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中国における特許出願制度概要
2024年10月24日
■概要
特許の出願手続は、主に(1)出願、(2)方式審査、(3)出願公開、(4)実体審査、(5)登録・公告の手順で進められる。特許権の存続期間は、出願日から20年である。■詳細及び留意点
発明についての特許の出願手続は、上記フローチャートに示したように、主に、(1)出願、(2)方式審査、(3)出願公開、(4)実体審査、(5)登録・公告の手順で進められる。
(1)出願
出願書類は、願書、明細書およびその要約(必要時には図面を添付)、特許請求の範囲等である(中国専利法(以下「専利法」という。)第26条第1項、第3項)。
すべての書類は中国語で提出する必要があり、中国語でない場合は不受理となる(中国専利法実施細則(以下「実施細則」という。)第3条、第44条第1項第2号)。外国語出願制度はない。
日本と異なり、特許・実用新案の間での出願変更制度はない。ただし、同一の出願人が、同一の発明創造に対して特許と実用新案の双方を出願することは認められている(専利法第9条)※。この場合、実用新案権が終了する前に、出願人がその実用新案権を放棄した場合は、特許権の付与を受けることができる。
※ 同一出願人による特許と実用新案の同日出願については、下記の関連記事を参照されたい。
【関連記事】中国における特許/実用新案の同日出願について(2021年5月25日)https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19954/
パリ条約を利用した優先権主張は、第一国への出願から12か月以内にしなければならない(専利法第29条)。2023年の実施細則の改正により、優先権の回復規定が新設され、正当な理由がある場合は、期間の満了日から2か月以内に優先権の回復を請求することが可能になった(実施細則第36条)。
PCT出願の場合は、優先日より30か月以内に中国国内段階への移行手続きを行う必要がある。この期間は期限延長費を支払うことにより2か月延長できる(実施細則第120条)。2023年の実施細則の改正により、PCT出願に関する優先権の回復規定が新設され、出願人が国際段階において優先権の回復を請求しなかったか、または回復の請求が受理官庁に認められなかった場合でも、正当な理由があれば、国内段階移行日から2か月以内に優先権の回復を請求することが可能となった(実施細則第128条)。
(2)方式審査(中国語「初步审查(初歩審査)」)
形式的要件を中心に審査されるが、一部の実体的要件(不特許事由、発明の単一性等)も審査される(実施細則第50条第1項第1号)。
形式的要件等を満たしていないと判断された場合、拒絶理由通知書(中国語「审查意见通知书」)が発せられ、所定の期間内に不備を補正するよう求められる(実施細則50条第2項)。出願人が、補正をしない場合は、その出願は取り下げられたものとみなされる。
(3)出願公開
出願日(または優先日)から18か月経過後に公開される(専利法第34条)。
請求に基づき、早期公開も可能である(専利法第34条、実施細則第52条)。
(4)実体審査
出願日(または優先日)から3年以内に審査請求をすることにより、新規性、進歩性および産業上利用可能性等についての実体審査が行われる(専利法第35条)。この期間内に審査請求がなされなかった場合、出願は取り下げられたものとみなされる。
日本と異なり、中国において審査請求できるのは出願人のみである(第三者は審査請求できない。)。
出願人は、実体審査を請求する際、および実体審査に入る旨の通知を受領した日から3か月以内に、特許出願を自発的に補正(中国語「修改」または「补正(補正)」)することができる(実施細則第57条第1項)。書類の補正は、元の明細書および特許請求の範囲(中国語「原说明书和权利要求书记载的范围(原説明書と権利要求書記載の範囲)」)に記載した範囲を超えてはならない(専利法第33条)。
実体審査において、審査官が拒絶理由を発見した場合は、拒絶理由通知書等が出され、出願人との間で意見書・補正書(中国語「意见陈述书・补正书(意見陳述書・補正書)」)により応答がおこなわれる(専利法第37条)。出願人が、正当な理由なく期限を過ぎても応答しない場合、その出願は取り下げられたものとみなされる。
(5)登録・公告
特許要件を満たしていると判断された場合、特許査定(中国語「发明专利权的通知书(発明特許通知書)」)が出され、この通知の日から2か月以内に、登録手続を行わなければならない(専利法第39条、実施細則第60条第1項)。期限内に登録手続をしなかった場合は、権利が放棄されたものとみなされる(実施細則第60条第2項)。
登録手続を行う際には、特許登録料、および特許付与年の年金を納付しなければならない(実施細則第114条)。
特許権の存続期間は、出願日から20年(専利法第42条第1項)であり、出願日から計算する(審査指南第5部第7章2.1)。日本の存続期間の延長制度に該当する制度として、特許期間の補償制度がある(専利法第42条第2項、第3項)。
■ソース
・中国専利法(2020年改正)(中国語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/regulation20210601.pdf
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/20210601_jp.pdf
・中国専利法実施細則(2023年12月11日改正)
(中国語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/origin/admin20240120_1.pdf
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/admin/20240120_1.pdf
・中国専利審査指南(2023年改正)
(中国語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20240120_2.pdf
(日本語)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/20240120_1.pdf
■本文書の作成者
日本国際知的財産保護協会■本文書の作成時期
2024.07.08