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韓国における商標出願の拒絶理由通知に対する対応

2025年05月01日

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■概要
韓国特許庁に商標出願して拒絶理由通知を受ける場合、拒絶理由として、性質表示標章に該当(商標法第33条第1項第3号)、引用商標と同一もしくは類似(商標法第34条第1項第7号、第35条第1項)、または指定商品が包括名称もしくは不明確に該当(商標法第38条)という内容が多い。拒絶理由通知を受けた場合、通知書の発送日から2か月の期間内に意見書および補正書を提出しなければならない。ただし、提出期間の延長を申請すれば、審査官は延長を1か月ずつ4回まで認める。さらに、延長を含め、審査官が認めた提出期間内に意見書を提出できなかった場合、当該期間の満了日から2か月以内に商標に関する手続を継続して進行することを申請し、拒絶理由に対する意見書を提出することもできる(商標法第55条第3項)。
■詳細及び留意点

 商標出願に対する審査官の拒絶理由の内容は、主に次のように分類することができる。
(1) 性質表示標章に該当(商標法第33条第1項第3号)
(2) 引用商標と同一または類似(商標法第34条第1項第7号、第35条第1項)
(3) 指定商品が包括名称または不明確(商標法第38条)

以下、順に詳述する。

(1) 性質表示標章に該当(商標法第33条第1項第3号)
 出願商標が性質表示標章に該当する、という拒絶理由通知を受ける場合がある。この場合、出願商標の意味が、指定商品の性質の直接的な表示に該当するのか、単に指定商品の性質を暗示または強調するものに過ぎないのか等を把握して対応しなければならない。上記に関連し、最高裁判所(韓国語「대법원」(大法院))の判例では、「その商標が指定商品の品質、効能、形状等を暗示、強調するものとみえるとしても、全体的な商標の構成からみる時、一般取引者や需要者らが指定商品の単純な品質、効能、形状等を表示するものであると認識することができないものは、これに該当しない」(大法院 1987.3.10 宣告 86フ18判決)と判断している。

 意見書提出時には、参考資料として類似の商標の登録事例および判例、日本等外国での登録事例等を提出して対応する場合が多い。しかし、実際には、性質表示ではないとの客観的な立証を行うのは難しいため、拒絶理由の解消は困難といえる。

(2) 引用商標と同一または類似(商標法第34条第1項第7号、第35条第1項)
 引用商標と同一または類似するという拒絶理由通知を受ける場合がある。この場合は、まず、引用商標と抵触する指定商品が削除可能であるかを確認し、可能な場合には削除する。特許庁は、商品の類否を判断するために類似群コードを運用しており、ニース分類による商品区分と関係なく類似群コードが同一であれば、原則的に類似の商品と推定する(類似商品審査基準(ニース第12版基準))。

 引用商標に係る拒絶理由において、出願商標と引用商標が外観、称呼、観念が同一または類似していて拒絶理由の解消が難しい場合がある。そのときは、引用商標について使用の有無を調査し、不使用と判断できる場合には不使用取消審判を請求する方法をとることが多い(不使用取消審判については、関連記事「韓国における商標の不使用取消審判制度」を参照)。引用商標について不使用取消審判を請求して取消が確定した場合、拒絶理由が解消され、出願は維持される。

 なお、引用商標と同一または類似であっても、商標登録同意書(以下「同意書」という。)があれば、商標登録を受けることができる場合がある(商標法第34条第1項第7号)。つまり、韓国には商標共存同意制度(いわゆるコンセント制度)があり、先の登録商標と同一または類似の出願商標であっても、その商標および指定商品の少なくとも一方が登録商標と同一ではなく類似であり、かつ、先の登録商標権者からの同意書があれば登録が可能である。ただし、「先登録商標と標章および指定商品が同一の出願商標の共存同意書」、「条件付きの共存同意書」および「包括的共存同意書」は認められない。また、子会社等の関係会社であっても法律上は他人に該当するため、商標共存同意書を提出しなければならない。共存同意で登録された後、出願商標を不正な目的で使用することで需要者に誤認・混同を起こした場合は、取消審判請求の対象になるので注意しなければならない(商標法第119条第1項5の2)。

(3) 指定商品が包括名称または不明確(商標法第38条)
 指定商品が不明確または包括名称に該当するという拒絶理由通知を受ける場合がある。これに対しては、商標法施行規則で定める商品区分表に例示された商品名に準じて、商品の用途および材料等を限定または特定するのがよい。

 専門的な用語を用いて詳細かつ細密に説明した指定商品は、むしろ不明確であるとの理由で拒絶理由通知が出される傾向がある。この場合は、可能であれば当該業界で一般的に使用されている名称に補正するのがよい。例えば、「ぜんまい式卓上時計」は認められるが、「ぜんまいを巻いて針が周り、時間を知らせる機械」と書いた場合に、指定商品不明確として拒絶理由通知が出されるようなケースもある。

(4) 一部指定商品等が拒絶理由に該当する場合
 拒絶理由通知書を受けた際に、拒絶理由の対象が商標登録出願の指定商品すべてではなくその一部にのみ該当する場合、拒絶理由に該当しない指定商品は商標登録を受けることができるが(いわゆる「部分拒絶制度」)、拒絶理由がない商品の商標登録を早く受けようとする場合は、補正書を提出(商標法第40条および第41条)するか、または分割出願(商標法第45条)をすることが望ましい。

(5) 商標の類否判断
 従来、韓国では、部分観察(分離観察)の傾向が強かったが、現在は全体観察へと移行している。外観、称呼および観念等を客観的、全体的、離隔的に観察して、該当指定商品の取引で一般需要者や取引者が商標に対して感じる直観的認識を基準として商品の出所に対する誤認、混同を起こす恐れがあるか否かによって判断されるべきとする最高裁判決(大法院 2000.4.25宣告 99フ1096)もあり、審査基準の記載も部分観察からやや全体観察へ移行しているように見受けられる(商標審査基準第5部第7章「補充基準:商標の同一・類似」2.2.3「類否判断のための観察方法」(P50709))。しかし、必ずしも全体観察の原則が採られているわけではないので出願に際しては十分な検討が必要である。例えば、識別力が弱い文字と識別力のある図形の結合商標で、全体として識別力があるように見受けられる場合は、登録される可能性はあるが、分離観察され、拒絶される可能性も否定できないので、文字部分と図形部分の分離が不可能な程度に密接させる等の工夫が必要である。

(6) 拒絶理由通知への対応の期限
 拒絶理由通知を受けた場合、通知書の発送日から2か月の期間内に意見書および補正書を提出しなければならない。ただし、提出期間の延長を申請すれば、審査官は延長を1か月ずつ4回まで認める。また、2回以上の延長を一度に申請することも認められる(商標審査基準第1部第4章3.1.2)。
 さらに、延長を含め、審査官が認めた提出期間内に意見書を提出できなかった場合、当該提出期間の満了日から2か月以内に商標に関する手続を継続して進行することを申請し、拒絶理由に対する意見書を提出することができる(商標法第55条第3項、商標審査基準第1部第4章「期間」4.3「手続継続申請及び意見書提出の方法」P10408~P10409)。

(7) 再審査請求制度
 拒絶決定を受けた場合でも、商品の削除補正等で簡単に拒絶理由が解消できる場合には、拒絶決定の謄本の送達を受けた日から3か月以内に当該補正書の提出とともに審査官に再審査を請求することができる(商標法第55条の2)。
 なお、再審査請求制度を利用すれば小額の費用で拒絶決定を解消できる。詳細は「特許料等の徴収規則第5条第1項7の2」の規定を参照されたい。

【留意事項】
 拒絶理由に該当する引用商標が不使用を理由により取消されれば、拒絶理由は解消される。したがって、引用商標と同一または類似するという拒絶理由を受けた場合の対応の一つとして、引用商標に対して不使用取消審判を請求することが挙げられる。
 商標共存同意制度は、引用商標の権利者から同意書を得ることができれば、引用商標と類似する商標でも登録の可能性があることから、今後の活用が期待される。

■ソース
・韓国商標法
https://www.choipat.com/menu31.php?id=26 ・韓国商標法施行規則
https://www.choipat.com/menu31.php?id=28 ・類似商品審査基準(ニース第12版基準)
https://www.kipo.go.kr/ko/kpoContFileDown.do?seq=30&fileNum=7 ・商標共存同意制度(コンセント制度)リーフレット
https://www.kipo.go.kr/ko/kpoBultnFileDown.do?ntatcSeq=19524&ntatcAtflSeq=3&sysCd=SCD02&aprchId=BUT0000020 ・商標審査基準(2023.02.04)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/kr/ip/law/trademark2023.pdf ・特許料等の徴収規則
https://www.choipat.com/menu31.php?id=110
大法院の判決文は、通常、約1分程度の時間が掛かります。
・大法院1987.3.10 宣告86フ18判決
https://www.law.go.kr/LSW/precInfoP.do?evtNo=86%ED%9B%8418 ・大法院2000.4.25 宣告 99フ1096判決
https://www.law.go.kr/LSW/precInfoP.do?evtNo=99%ED%9B%841096 ・関連記事:「韓国における商標の不使用取消審判制度」(2020.04.02)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/18408/ ・関連記事:「韓国における商標の一出願多区分制度について」(2018.11.01)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/16031/ (本稿作成後、2025.03.27付で上記記事は更新されています。https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/40763/
■本文書の作成者
崔達龍国際特許法律事務所
■協力
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2025.01.10

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