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タイにおける特許・実用新案・意匠年金制度の概要

2024年10月31日

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■概要
タイにおける特許権の権利期間は、出願日(国際特許出願日)から20年である。年金の納付義務は、出願日(国際特許出願日)を起算日として5年度に発生する。出願から特許査定まで4年以上を要した場合は、特許査定後に5年度から査定を受けた年までの累積年金を納付する。その後の年金納付は、各年毎に当該年度の開始後60日以内にしなければならない。実用新案権の権利期間は、出願日から最長10年である。登録になると出願日を起算日として6年の存続期間が設定され、特許と同じく、登録査定後に年金納付が求められる。その後、6年度と8年度の満了前に、各2年分の存続期間の延長手続を行うことで、計10年の権利期間を得ることができる。意匠権の権利期間は、出願日から10年である。登録時の年金納付、およびその後の各年毎の年金納付は特許と同じである。
■詳細及び留意点

1. 特許権
1-1. 存続期間
 タイにおける特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である(タイ特許法(以下「特許法」という。)第35条)。権利期間の延長制度は存在しない。

1-2. 年金の納付期限
 年金の納付義務は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)を起算日として5年度※1から発生するが、出願が特許査定を受けた場合のみ納付が求められる(特許法第43条第1段落)。したがって、出願から4年以上経過した場合であっても、審査中は年金納付手続は不要である。出願から特許査定まで4年以上を要した場合は、特許査定後に5年度から査定を受けた年までの年金を、特許の付与後60日以内に納付する必要がある(特許法第43条第2段落)。これを累積年金と言う※2。その後の年金納付は、各年毎に当該年度の開始後60日以内にしなければならない(特許法第43条第1段落)。

※1 ここでの「年度」とは、出願日を起算日とする特許期間における年度をいう。

※2 累積年金とは、年金納付義務が特許査定前から存在し、かつ特許査定が下されてから納付が開始される国において、登録の手続の際に納付すべき年金のことを指す。指定された年度から査定された年度までをカバーする年金をまとめて納付し、それ以降は年払いに移行する。なお、査定された時期と年金納付日の関係によっては、指定された年度から査定された年度の次の年度の分までを納付することになる場合もある。

 タイの居住者でない者が年金を納付する場合は、その者の代理人として、タイ国内で行為する者として長官により登録された代理人を任命しなければならない(特許法(B.E.2522)に基づく省令第21号(B.E.2542)(以下「省令第21号」という。)第13条第1段落)。

1-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 1-2に記載の定められた期間内に年金納付がなされなかった場合、納付期間の満了後120日以内であれば、所定の年金金額に加えて年金金額に対して30パーセントの割増手数料を同時に納付することを条件に年金の追納が可能である(特許法第43条第3段落)。

1-4. 権利回復制度
 1-3に記載の定められた追納期間内に、年金および割増手数料が納付されなかった場合、タイ特許庁長官は、特許の取消に関する報告書を特許委員会※3に提出しなければならない(特許法第43条第4段落)。
 特許委員会に対する手続として、特許権者は、特許の取消命令を受領した日から60日以内に、定められた期間内に年金および割増手数料を納付できなかったことが止むを得ない事情によるものであったことを記載した要請書を、特許委員会に提出することができる(特許法第43条第5段落)。要請書が提出された場合、特許委員会は、事情に応じて納付期間を延長するか、または特許を取り消すことができる。

※3 商務担当国務次官を議長とし、内閣に指名された科学,工学,工業,工業意匠,農業,薬学,経済および法律の分野における資格を有する12名以下の委員からなる委員会を言う(特許法第66条)。特許委員会は、審判請求についての決定等に関する権限および義務を有する(特許法第70条)。

 追納期間経過までに年金を納めない場合、特許権は消滅するが、権利を放棄したい旨を記した書面をタイ特許庁に提出することにより自発的に放棄する手続もある(特許法第53条)。

1-5. 年金の誤納
 意図しない特許権に対して年金を誤って納付してしまった場合の誤納返還に関する明確な規定はないが、全額を一括して前納した場合において、その後権利を放棄しても年金の払い戻しを受けることはできないとの規定はある(特許法第44条)。

2. 実用新案権
2-1. 存続期間
 実用新案権(タイ特許法第65条の2に規定される小特許の権利をいう。)の権利期間は、出願日から最長10年である(特許法第65条の7)。実用新案権の登録時には、出願日を起算日として6年の存続期間が設定される(特許法第65条の7第1段落)。その後、6年度と8年度の満了前90日に、それぞれ2年間の存続期間の延長手続を行うことで、計10年の権利期間を得ることができる(特許法第65条の7第2段落)。

2-2. 年金の納付期限
 実用新案の規定である特許法第65条の10において、特許の年金を規定する特許法第43条を準用しているので、実用新案の年金制度は、権利期間を除き特許とほぼ同様である。
 年金の納付義務は、出願日を起算日として5年度から発生するが、出願が登録査定を受けた場合のみ納付が求められる(特許法第65条の10で準用する第43条第1段落)。したがって、出願から4年以上経過した案件であっても、審査中は、年金納付手続は不要である。出願から登録査定まで4年以上を要した場合は、5年度から査定を受けた年までの年金を、実用新案の付与後60日以内に納付する必要がある(特許法第65条の10で準用する第43条第2段落)。これを累積年金と言う(前記※1を参照)。累積年金の納付後は、各年毎に年度の開始後60日以内に年金を納付しなければならない(特許法第65条の10で準用する第43条第1段落)。

 タイの居住者でない者が年金を納付する場合は、その者の代理人として、タイ国内で行為する者として長官により登録された代理人を任命しなければならない(省令第21号第24条で準用する第13条第1段落)。

2-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 年金の追納制度は、5年度と6年度の年金納付については特許と同じである(特許法第65条の10で準用する第43条第3段落)。6年度と8年度の満了前の存続期間の延長手続については、特許のような追納の規定は適用されない。

2-4. 権利回復制度
 追納期間を徒過した場合の権利回復制度は、5年度と6年度の年金納付については特許と同じである(特許法第65条の10で準用する第43条第4、5段落)。6年度と8年度の満了前の存続期間の延長手続については、特許のような権利回復の規定は適用されない。

 追納期間経過までに年金を納付しない場合、実用新案権は消滅するが、権利を放棄したい旨を記した書面をタイ特許庁に提出することにより自発的に放棄する手続もある(特許法第65条の10で準用する第53条)。

2-5. 年金の誤納
 年金の誤納返還に関する制度も特許と同じである(特許法第65条の10で準用する第44条)

3. 意匠権
3-1. 存続期間
 意匠権の権利期間は、出願日から10年である(特許法第62条)。権利期間の延長制度は存在しない。

3-2. 年金の納付期限
 意匠の規定である特許法第65条において、特許の年金を規定する特許法第43条を準用しているので、意匠の年金制度は、権利期間を除き特許とほぼ同様である。
 年金は、出願日を起算日として5年度から発生するが、出願が登録査定を受けた場合のみ納付が求められる(特許法第65条で準用する第43条第1段落)。したがって、出願から4年以上経過した案件であっても、審査中は、年金納付手続は不要である。出願から登録査定まで4年以上を要した場合は、5年度から査定を受けた年までの年金を、意匠の付与後60日以内に納付する必要がある(特許法第65条で準用する第43条第2段落)。これを累積年金と言う(前記※1を参照)。その後の年金納付は、各年度の開始後60日以内にしなければならない(特許法第65条で準用する第43条第1段落)。

 タイの居住者でない者が年金を納付する場合は、その者の代理人として、タイ国内で行為する者として長官により登録された代理人を任命しなければならない(省令第21号第23条で準用する第13条第1段落)。

3-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 年金の追納制度は、特許と同じである(特許法第65条で準用する第43条第3段落)。

3-4. 権利回復制度
 追納期間を徒過した場合の権利回復制度は、特許と同じである(特許法第65条で準用する第43条第4、5段落)。

 追納期間経過までに年金を納めない場合、意匠権は消滅するが、権利を放棄したい旨を記した書面をタイ特許庁に提出することにより自発的に放棄する手続もある(特許法第65条で準用する第53条)。

3-5. 年金の誤納
 年金の誤納返還に関する制度も特許と同じである(特許法第65条で準用する第44条)

■ソース
・タイ特許法(B.E.2542(1999年)3月21日法律(第3号)により改正されたB.E.2522(1979 年)3月11日法律 1999年9月27日施行)
(英語)https://www.wipo.int/wipolex/en/legislation/details/3807
(日本語)https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/thailand-tokkyo.pdf
・特許法(B.E.2522)に基づく省令第21号(B.E.2542)
(英語)https://www.wipo.int/wipolex/en/legislation/details/3809
(日本語)https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/thailand-tokkyo_kisoku.pdf
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会
■本文書の作成時期

2024.07.12

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