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日本とインドにおける特許出願書類の比較

2025年01月14日

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■概要
主に日本で出願された特許出願を優先権の基礎としてインドに特許出願する際に、必要となる出願書類についてまとめた。日本とインドにおける特許出願について、出願書類と手続言語についての規定および優先権主張に関する要件を比較した。
■詳細及び留意点

1. 日本における特許出願の出願書類(パリルート)
1-1. 出願書類
 所定の様式により作成した以下の書面を提出する(特許法第36条第2項)。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・必要な図面
・要約書

(1) 願書
 願書には、特許出願人および発明者の氏名(出願人が法人の場合は名称)、住所または居所を記載する(特許法第36条第1項柱書)。

(2) 明細書
 明細書には、発明の名称、図面の簡単な説明、発明の詳細な説明を記載する(特許法第36条第3項)
 発明の詳細な説明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しなければならない(特許法第36条第4項第1号)。

(3) 特許請求の範囲
 特許請求の範囲には、請求項に区分して、請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない(特許法第36条第5項)。

(4) 要約書
 要約書には、明細書、特許請求の範囲または図面に記載した発明の概要等を記載しなければならない(特許法第36条第7項)。

1-2. 手続言語
 書面は、日本語で記載する(特許法施行規則第2条第1項)

1-3. 手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
 書面は日本語で作成するのが原則であるが、英語その他の外国語(その他の外国語に制限は設けられていない)により作成した外国語書面を願書に添付して出願することができる(特許法第36条の2第1項、特許法施行規則第25条の4)。この場合は、その特許出願の日(最先の優先日)から1年4か月以内(分割出願等の場合は出願日から2か月以内)に、外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない(特許法第36条の2第2項)。ただし、特許法条約(PLT)に対応した救済規定がある(特許法第36条の2第6項)。

1-4. 優先権主張手続
 外国で最初に出願した日から12か月以内に、パリ条約による優先権の主張を伴う日本特許出願をすることができる(パリ条約第4条C(1))。優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を記載した書類を、最先の優先日から1年4か月または優先権の主張を伴う特許出願の日から4か月の期間が満了する日のいずれか遅い日までの間に、特許庁長官に提出しなければならない(特許法第43条第1項、特許法施行規則第27条の4の2第3項第1号)。優先権主張書の提出は、特許出願の願書に所定の事項を記載することで、省略することができる(特許庁「出願の手続」第二章第十二節「優先権主張に関する手続」)。また、最先の優先日から1年4か月以内に、特許庁長官に、優先権証明書類を提出しなければならない(特許法第43条第2項)。

 ただし、日本国特許庁と一部の外国特許庁、機関との間では、優先権書類の電子的交換を実施しており、出願人が所定の手続を行うことで、パリ条約による優先権主張をした者が行う必要がある書面による優先権書類の提出を省略することが可能となっている(特許法第43条第5項)。

<参考URL>
特許庁:優先権書類の提出省略について(優先権書類データの特許庁間における電子的交換について)
https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/yusen/das/index.html

2. インドにおける特許出願の出願書類(パリルート)
2-1. 出願書類
 特許法および特許規則にて規定された以下の書面を提出する(インド特許法第7条、インド特許庁実務及び手続マニュアル03.04.01)。

・願書(様式1)
・完全明細書(特許請求の範囲、要約および必要な図面含む)(様式2)
・外国出願に関する情報の陳述・宣誓(様式3)(インド出願日から6か月以内)
・発明者である旨の宣誓(様式5)
・出願人としての資格の証明(インド出願日から6か月以内)
・委任状(様式26)(特許代理人を通じて提出される場合)(インド出願日から3か月以内)

(1) 願書
 願書は、様式1※1によって作成する(インド特許庁実務及び手続マニュアル03.04.01)。
※1 様式1は、インド特許規則の最後の「様式一覧」に掲載されている。以下の様式も同様である。
 様式1(英語):https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/ev/forms/Form_1.pdf

(2) 完全明細書
 完全明細書は、様式2※2によって作成する(インド特許規則13(1))。
※2 様式2(英語):https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/ev/forms/Form_2.pdf

 完全明細書には、発明を記載して、発明に係る主題を十分に表示する名称を頭書しなければならない(インド特許法第10条(1))。

 また、完全明細書は、発明に係る以下の内容を備えなければならない(インド特許法第10条(4))。
 (a) 発明の作用または用途、およびその実施の方法を十分かつ詳細に記載する。
 (b) 出願人が知り得ている、出願人が保護を請求する権利を有する発明を実施する、最善の方法を開示する。
 (c) 保護を請求する発明の範囲を明確にする1または2以上の請求項をもって完結する。発明が図面による説明を必要とする場合、図面には明細書に記載される請求項中の構成要素の後に括弧で括った参照番号を記載しなければない(インド特許規則13(4))。
 (d) 発明に関する技術情報を提供する要約を添付しなければならない。
 要約書の冒頭に発明の名称を記載しなければならない(インド特許規則13(7)(a))。要約書中の、図面により明示される主要な特徴の各々に、括弧で括った参照番号を記載しなければならない(インド特許規則13(7)(d))。また、要約書は150語を超えてはならない(インド特許規則13(7)(c))。

 なお、特許出願に仮明細書を添付したときは、完全明細書を出願日から12か月以内に提出しなければならない(インド特許法第9条(1))。自己の発明が論文で開示できる段階にはあるが、最終段階には達していないと認めた場合、出願人は、書面による説明の形式により発明の開示を準備し、発明を説明する仮明細書として文書をインド特許庁に提出することができる(インド特許庁実務及び手続マニュアル05.02)。

(3) 外国出願に関する情報の陳述・宣誓
 外国出願に関する陳述書および宣誓書は、様式3※3により作成しなければならない(インド特許規則12(1))。
※3 様式3(英語):https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/ev/forms/Form_3.pdf

 外国出願に関する情報の陳述書と宣誓書は、以下の内容による(インド特許法第8条(1))。
(a) 特許出願に係る発明と同一または実質的に同一の発明を外国に特許出願している場合の、外国出願の明細事項を記載した陳述書。
(b) 陳述書の提出後、所定の期間内に外国にした、同一または実質的に同一の発明に係る他の各出願(ある場合)について、インドにおける特許付与日まで、必要とされる明細を書面で随時長官に通知し続ける旨の宣誓書。

 陳述書および宣誓書を提出する期間は、出願日から6か月である(インド特許規則12(1A))。宣誓書に基づいて提出する、出願時に入手できなかった外国出願の明細事項は、従来、外国出願の出願時から6か月以内に提出するとされていたが、2024年のインド特許規則の改正によって、最初の拒絶理由通知の発送の日から3か月以内とされた(インド特許規則12(2))。

(4) 発明者である旨の宣誓
 出願人が、出願に係る発明を所有している旨を明示しかつ、真正かつ最初の発明者である旨主張する者の宣誓を提出しなければならない(インド特許法第7条(3))。発明者である旨の宣誓書は、様式5※4による(インド特許規則13(6))。
※4 様式5(英語):https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/ev/forms/Form_5.pdf

(5) 出願人としての資格の証明
 出願が、発明についての特許出願権の譲渡によって行われるときは、出願とともにまたは出願後6か月以内に、出願権についての証拠を提出しなければならない(インド特許法第7条(2)、インド特許規則10)。この出願権の証拠は、様式1による出願書の末尾にされる裏書または別の譲渡証書とする(インド特許庁実務及び手続マニュアル03.04.01)。

(6) 委任状
 代理人を通じて出願手続きを行う場合、出願人の署名による委任状(様式26※5)の提出が要求される。委任状は、出願日から3か月の期間内に提出しなければならない(インド特許規則135(1))。
※5 様式26(英語):https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/ev/forms/Form_26.pdf

2-2. 手続言語
 書類の作成は、ヒンディー語または英語による(インド特許規則9(1))。

2-3. 手続言語以外の明細書での出願日確保の可否
 ヒンディー語または英語以外で書類を作成することはできない(インド特許規則第9(1))。

2-4. 優先権主張手続
 外国に最初に出願をした日から12か月以内に、パリ条約による優先権の主張を伴うインド特許出願をすることができる(インド特許法第135条(1))。優先権主張を行う場合は、特許出願に完全明細書を添付し、最初の出願の出願日および国名、その出願日よりも前に他国に出願していない旨を記載することが要求される(インド特許法第136条(1))。
 出願人は、長官から要求されたときは、その通知の日から3か月以内に優先権証明書(またはDASコード)を提出しなければならない(インド特許法第138条(1)、インド特許規則121、長官通知2018/63)。優先権証明書が外国語で記載されている場合、優先権証明書の認証された英訳文を提出する必要がある(インド特許法第138条(2))。

日本とインドにおける特許出願書類・手続の比較

日本インド
出願書類所定の様式により作成した以下の書面を提出する。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・必要な図面
・要約書
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。
・願書
・完全明細書
・外国出願に関する情報の陳述・宣誓
・発明者である旨の宣誓
・出願⼈としての資格の証明
・委任状
手続言語日本語ヒンディー語または英語
手続言語以外の明細書での出願日確保の可否英語その他の外国語により作成した外国語書面を願書に添付して出願することができる。その特許出願の日から1年4か月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。不可
優先権主張手続優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を記載した書面を、最先の優先権主張日から1年4か月、またはその優先権主張を伴う出願から4か月の何れか遅い日までの間に、特許庁長官に提出しなければならない。

優先権証明書を基礎出願の日から1年4か月以内に特許庁長官に提出しなければならない。

ただし、日本国特許庁と一部の外国特許庁、機関との間では、優先権書類の電子的交換を実施しており、出願人が所定の手続を行うことで、パリ条約による優先権主張をした者が行う必要がある書面による優先権書類の提出を省略することが可能となっている。
特許出願に完全明細書を添付し、最初の出願の出願日および国名、その出願日よりも前に他国に出願していない旨を記載しなければならない。


出願人は、長官から要求されたときは、その通知の日から3か月以内に優先権証明書(またはDASコード)を提出しなければならない)。また、優先権証明書が外国語で記載されている場合、優先権証明書の認証された英訳文を提出する必要がある。
■ソース
・日本特許法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000121
・特許法施行規則
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335M50000400010
・特許庁「出願の手続」第二章第十二節「優先権主張に関する手続」
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/document/syutugan_tetuzuki/02-12.pdf
・インド特許法(英語、2017年6月23日までの全ての修正を含む)
https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/ev/sections-index.html
・インド特許法(日本語、2017年6月23日版)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/india-tokkyo.pdf
・2003年インド特許規則(英語、2024年3月15日までのすべての修正を含む)
https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/ev/rules-index.html
・2003年インド特許規則(日本語、2021年9月21日改正)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/india-tokkyo_kisoku.pdf
・インド特許庁実務及び手続マニュアル(3.0版、2019年11月26日)
(英語)https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/Images/pdf/Manual_for_Patent_Office_Practice_and_Procedure_.pdf
・インド特許庁実務及び手続マニュアル(01.11版、2011年3月22日)
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/in/ip/pdf/201103_tokkyo_01.pdf
・長官通知2018/63(2018年3月12日)(WIPO DASの運用開始公告)
https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/News/397_1_WIPO_Digital_Access_Service.pdf
・パリ条約
(日本語)https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/paris/patent/chap1.html
■本文書の作成者
サンガムIP
■協力
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2024.10.03

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