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ベトナムにおける特許・実用新案・意匠年金制度の概要
2024年11月07日
■概要
ベトナムにおける特許権の権利期間は、出願日(国際特許出願日)から20年である。特許査定が下されると、特許を登録するための要件として、初年度の年金納付が登録料の納付とともに求められる。2年度以降の年金は、各年の前年度の満了前6か月以内に納付する。特許権の年金が、納付期限までに納付されなかった場合、納付期限日から6か月以内であれば追納が可能である。追納期間内に年金納付がなされなかった場合、権利は失効する。ベトナムには、年金の未納が原因で失効した特許権の回復制度はない。実用新案の権利期間は、出願日から10年であり、意匠の権利期間は、出願日から最長で15年である。■詳細及び留意点
1. 特許権
1-1. 存続期間
ベトナムにおける特許権は登録により発生し、権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である(ベトナム知的財産法(以下「知的財産法」という。)第93条第2項)。権利期間の延長制度は存在しない。
1-2. 年金の納付期限
特許査定が下されると、特許を登録するための要件として、登録許可の通知の日から1か月以内に初年度※1の年金(権利の有効性を維持するための手数料)を登録料とともに納付することが求められる(科学技術省通達(以下「通達」という。)01/2007/TT-BKHCN 15.7 a)(iii))。
2年度以降の年金は、各年の前年度の満了前6か月以内に納付する(知的財産法第94条第1項、通達01/2007/TT-BKHCN 20.3)。
※1 ここでの「年度」とは、特許の登録日を起算日とした、年金納付の期限を定める年度をいう。
ベトナムにおいて恒久的に居住していない外国人は、工業所有権代理人を通して特許手続を行わなければならないので(知的財産法第89条第2項)、日本の出願人は、ベトナムの工業所有権代理人に依頼して年金納付を行う必要がある。
1-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
納付期限までに年金納付が行われなかった場合、納付期限日から6か月以内であれば年金の追納が可能である(通達01/2007/TT-BKHCN 20.3)。その場合、所定の年金金額に加えて追徴金を同時に納付しなければならない。
1-4. 権利回復制度
追納期間内に年金納付がされなかった場合、権利は失効する(知的財産法第95条第1項a))。ベトナムには、年金の未納が原因で失効した特許権の権利回復の制度はない。
上記の通り、追納期間経過までに年金を納めない場合、特許権は失効するが、権利を放棄したい旨をベトナム特許庁に宣言することにより、自主的に放棄を行うことも可能である(知的財産法第95条第1項b))。
1-5. 年金の誤納
所定の納付金額を超えて年金を納付した場合、返還の請求を行うことができる(通達01/2007/TT-BKHCN 8.3 a))
2. 実用新案権
2-1. 存続期間
実用新案権※2は登録により発生し、権利期間は、出願日から10年である(知的財産法第93条第3項)。権利期間の延長制度は存在しない。
※2 ここでの実用新案とは、知的財産法第58条第2項で規定される「実用新案特許」をいう。したがって、実用新案の年金制度は、権利期間を除き特許とほぼ同様である。
2-2. 年金の納付期限
登録査定がなされると、実用新案を登録するための要件として、登録許可の通知の日から1か月以内に初年度の年金を登録料とともに納付することが求められる(通達01/2007/TT-BKHCN 15.7 a)(iii))。
2年度以降の年金は、納付期限日から6か月以内に納付する(知的財産法第94条第1項、通達01/2007/TT-BKHCN 20.3)。
ベトナムにおいて恒久的に居住していない外国人は、工業所有権代理人を通して実用新案手続を行わなければならないので(知的財産法第89条第2項)、日本の出願人は、ベトナムの工業所有権代理人に依頼して年金納付を行う必要がある。
2-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
年金の追納制度は、特許と同じである(通達01/2007/TT-BKHCN 20.3)。
2-4. 権利回復制度
追納期間を徒過した場合の権利回復制度は、特許と同じである(知的財産法第95条第1項a)、b))。
2-5. 年金の誤納
年金の誤納返還に関する制度も特許と同じである(通達01/2007/TT-BKHCN 8.3 a))。
3. 意匠権
3-1. 存続期間
意匠権は登録により発生し、権利期間は、出願日から5年で満了する。ただし、5年を単位として更新を2回行うことができるので、最長で出願日から15年の権利となる(知的財産法第93条第4項、通達01/2007/TT-BKHCN 20.4 a))。
3-2. 年金の納付期限
登録査定がなされると、意匠を登録するための要件として、登録許可の通知の日から1か月以内に登録料(最初の5年分の年金を含む)を納付することが求められる(通達01/2007/TT-BKHCN 15.7 a)(iii)、15.7 c))。
5年度または10年度に更新手続を行う場合、その手続は、権利の有効期間の満了前6か月以内に行わなければならない(通達01/2007/TT-BKHCN 20.4 b))。更新手続と同時に更新料(次の5年分の年金を含む)を納付する(知的財産法第94条第2項、通達01/2007/TT-BKHCN 20.4 c)(iv))。
ベトナムにおいて恒久的に居住していない外国人は、工業所有権代理人を通して意匠手続を行わなければならないので(知的財産法第89条第2項)、日本の出願人は、ベトナムの工業所有権代理人に依頼して年金納付を行う必要がある。
3-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
納付期限までに更新料の納付が行われなかった場合、納付期限日から6か月以内であれば追納手続が可能である。その場合、所定の更新料に加えて追徴金を同時に納付しなければならない(通達01/2007/TT-BKHCN 20.4 b))。
3-4. 権利回復制度
追納期間内に更新料の納付がされなかった場合、権利は失効する(知的財産法第95条第1項a))。ベトナムには更新料の未納が原因で失効した意匠権の権利回復の制度はない。
3-5. 年金の誤納
所定の納付金額を超えて年金を納付した場合、返還の請求を行うことができる(通達01/2007/TT-BKHCN 8.3 a))。
■ソース
・ベトナム知的財産法(英語)https://www.wipo.int/wipolex/en/legislation/details/12011
(日本語)https://www.jica.go.jp/Resource/project/vietnam/059/materials/lqgpft0000005lvu-att/intellectual_property_law_2022.pdf
・科学技術省通達01/2007/TT-BKHCN
(ベトナム語)https://ipvietnam.gov.vn/documents/20182/1227912/8.1. Thông tư số 01.2007.TT.BKHCN.pdf/52867dd8-3191-481a-8ec8-117bb0b25fc0
(英語)https://www.wipo.int/wipolex/en/legislation/details/5013
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2024.07.16