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インドネシアにおける特許・実用新案・意匠年金制度の概要

2025年04月17日

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■概要
インドネシアにおける特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である。権利期間は延長できない。年金の納付手続は、出願の審査中には発生せず、特許が付与された場合に発生し、特許付与日から6か月以内に累積年金を納付しなければならない。実用新案権(インドネシア特許法第2条b、3条(2)に規定される簡易特許、以下「実用新案権」という。)の権利期間は、出願日から10年である。権利期間の延長はできない。年金の納付手続は、出願の審査中には発生せず、実用新案権が付与されてから発生する。意匠権の権利期間は、出願日から10年である。権利期間の延長および年金納付については、規定がない。
■詳細及び留意点

1. 特許権
1-1. 存続期間
 インドネシアにおける特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である。権利期間は延長できない(インドネシア特許法第22条(1)および(2) )。
 なお、以下、本記事の根拠規定の表示において、単に「特許法」とある場合は、本記事末にある【ソース】に紹介する「インドネシア特許法(2016年法律第13号)および解説(英語または日本語)」を参照し、「2024年特許法」とある場合は、同じく【ソース】に紹介する「インドネシア特許法改正法(2024年法律第65号)および解説(インドネシア語または日本語)」を参照されたい。

1-2. 年金の納付期限
 年金の納付手続は、出願の審査中には発生せず、特許が付与されてから発生する。出願に対して特許が付与されると、出願日から起算した初年度分から特許が付与された年の翌年分までの年金を特許付与日から6か月以内に納付しなければならない。この特許付与時の納付年金を累積年金と言う(*下記参照)。累積年金の納付後の各年の年金は、毎年の出願日に対応する日の1か月前までに、次年度分を納付しなければならない(2024年特許法第126条(1)から(3)、およびこれに添付の「解説」の「II.逐条解説」第126条の説明参照)。

*累積年金とは、一般的には、年金納付義務が特許査定前から存在し、かつ特許査定が下されてから納付が開始される国において、登録の手続の際に納付すべき年金のことを指す。指定された年度から査定された年度までをカバーする年金をまとめて納付し、それ以降は年払いに移行する。なお、査定された時期と年金納付日の関係によっては、指定された年度から査定された年度の次の年度の分までを納付することになる場合もある。インドネシアにおける累積年金の納付に関する規定には、納付時期等やや異なる面もあり、詳細は上記のとおりである。

1-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 納付期限日までに年金が納付されなかった場合、権利は取消となる(2024年特許法第128条(1)))。なお、期限までに年金を納付しなかった場合、6か月間の猶予期間が与えられるが、未納付に係る年金に対し100パーセントの罰金(倍額納付)が科される(2024年特許法126条(4))。なお、非常事態が生じたことにより納付期限を徒過した場合は、特許権者は緊急事態の期間終了後の3日の期間内に年金を納付することができる(特許出願に関するインドネシア共和国法務・人権省令 2018年第38号)第101条)。

1-4. 権利回復制度
 商務裁判所の判決に基づいて行われる場合を除き、インドネシアには、失効した特許権に対する権利回復手続は原則ない(特許法第141条)。

1-5. 年金の誤納
 実務上、意図しない特許権に対して年金を誤って納付してしまった場合や、所定の納付金額以上の額を誤って納付した場合にも、一度納付した年金は返還されないことがあるため注意されたい。

1-6. その他
 年金の納付金額は、請求項の数により変動する(インドネシア知的財産総局(以下、「知的財産総局」という。)サイト内 料金表)。年金の納付は、特許権者または代理人により行うことができるが、特許権者がインドネシア共和国内に住所または居所を有さない場合は、インドネシア在住の代理人により行われなければならない(特許法第127条(1)、(2))。

 上記の通り、年金納付期限日または猶予期間経過までに年金が納付されない場合、特許権は取消となるが、権利の取消を求める内容の法務人権大臣宛の書面を知的財産総局に提出することにより、自発的に権利の放棄を行うことも可能である(特許法130条(a)、131条(1))。特許権者の申立てによる権利の取消の場合も、特許法141条が適用されるため、特許権の権利回復手続は、原則ない。

 登録後の年金は、旧法においては、連続して3年間納付しなかった場合に初めて権利が消滅し、その間の年金は負債として残るという制度であったが、2016年のインドネシア特許法の改正により、1年度分だけでも納付されなかった場合には権利が消滅する制度となった。

なお、2024年特許法128条(1)は、納付期限までに特許年金の納付がなかった場合は、「取消しが宣言される(dinyatakan dihapus)」と規定しており(旧法から変更なし)、日本の特許法第112条5項または6項のように、期限までに納付しなかった場合に遡って権利が消滅した又は初めから権利が存在しなかったものとみなされるという規定になっていないため、納付期限経過後も権利が消滅せず、年金債務が発生する可能性があるという点は注意する必要がある。また、権利消滅後も既に発生した年金債務(未納分)については支払義務があるところ、完納しない限り当該権利者の新規の出願が処理されないという事態が発生している。2024年特許法も、権利消滅後の既発生の未納年金債務について特段の規定を設けていないため、今後も同様の事態が発生する可能性があることに注意が必要である。

2. 実用新案権
2-1. 存続期間
 実用新案権の権利期間は、出願日から10年である。権利期間の延長はできない(特許法第23条(1)および(2))。

2-2. 年金の納付期限
 特許法121条により、原則として同法の特許に関する規定は実用新案権にも準用されることから、年金に関する規定は、特許権の場合と同じである。年金の納付手続は、出願の審査中には発生せず、実用新案権が付与されてから発生する。出願が登録を受けると、出願日から起算した初年度分から実用新案権が付与された年の翌年分までの年金(累積年金)を実用新案付与日から6か月以内に納付する必要がある(2024年特許法第126条(1)、(2))。累積年金の納付後の各年の年金は、毎年の出願日に対応する日の1か月前までに、次年度分を納付しなければならない(同条(3))。

2-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 追納に関する規定は、特許と同様である(特許法第128条)。

2-4. 権利回復制度
 特許権と同様、商務裁判所が決定した場合を除き、取消された実用新案権に対する権利回復の手続は原則ない(特許法第141条)。

2-5. 年金の誤納
 実務上、意図しない実用新案権に対して年金を誤って納付してしまった場合や、所定の納付金額以上の額を誤って納付した場合であっても、一度納付した年金は返還されないことがあるため注意されたい。

2-6. その他
 年金の金額は請求項の数により変動する(知的財産総局サイト内 料金表)。年金の納付は、実用新案権者または代理人により行うことができるが、実用新案権者がインドネシア共和国内に住所または居所を有さない場合は、インドネシア在住の代理人により行われなければならない(特許法第127条(1)、(2))。

 上記の通り、年金納付期限日または猶予期間経過までに年金を納めない場合、実用新案権は取消されるが、権利を放棄したい旨を記した法務人権大臣宛の書面を知的財産総局に提出することにより、自発的に放棄を行うことも可能である。書面提出による権利放棄の場合も、実用新案権の権利回復手続は原則ない。

3. 意匠権
3-1. 存続期間
 意匠権の権利期間は、出願日から10年である(インドネシア意匠法第5条(1))。権利期間の延長に関する規定はない。

3-2. 年金の納付期限
 インドネシアにおいて意匠権を維持するための年金納付に関する規定はなく、納付の必要はない。

3-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 該当なし。

3-4. 権利回復制度
 該当なし。

3-5. 年金の誤納
 該当なし。

3-6. その他
 意匠権者が権利を放棄したい場合は、意匠登録の取消を求める旨を記載した書面を知的財産総局に提出することにより、自発的な放棄が可能である(インドネシア意匠法37条(1)、43条)。意匠法には権利回復に関する規定が設けられていない。

■ソース
・インドネシア特許法改正法(2024年法律第65号)および解説(インドネシア語)
https://peraturan.bpk.go.id/Details/306515/uu-no-65-tahun-2024 ・インドネシア特許法改正法(2024年法律第65号)および解説(日本語)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/indonesia-tokkyoho_kaisei03.pdf ・インドネシア特許法(2016年法律第13号)および解説(英語)
https://www.wipo.int/wipolex/en/legislation/details/16392 ・インドネシア特許法(2016年法律第13号)および解説(日本語)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/idn/ip/pdf/tokkyo_2016.pdf ・特許出願に関するインドネシア共和国法務・人権省令 2018年第38号(日本語)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/idn/ip/pdf/201904_2.pdf ・特許出願に関するインドネシア共和国法務・人権省令 2018年第38号(インドネシア語)(ダウンロード形式)
https://peraturan.bpk.go.id/Details/133178/permenkumham-no-38-tahun-2018 ・インドネシア意匠法(2000年法律第31号)(英語)
https://www.wipo.int/wipolex/en/legislation/details/2260 ・インドネシア意匠法(2000年法律第31号)(日本語)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/indonesia-ishou.pdf ・インドネシア知的財産総局 料金表
https://www.dgip.go.id/menu-utama/paten/biaya
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■協力
アセガフ・ハムザ法律事務所(https://www.ahp.id) 
■本文書の作成時期

2025.01.18

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