標は商標法により規定されている。存続期間は、出願日から10年である(第15条第2項および第18条第1項)。また、一つの出願で多区分について同一商標を出願できる(商標法第5条第2項(d)および商標規則第19条第3項)。
 マレーシアでは、商標は商標法により規定されている。存続期間は、出願日から10年である(商標法第36条第1項および第39条第1項)。また、一つの出願で多区分について同一商標を出願できる(商標法第18条)。

7. 審査制度
 タイでは、商標の実体審査が行われる。早期審査制度は採用されていないが、実務上は適切な理由を添えた上申書を提出することで、早期審査を請求することができる。異議申立は、実体審査を経て出願が公告された後60日以内に何人も申し立てることができる(商標法第35条)。
 ベトナムでは、商標の実体審査が行われる(知的財産法第119条第2項)。早期審査は、2022年6月16日付の知的財産法に基づく通達(23/2023/TT-BKHCN)から規定されなくなった。異議申立は、方式審査を経て出願が公開された日から5か月以内に何人も申し立てることができる(知的財産法第112a条第1項c)。
 インドネシアでは、商標の実体審査が行われる(商標法第23条)。早期審査制度は採用されていない。異議申立は、方式審査を経て出願が公開された日から2月以内に何人も申し立てることができる(商標法第14条第2項および第16条第1項)。
 シンガポールでは、商標の実体審査が行われる(商標法第12条)。異議申立は、実体審査を経て出願が公告された日から2月以内に何人も申し立てることができる(商標法第13条および商標規則第29条第1項)。
 マレーシアでは、商標の実体審査が行われる。早期審査を請求することができる。異議申立は、実体審査を経て出願が公告された日から2月以内に何人も申し立てることができる(商標法第17条第5項、第29条、第34条第2項、商標規則第23条第1項)。
 詳細は以下の関連記事を参照されたい。

関連記事:
「タイにおける商標出願制度概要」(2019.06.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17463/
「タイにおける商標制度のまとめ-手続編」(2020.09.01)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19444/
「タイにおける商標制度のまとめ-実体編」(2020.06.04)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/18619/
「ベトナムにおける商標出願制度概要」(2019.06.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17473/
「ベトナムにおける商標制度のまとめ-手続編」(2020.07.07)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19290/
(注:本稿作成後、上記記事は更新されています(2025.05.01)。
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/40950/
「ベトナムにおける商標制度のまとめ-実体編」(2020.05.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/18601/
(注:本稿作成後、上記記事は更新されています(2025.05.01)。
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/40963/
「インドネシアにおける商標出願制度概要」(2019.07.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17530/
「インドネシアにおける商標制度のまとめ-手続編」(2022.04.07)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/22921/
「インドネシアにおける商標制度のまとめ-実体編」(2022.04.07)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/22923/
「シンガポールにおける商標登録出願制度概要」(2019.07.30)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17581/
「シンガポールにおける商標制度のまとめ-手続編」(2020.09.03公開、2022.05.20一部訂正)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19446/
「シンガポールにおける商標制度のまとめ-実体編」(2020.06.09公開、2024.07.05一部訂正)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/18623/
「マレーシアにおける商標出願制度概要」(2025.01.30)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/40510/
「マレーシアにおける商標制度・運用に係る実態調査」(2021.10.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/21034/

8. コンセント制度
 コンセント制度とは、先行登録商標に類似すると判断される場合であっても、当該先行登録商標の商標権者が同意をすれば出願商標の登録を認める制度である。
 タイにおいては、登録官が審査の上、コンセントを認めることがある旨が商標法第27条および第51-1条に規定されている。
 ベトナムにおいては、法令で明文化された規定はないが、同意書は受理される。
 インドネシアでは、有名人および他の法人の名称ならびに国などの機関の名称および紋章などが、当事者の同意がある場合に出願が認められることがある旨が改正商標法第21条第2項に規定されている。
 シンガポールにおいては、先の権利所有者が同意すれば登録官の裁量で登録できる旨が商標法第8条第9項に規定されている。
 マレーシアでは、商標法第24条第7項に先の権利所有者が同意し、登録官が公共の利益および公衆における混同の虞を考慮の上、審査することが規定されている。
 詳細は、以下の関連記事を参照されたい。

関連記事
「タイにおける商標コンセント制度に関する留意点(前編)」(2023.05.02)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/34437/
「タイにおける商標コンセント制度に関する留意点(後編)」(2023.05.02)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/34439/
「ベトナムにおける商標のコンセント制度」(2017.03.02)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/13215/
「インドネシアにおける商標のコンセント制度について」(2022.12.20)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/27347/
「シンガポールにおける商標のコンセント制度について」(2023.01.05)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/27455/
「マレーシアにおける商標のコンセント制度」(2017.03.01)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/13213/

■ソース
各国商標法令:
「タイ商標法」(2016.07.28) 日本語版:
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/thailand-shouhyou.pdf 「ベトナム知的財産法」(2023.01.01) 日本語版:
https://www.jica.go.jp/Resource/project/vietnam/059/materials/lqgpft0000005lvu-att/intellectual_property_law_2022.pdf 「ベトナム通達:23/2023/TT-BKHCN」(2023.11.30) 日本語版:
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/vietnam-chizaihou_tsuutatsu.pdf 「インドネシア商標法」(2016.11.25) 日本語版:
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/indonesia-shouhyou_2016.pdf 「インドネシア改正商標法」(2016年法律第252号) インドネシア語版:
https://jdih.dgip.go.id/produk_hukum/view/id/24/t/undangundang+nomor+20+tahun+2016+tentang+merek+dan+indikasi+geografis 「シンガポール商標法」(2022.06.10) 日本語版:
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/singapore-shouhyou.pdf 「シンガポール商標規則」(2022.05.26) 日本語版:
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/singapore-shouhyou_kisoku.pdf 「マレーシア商標法」(2019.12.09) 日本語版:
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/malaysia-shouhyou.pdf 「マレーシア商標規則」(2019.12.27) 日本語版:
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/malaysia-shouhyou_kisoku.pdf
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2024.11.25

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