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日本とインドにおける特許審査請求期限の比較
2024年11月28日
■概要
日本における特許の審査請求期限は、日本出願日(優先権主張の有無にかかわらず)から3年であり、インドにおける特許の審査請求期限は出願日(優先権主張を伴う場合には優先日)から31か月である。日本とインドの審査請求期限に関する規定を比較紹介する。また、審査請求後に手続可能である早期審査に関連する規定を併せて紹介する。■詳細及び留意点
1. 日本における審査請求期限
1-1. 審査請求
日本において特許出願の審査を受けるためには、出願審査の請求を行う必要がある。出願審査の請求は、出願日から3年以内に行うことができ(日本特許法(以下「特許法」という。)第48条の3第1項)、この期限内に出願審査の請求がされない場合は、その特許出願は取下げられたものとみなされる(特許法 第48条の3第4項)。ただし、所定の期間内に出願審査の請求がなされなかったことにより特許出願が取り下げられたものとみなされた場合であっても、その期間を徒過したことについて「故意によるものでない」ときは、出願審査の請求をすることができるようになった日から2か月以内であって、期間経過後1年以内に限り、出願審査の請求を行うことができる(特許法 第48条の3第5項)。
出願が、国内優先権の主張を伴う場合や、パリ条約による優先権の主張を伴う場合においても、請求期間の起算日は、優先日(先の出願の出願日)ではなく、優先権主張を伴う出願(後の出願)の実際の出願日である(工業所有権法逐条解説 特許法 第48条の3趣旨)。
PCTルートの場合は、国内書面を提出し、手数料の納付を行った後(外国語特許出願である場合はさらに翻訳文を提出した後)でなければ、出願審査の請求をすることができない(特許法 第184条の17)。この場合、国際出願は国際出願日に出願された特許出願とみなされるので(特許法 第184条の3第1項)、審査請求期限は国際出願日から3年である。
また、特許出願の分割に係る新たな特許出願、意匠登録出願または実用新案登録出願の変更に係る特許出願、実用新案登録に基づく特許出願については、原出願から3年の期間経過後であっても、分割または変更による特許出願の日から30日以内に限り、出願審査の請求をすることができる(特許法第48条の3第2項)。
なお、出願審査の請求は、出願人だけでなく、第三者も行うことができる(特許法第48条の3第1項)。
日本特許法 第48条の2 特許出願の審査 特許出願の審査は、その特許出願についての出願審査の請求をまつて行なう。 |
日本特許法 第48条の3 出願審査の請求 特許出願があつたときは、何人も、その日から三年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。 (第2項から第3項省略) 4 第一項の規定により出願審査の請求をすることができる期間内に出願審査の請求がなかつたときは、この特許出願は、取り下げたものとみなす。 5 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、出願審査の請求をすることができる。ただし、故意に、第一項に規定する期間内にその特許出願について出願審査の請求をしなかつたと認められる場合は、この限りでない。 (第6項以降省略) |
1-2. 優先審査
出願公開後に特許出願人でない者が業として特許出願の発明を実施している場合には、出願人または特許出願の発明を実施している者は、優先審査を受けるために、優先審査の事情説明書を提出することができる(特許法 第48条の6)。特許庁長官が必要と認める場合には、その出願は、他の出願に優先して審査を受けることができる。
事情説明書には、特許出願の発明の実施状況等を記載し、根拠となる書類または物件を添付することができる(日本特許法施行規則 第31条の3)。
1-3.早期審査
出願人は、早期審査の申請により、一定の要件の下で通常に比べて早期に特許出願の審査を受けることができる(特許出願の早期審査・早期審理ガイドライン)。これは法定されている優先審査とは異なり特許庁における運用であり、以下の要件を満たす出願が対象とされる。
(1) 出願審査の請求がなされていること
(2) 以下のいずれか1つの条件を満たしていること
・中小企業、個人、大学、公的研究機関等の出願
・外国関連出願
・実施関連出願
・グリーン関連出願
・震災復興支援関連出願
・アジア拠点化推進法関連出願
(3) 特許法第42条第1項の規定により取下げとならないものであること
(4) 代理人が弁理士、弁護士または法定代理人のいずれかに該当すること
2. インドにおける審査請求
2-1. 審査請求
インドにおいて特許出願の実体審査を受けるためには、実体審査請求を行う必要がある(インド特許法 第11B条(1))。
実体審査請求は、出願日から、または優先権主張を伴う出願は原出願の優先日から31か月以内に行うことができる(インド特許規則 24B(1)(i))。従来、審査請求期間は、出願日または優先日から48か月以内とされていたが、2024年3月15日施行のインド特許規則の改正によって短縮された。
期限内に実体審査請求がされない場合は、その特許出願は取り下げられたものとみなされる(インド特許法 第11B条(4))。
なお、インドにおいて実体審査請求を行うことができるのは、出願人または利害関係人である(インド特許法 第11B条(1))。
インド特許法 第11B条 審査請求 (1) 如何なる特許出願についても、出願人または他の利害関係人が所定の期間内に所定の方法により審査請求をしない限り、審査しないものとする。 ((2) 以下省略) |
インド特許規則 24B(1)(i) 出願の審査 第11B条に基づく審査請求は、様式18により、出願の優先日又は出願日の何れか先の日から31月以内にしなければならない。 ((1)(ii)以下省略) |
2-2. 早期審査請求
インドにおいて出願人は、下記のいずれかの理由に基づき、所定の手数料を添えて早期審査の請求をすることができる。早期審査の請求は、電子送信によって行わなければならない(インド特許規則 24C(1)))。
(1) 出願に関する理由
・国際出願であって、インドが管轄国際調査機関として指定されているか、または国際予備審査機関として選択されている。
・中央政府の各省庁の長からの要請に基づいて、中央政府が通知した分野に関連する出願である。
(2) 出願人に関する理由
・スタートアップ企業である。
・小規模事業体である。
・自然人であり、かつ女性である。出願人が複数の場合は、全てが自然人であり、かつ少なくとも一人が女性である。
・政府の各省庁である。
・政府により所有または管理されている、国法、地域法または州法により設立された機関である。
・2013年会社法(18 of 2013)第2節の条項(45)に定義される国有会社である。
・政府によって全額または実質的に資金提供されている機関である。
・出願人がインド特許庁と外国特許庁との間の協定に従って特許出願を処理するための取決めに基づく資格を有する。
◆日本とインドの特許審査請求期限を比較すると、以下のようになる。
日本 | インド | |
---|---|---|
提出期間 | 3年 | 31か月 |
基準日 | ・優先権主張の有無に関わらず日本の出願日 | ・インドの出願日 ・優先権が主張されている場合は優先日 |
■ソース
・日本特許法https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000121 ・日本特許法施行規則
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335M50000400010 ・「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕」「特許法」
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/kaisetu/kogyoshoyu/document/chikujokaisetsu22/tokkyo.pdf ・特許出願の早期審査・早期審理ガイドライン(令和6年1月)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/document/index/guideline.pdf ・インド特許法(英語、2021年8月13日施行)
https://www.indiacode.nic.in/bitstream/123456789/1392/1/AA1970___39.pdf ・インド特許法(日本語、2021年8月13日施行)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/india-tokkyo.pdf ・2003年インド特許規則(英語、2024年3月15日までのすべての修正を含む)
https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/ev/rules-index.html ・2003年インド特許規則(日本語、2021年9月21日改正)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/india-tokkyo_kisoku.pdf
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2024.08.14