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香港における指定商品・役務に関わる留意事項
2024年03月07日
■概要
指定商品および/または指定役務をどのように記載するかは、商標出願願書を作成する上で重要な事項となる。商標出願において指定される商品・役務は、ニース協定に基づく商品・役務の国際分類(ニース分類)にしたがい分類される。香港において商標出願を行う場合、ニース分類のアルファベット順リストに記載された商品・役務以外の文言も、認められる可能性はあるが、留意すべき点がある。■詳細及び留意点
1.出願分類
商標出願または商標登録により保護される指定商品・役務は、ニース分類としても知られる、ニース協定に基づく商品・役務の国際分類にしたがい分類される。
香港知的財産庁登録局(商標)は、指定商品・役務の分類に際して、ニース分類の最新版を使用している。本稿の執筆時点において、2023年1月1日から第12-2023版が使用されている。
指定商品・役務は、通常、ニース分類のアルファベット順リストにしたがって分類され、アルファベット順リストに記載されていない商品・役務が記載されている場合、その分類の判断は、ニース分類に定められた注釈(Explanatory Notes)と一般的注釈(General Remarks)にしたがって分類される。
香港知的財産庁登録局(商標)は、以下のような他国の商標庁により提供される商品・役務の分類に関する情報も参照する。
(a) EUIPO(欧州知的財産庁)http://euipo.europa.eu/ec2/
(b)IP Australia(オーストラリア知的財産庁)https://www.ipaustralia.gov.au/trade-marks/what-are-trade-marks/what-are-classes-of-goods-and-services/how-to-pick-classes-of-goods-and-services
(c)USPTO(米国特許商標庁)https://idm-tmng.uspto.gov/id-master-list-public.html
出願に際し、一区分における商品・役務の数に制限はない。一件の商標出願に含められる区分の数にも制限はない。ただし、オフィシャルフィーは、当該出願において申請されたニース分類の区分数に基づき課される。
2.指定商品・役務に関する審査
商標出願の指定商品・役務は、明瞭かつ簡潔な説明であって、国際分類に適合するものを含まなければならない(香港商標規則7(1)および(2))。かかる要件を充足していないと判断された場合は、不備通知が発行される(香港商標規則11(1)(a))。これに対し、2ヶ月以内(期限延長不可)に適切な商品・役務へ補正しなければならない(香港商標規則11(2))。
一部の商品・役務について適切に記載されている一方で、「本区分に属するその他すべての商品」や「その他すべての関連する役務」、「関連役務」といった広範または不明確な記述や、意図された商品・役務を判断することができないような曖昧な商品または役務の記述を含む出願についても不備通知が発行される(香港商標規則7(2))。
3.広範な用語および類見出し(クラスヘディング)
商標出願の指定商品・役務の特定の区分において、「全ての商品」、「全ての役務」のような広範な用語は明確ではないとみなされる(香港商標規則7)。また、「健康製品」、「顧問サービス」、「コンサルタントサービス」、「オンラインサービス」のような用語は、不明確な記述として受理されない。
なお、香港知的財産庁登録局(商標)は、ニース分類に記載された類見出しを使用して、商標出願をすることを認めている。
香港における判例法は、香港の現地裁判所の判決とともに、欧州連合司法裁判所(ECJ)を含む英国における判決を考慮する。「IP Translator」事件(英国弁理士会 vs 商標登録局(ECJ事件番号第C-307/10号))に関するECJの画期的判決にしたがい、当時の欧州共同体商標意匠庁(OHIM)が、共同体商標出願および登録についての商品・役務リストにおける類見出しの使用に関する長官通達第2/12号を発行したことが注目に値する。この通達は、商標出願または登録における類見出しの使用が、当該区分におけるすべての商品・役務に対する保護を与えるものではないため、出願人は、すべての商品・役務に対する保護を意図する場合は、その登録出願において、商品・役務を全て特定しなければならないことを明確にしている。
したがって、出願にかかる指定商品・役務の作成に際しては、広範な用語または類見出しを指定する場合、出願人にとって重要な具体的な商品・役務を出願時に含めることが重要である。なお、商標登録されている指定商品・役務の全部または一部が使用されていない場合には、第三者からの商標登録の取消請求により、3年間継続して不使用であることを理由として当該商品・役務の全部または一部についての登録を取り消す可能性がある(香港商標条例第52条(2)(a)および(6))。
4.多区分における類見出しまたは広範な商品または役務に関する出願
商標出願に、多区分における類見出しまたは多区分における広範な商品または役務が含まれる場合、香港知的財産庁登録局(商標)は、出願人の事業内容が、そうした全般的な商品または役務を対象としたものとは考えられないとの理由で、拒絶することができる。
このような場合、出願人は、申請された商品または役務に関連した商標の使用意図または現在の使用の正当性を示す証拠を提出することが要求される(香港商標規則7(4))。なお、出願されたすべての商品または役務についてではなく、その一部についてのみしか上記の正当性を示すことができない場合、当該商品または役務に限定しなければ、拒絶理由は解消しない。
5.商標が明らかに記述的であり、誤認を生じるおそれがある場合における指定商品の限定
商品または役務の特徴(例えば、性質、品質または地理的由来)を明らかに記述したり、消費者が誤認を生じたりするおそれの高い商標は、香港商標条例第11条(3)または(4)に基づき拒絶される。
最も一般的な例は、商品または役務について、名声を有する地名、または地理的由来を示すものとして使用されるシンボルを含んだ商標である。このような場合、消費者が誤認を生じるおそれがあるとする拒絶理由を回避するために、指定商品を限定しなければならない。例えば、第33類の「シャンパン(CHAMPAGNE)」という名称を含む商標は、指定商品を「シャンパン」のみに限定しなければならない。
6.登録商標である言葉
指定商品において、登録商標である言葉を使用してはならず、通常の商業用語に置き換えなければならない。例えば、「カラオケ(Karaoke)」は、「カラオケ装置付音声および映像装置(audio and video apparatus with sing along devices)」に、「ウォークマン(Walkman)」は「携帯用オーディオテーププレーヤーおよびレコーダー(handheld audio tape players/recorders)」に、「ジャグジー(Jacuzzi)」は「渦巻き風呂(whirlpool baths)」にそれぞれ置き換えなければならない。その他、登録商標とこれに対する代替用語案のさらなる例については、以下において確認することができる。
(https://www.ipd.gov.hk/filemanager/ipd/common/trade-marks/specifications_e.pdf)
7.小売および卸売サービス
第35類に分類される「小売サービス」は、小売される商品(例:「被服の小売)、または役務の提供方法(例:「グローバルコンピュータネットワークを介して提供される小売サービス」)を述べることにより、適切に定義しなければならない。「卸売サービス」についても同様である。
8.参考情報
香港知的財産庁登録局(商標)では「商標登録ワークマニュアル(TradeMarks Registry Work Manual)」において、商品・役務の分類(Classification)を含む登録実務に関してさらに詳細なガイドラインを示している。
■ソース
・ニース協定に基づく指定商品または役務の国際分類〔第12-2023版〕https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/kokusai_bunrui/kokusai_bunrui_12-2023.html
・欧州司法裁判所判決例
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A62010CJ0307&qid=1700118044720(英語)
・香港商標条例
https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap559!en(英語)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/hk/law/pdf/hong_kong-shouhyou_jourei.pdf(日本語)
・香港商標規則
https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap559A!en(英語)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/hk/law/pdf/hong_kong-shouhyou_kisoku.pdf(日本語)
・香港知的財産庁登録局(商標)における商標登録ワークマニュアル(TradeMarks Registry Work Manual)
https://www.ipd.gov.hk/en/trade-marks/trade-marks-registry-work-manual/index.html(英語)
・分類に関する商標登録ワークマニュアル
https://www.ipd.gov.hk/filemanager/ipd/common/trade-marks/registry-work-manual/current/eng/classification.pdf(英語)
■本文書の作成者
Emily Yip & Co(2016年5月6日付公開記事(本稿の元記事)作成者)日本国際知的財産保護協会(本稿(更新記事)作成者)
■本文書の作成時期
2023.11.17