国別・地域別情報

ホーム 国別・地域別情報 アジア 法令等 | 出願実務 意匠 日本と台湾における意匠の新規性喪失の例外に関する比較

アジア / 法令等 | 出願実務


日本と台湾における意匠の新規性喪失の例外に関する比較

2025年02月18日

  • アジア
  • 法令等
  • 出願実務
  • 意匠

このコンテンツを印刷する

■概要
台湾での意匠出願における新規性喪失の例外規定の適用要件には、出願人自らの刊行物による公開が含まれている。例外が認められる期間は、日本では法改正により、平成30年6月9日以降の出願から1年となったが、台湾では、意匠が公開された日から6か月である。新規性喪失の例外規定を適用しても、新規性を喪失した日に出願日が遡及するわけではない。つまり、新規性喪失の例外の適用を受けて意匠出願をしても、第三者が同じ意匠を当該出願前に公知にしていれば、その意匠出願は新規性がないとして拒絶される。また、第三者が同じ意匠を先に意匠出願している場合も、先願主義に従い、後の意匠出願は拒絶される。新規性喪失の例外の適用を受けられる場合でも、このようなリスクを避けるため、できるだけ早く出願する必要がある。
■詳細及び留意点

1. 日本における意匠出願の新規性喪失の例外
 日本においては、新規性を喪失した意匠の救済措置として、新規性喪失の例外規定が定められている。新規性喪失の例外規定の適用要件は、以下のいずれかである。

(1) 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の意に反して公開されたこと(意匠法第4条第1項)。
(2) 出願に係る意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者(創作者または承継人)の行為に基づいて公開されたこと(意匠法第4条第2項)。

 上記いずれの場合についても、以下の要件を満たす必要がある。

(a) 意匠登録を受ける権利を有する者が意匠登録出願をしていること

(b) 意匠が最初に公開された日から1年(平成30年6月9日以降の出願に適用)以内に意匠登録出願をしていること。ただし、平成29年12月8日までに公開された意匠については、平成30年6月9日以降に出願しても、改正意匠法第4条の規定は適用されないので注意が必要。

 なお第4条第2項に記載される自己の行為に基づく新規性喪失については、さらに以下の手続が必要となる。

(i) 出願時に、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする旨を記載した書面を提出、あるいは願書にその旨を記載すること(意匠法第4条第3項)。
(ii) 出願の日から30日以内に、公開された意匠が新規性喪失の例外規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する「証明書」を証明書提出書とともに提出すること(意匠法第4条第3項)。

 「証明書」には、意匠が公開された事実(公開日、公開場所、公開された意匠の内容等)、および意匠登録を受ける権利の承継等の事実(公開意匠の創作者、行為時の権利者、意匠登録出願人等)を記載することが必要である。書式に従って作成された「証明する書面」が提出されている場合、審査官は、原則として、公開意匠が要件を満たすことについて証明されたものと判断し、新規性喪失の例外規定の適用を認める。ただし、公開意匠が適用を受けることができる意匠であることに疑義を抱かせる証拠を発見した場合には、審査官は適用を認めない。(意匠審査基準第Ⅲ部第3章「新規性喪失の例外」 4.1)。

日本意匠法 第4条 意匠の新規性の喪失の例外
1 意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠は、その該当するに至った日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項及び同条第二項の規定の適用については、同条第一項第一号又は第二号に該当するに至らなかったものとみなす。
2 意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至った意匠(発明、実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同項第一号又は第二号に該当するに至ったものを除く。)も、その該当するに至った日から一年以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同項及び同条第二項の規定の適用については、前項と同様 とする。
(第3項、第4項省略)

 意匠審査基準第Ⅲ部第3章「新規性喪失の例外」、は省略(【ソース】の意匠審査基準を参照されたい。)。

2. 台湾における意匠出願の新規性喪失の例外
 台湾における意匠出願の新規性喪失の例外規定の適用は、意匠公報でなされた公開を除き、「出願人の意図によりなされた公開」と「出願人の意図に反してなされた公開」の2つの場合がある(台湾専利法第122条第3項、第4項)。

 「出願人の意図によりなされた公開」とは、公開が出願人の本意によるものであれば、出願人自らの行為に限られない。この状況の公開における行為の主体には、出願人、出願人が委託、同意、指示した者などが含まれる(台湾専利審査基準第3篇第3章4.5)。

 「出願人の意図に反してなされた公開」とは、出願人の本意によらず公開された状況を指す。この状況の公開における行為の主体には、出願人の委任、同意、指示を得ていない者、秘密保持義務に違反し、または不法な手段である脅迫、詐欺により創作を搾取した者等が含まれる(台湾専利審査基準第3篇第3章4.5)。

 これらの2つの場合について、公開の態様についての制限はなく、刊行物による発表、政府主催または認可の展覧会への展示、公開実施による場合等が含まれる(台湾専利審査基準第3篇第3章4.5)。

 意匠が公知となった日から6か月以内に出願しなければならない(台湾専利法第122条第3項、台湾専利審査基準第3篇第3章4.3)。新規性喪失の例外規定が適用されても、新規性を喪失した日に出願日が遡及するわけではない。つまり、新規性喪失の例外の適用を受けて意匠出願をしても、第三者が同じ意匠を当該出願前に公知にしていれば、その意匠出願は新規性がないとして拒絶される。また、第三者が同じ意匠を先に意匠出願している場合も、先願主義に従い、後の意匠出願は拒絶される(台湾専利審査基準第3篇第3章4.6)。

※ 台湾智慧財産局は、2024年9月11日に台湾専利法の改正案を公表し、その中で意匠の新規性喪失例外の適用期間を、公知となった日から1年に延長するとされている。改正法の施行期日は現時点で未定である。
台湾智慧財産局「公告專利法部分條文修正草案」https://www.tipo.gov.tw/tw/cp-86-979687-69f9a-1.html

 新規性喪失の例外の適用を受けられる場合でも、このようなリスクを避けるため、できるだけ早く出願する必要がある。注意すべきは、新規性喪失の例外を適用させるためには、意匠が公知とされた日から6か月内に出願すべきであるということである。

台湾専利法 第122条
 産業上利用することのできる意匠で、次の各号のいずれかに該当しなければ、本法により出願し、意匠登録を受けることができる。
1 出願前に既に同一または類似の意匠が刊行物に記載された場合
2 出願前に既に同一または類似の意匠が公然実施された場合
3 出願前に既に公然知られた場合
 意匠が、前項各号の事情に該当しなくても、それがその所属する技術分野の通常知識を有する者が出願前の従来技芸に基づいて容易に思いつくものは、意匠登録を受けることができない。
 出願人の意図によるものまたは出願人の意図に反する公開の事実が生じた日から6か月以内に意匠出願をした場合は、当該事実が第1項各号または前項に言う意匠登録を受けることができない事情に該当しない。
 出願により台湾または外国において法に基づき公報に公開されたことが出願人の意図によるものである場合、前項の規定を適用しない。

 台湾専利審査基準第3篇第3章4.「新規性又は創作性喪失の例外」、は省略(【ソース】の台湾専利審査基準を参照されたい。)。

日本と台湾における意匠の新規性喪失の例外に関する比較

日本台湾
新規性喪失の例外の有無
公知行為の限定の有無
例外期間公開日から1年公開日から6か月
■ソース
・日本国意匠法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000125 ・意匠審査基準 第Ⅲ部 第3章 新規性喪失の例外 
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/design/shinsa_kijun/document/index/isho-shinsakijun-03-03.pdf ・台湾専利法
(中国語)https://law.moea.gov.tw/LawContent.aspx?id=FL011249
(日本語)https://chizai.tw/wp-content/uploads/2022/07/専利法(2022年7月1日施行)-j-.pdf
・台湾専利審査基準 第3篇 意匠 実体審査 第3章 専利要件
(中国語)https://chizai.tw/test/wp-content/uploads/2021/11/第三篇第3章-專利要件(2020年11月1日施行).pdf
(日本語)https://chizai.tw/wp-content/uploads/2022/09/第三篇第3章-専利要件(2020年11月1日施行).pdf
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2024.10.17

■関連キーワード