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マレーシアにおける特許・実用新案・意匠年金制度の概要
2024年11月21日
■概要
マレーシアにおける特許権の権利期間は、出願日が2001年8月1日以降の場合、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である。出願日が2001年8月1日より前の場合は、権利期間は出願日から20年もしくは特許付与日から15年のいずれか長い方となる。年金の納付義務は、特許の登録後、登録日(特許付与日)を起算日として第2年度分から発生し、特許付与日から2 年およびその後各年の満了日前12か月の間に所定の年金を納付しなければならない。実用新案権の権利期間は、延長手続を行うことにより出願日から最長20年である。意匠権の権利期間は、延長手続を行うことにより出願日もしくは優先権主張日から最長25年である。■詳細及び留意点
1. 特許権
1-1. 存続期間
マレーシアにおける特許権の権利期間は、特許出願が行われた日によって次のように異なっている。出願日が2001年8月1日を含み同日以降の場合、権利期間は出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である。出願日が2001年8月1日より前の場合は、権利期間は出願日から20年もしくは特許付与日から15年のいずれか長い方となる。権利期間の延長に関する規定はない(マレーシア特許法第35条(1)、(1B)、(1C))。
1-2. 年金の納付期限
年金の納付義務は、特許の登録後、登録日(特許付与日)を起算日として第2年度分から発生し、特許付与日から2 年およびその後各年の満了日前12か月の間に所定の年金を納付しなければならない (マレーシア特許法第35条 (2))。
1-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
納付期限日までに年金納付が行われなかった場合、納付期限日から6か月以内であれば年金の追納が可能である。その場合、所定の年金金額に加えて割増手数料を同時に納付しなければならない(マレーシア特許法第35条(2))。
1-4. 権利回復制度
追納期間を超えて年金が納付されなかった場合や割増手数料の納付漏れがあった場合、権利は消滅する(マレーシア特許法第35条(3))。年金の未納により権利が消滅した場合は、公報にその旨が掲載されるが、公報に公告された日から12か月以内であれば権利回復の請求を行うことが可能である(マレーシア特許法(2022年改正法)第35条A(1))。権利を回復するには、未納分の年金と割増手数料に加えて回復手数料を納付すること、および登録官に対し、登録官が定めた様式に期限内に年金を納付することができなかった理由等を記しし申請し認定されなければならない(マレーシア特許法(2022年改正法)第35条A(2)、マレーシア特許規則(2022年改正規則) 規則33A(1)およびマレーシア特許規則 規則33A(2))。
1-5. 年金の誤納
意図しない特許権に対して誤って年金を納付した場合や、所定の納付金額を超えて納付した場合など、納付された年金は返金されない(マレーシア特許規則 規則33(3))。
1-6. その他
マレーシア国内に居所を有していない者は、マレーシアの特許代理人に年金の納付手続を委任する必要がある。代理人に納付を委任する場合、委任状の提出と手数料の納付が必要となる(マレーシア特許法(2022年改正法)第86条(5)、マレーシア特許規則 規則45Bおよび45C、マレーシア知的財産公社HP 特許料金表 https://www.myipo.gov.my/en/patent-forms-and-fees/)。
2. 実用新案権
2-1. 存続期間
実用新案権の権利期間は、出願日から10年である(マレーシア特許法第2附則[第17A条]で適用される第35条(1))。なお、期間の満了前に5年の追加期間を求める延長申請を2回提出することができる(マレーシア特許法第2附則[第17A条]で適用される第35条(2))。すなわち、10年および15年の権利期間満了前に、それぞれ5年分の権利期間の延長手続(延長申請および年金納付)を行うことで、最長20年の権利期間を得ることができる。
2-2. 年金の納付期限
年金の納付義務は、実用新案の登録後、登録日(実用新案証発行日)を起算日として第3年度分から発生し、登録日から3年およびその後各年の満了日前12か月の間に所定の年金を納付しなければならない(マレーシア特許法第2附則[第17A条]で適用される第35条(1A)、(4))。
延長手続には、権利者の宣誓供述書、当該実用新案が商業上もしくは工業上使用されていることを示すもの、または不使用の事情を十分に説明するものをマレーシア知的財産公社に提出し、延長手数料(年金)を納付しなければならない(マレーシア特許法第2附則[第17A条]で適用される第35条(3))。年金納付期限日は登録応当日である一方、延長手続の期限日は出願応当日である点に注意が必要である。
2-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
特許権と同様に、追納制度がある(マレーシア特許法第2附則[第17A条]で適用される第35条(4)、(5))。
2-4. 権利回復制度
特許権と同様に回復制度がある(マレーシア特許法第17A条で適用されるマレーシア特許法(2022年改正法)第35条A(1))。
2-5. 年金の誤納
意図しない実用新案権に対して年金を誤って納付してしまった場合や、所定の納付金額を超えて納付を行った場合など、納付された年金は返金されない(マレーシア特許規則 規則45(3)で適用される規則33(3))。
2-6. その他
マレーシア国内に本拠も居所も有していない者は、マレーシアの特許代理人に年金の納付手続を委任する必要がある。代理人に納付を委任する場合、委任状の提出と手数料の納付が必要となる(マレーシア特許法第17条A(1)で適用される第86条(5)、マレーシア特許規則 規則45(3)で適用される規則45Bおよび45C、マレーシア知的財産公社HP 特許料金表 https://www.myipo.gov.my/en/patent-forms-and-fees/)。
3. 意匠権
3-1. 存続期間
意匠権の権利期間は出願日もしくは優先権を主張している場合は優先権主張日から5年である(マレーシア意匠法第25条(1)および第17条)。なお、権利期間の満了前に5年の追加期間を求める延長申請を4回提出することができる(マレーシア意匠法(英語)第25条(2))。すなわち、5年、10年、15年、20年の権利期間満了前にそれぞれ5年分の権利期間の延長手続(延長申請および年金納付)を行うことで、出願日(優先権主張がある場合は優先日)から最長25年の権利期間を得ることができる。
3-2. 年金の納付期限
年金は延長手続を行う場合に発生する。年金納付期限の起算日は、出願日もしくは優先権を主張している場合は優先権主張日である(マレーシア意匠法第25条(1)および第17条)。延長手続を行う場合は、起算日から5年、10年、15年、20年の権利期間満了前にそれぞれ5年分の権利期間の延長手数料(年金)を支払う必要がある(マレーシア意匠法(英語)第25条(2))。
3-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
納付期限日までに延長手数料(年金)納付が行われなかった場合、納付期限日から6か月以内であれば延長手数料(年金)の追納が可能である。その場合、未納の延長手数料(年金)に加えて所定の追徴金を同時に納付しなければならない(マレーシア意匠法第25条(3))。追徴金は納付期限日から時間が経過するにしたがって増額する(マレーシア意匠規則 附則1 手数料 第1部 番号2 (規則23)の項目)。
3-4. 権利回復制度
追納期間を超えて延長申請がされなかった場合または延長手数料が納付されない場合、権利は失効する。年金の未納により権利が失効した場合は、公報にその旨が掲載されるが、公報掲載日から1年以内であれば権利回復の請求を行うことが可能である。権利を回復するためには、延長手続できなかった事情を記した陳述書を提出し、未納分の年金に加えて回復費用、追徴金を納付し、登録官に認定される必要がある(マレーシア意匠法第25条(4)、第26条(1)、マレーシア意匠規則 規則24(1)、マレーシア意匠規則 附則1 手数料 第1部 番号3の項目)。
3-5. 年金の誤納
意図しない意匠権に対して延長手数料(年金)を誤って納付してしまった場合や、所定の納付金額を超えて納付を行った場合など、納付された延長手数料(年金)は返金されない(マレーシア意匠規則23(5))。
3-6. その他
延長手数料(年金)の金額は、意匠の数によって変動する(マレーシア意匠規則 附則1 手数料 第1部2の項目)。出願人がマレーシア国内に居住または主要事業所を有しない場合は、代理人を選任し、年金納付手続を委任する必要がある(マレーシア意匠法第14条(2))。延長手数料(年金)の納付はマレーシア国内の法曹資格を有する者であれば可能であるが、代理人に納付を委任する場合、委任状の提出と手数料の納付が必要となる(マレーシア意匠規則 規則32、規則33、マレーシア知的財産公社HP 意匠料金表 https://www.myipo.gov.my/en/industrial-design-form-fees/?lang=en)。
■ソース
・マレーシア1983年特許法(2006年8月16日施行)(日本語)https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/malaysia-tokkyo.pdf
※上記日本語版は、1986年特許改正法~2006年特許改正法に対応したものであるが、2022年特許改正法には対応していないため、2023年更新版(英語)を参照し、読み替えることが必要である。
・マレーシア特許改正法(2023年6月30日更新版)(英語)
https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2023/11/Patents-Act-1983-Act-291-As-at-30-June-2023-Online-version-of-updated.pdf
・マレーシア2011年特許規則(2011年2月15日施行)(日本語)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/malaysia-tokkyo_kisoku.pdf
※特許法と同様に、次の2022年特許改正規則を参照して、読み替える必要がある。
・マレーシア特許改正規則(2022年3月18日施行)(マレー語、英語)
https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2022/03/PERATURAN-PERATURAN-PATEN-PINDAAN-2022.pdf
・マレーシア意匠法(2013 年 7 月 1 日施行)(日本語)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/malaysia-ishou.pdf
・マレーシア意匠改正法(2013 年 7 月 1 日施行)(英語)
https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2016/09/id-act-amendment2013eng.pdf
・マレーシア意匠規則(2013 年 7 月 1 日施行)(日本語)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/malaysia-ishou_kisoku.pdf
・マレーシア意匠改正規則(2013 年 7 月 1 日施行)(マレー語、英語)
https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2016/09/pua_20130624-1-1.pdf
・マレーシア知的財産公社HP 特許料金表
https://www.myipo.gov.my/en/patent-forms-and-fees/
・マレーシア知的財産公社HP 意匠料金表
https://www.myipo.gov.my/en/industrial-design-form-fees/?lang=en
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2024.07.03